☆わんこ嫌いのわんこ
今は亡きシェラは、子犬のころから家族以外は受け容れず、ほかの犬もごくまれな例外を除いて排除してきた。反面、猫にはきわめてフレンドリーだった。3匹の猫と育ったので、もしかしたら、自分は猫だと思っていたのかもしれない。
人間に対しては、家族以外は決して心を許さない分、家族への忠誠心は並大抵のものではなかった。犬嫌いの犬という孤高ぶりと、家族への依存が高いがゆえにぼくたちは溺愛した。
むぎもまた3匹の猫にかこまれて育ったので猫にはシェラ同様に友好的だった。むぎの生来の性格は、シェラがいなかったら犬にも人間にもフレンドリーだったのだろうが、弱虫だったので知らないわんこと仲良くすることにあまり関心がなく、ひたすらシェラに張り付いていれば満足していた。
そんなわけで、よそのわんこたちが仲良く遊んでいる様子をふたりそろって遠くからじっと見ているばかりで、決して自分たちが入っていこうとはしなかった。飼主にしてみると、育て方を間違えたという自省もあり、ふたりが不憫に思えてならなかった。
ルイを迎えるにあたり、今度の子は、ほかの犬たちと仲良くできるようになってほしかった。ぼくが「類は友を呼ぶ」にあやかりたくて「ルイ」という名前を承諾したことはすでに書いたとおりである。
☆オーストラリアンシェパードに遊んでもらう
幸いにして、ルイは犬にも人間にもきわめてフレンドリーなわんことして育っている。シェラが存命中は、近所の人たちがシェラを怖がって近寄ってこなかったが、シェラが亡きあとはだいぶ近所のわんことも交流できるようになった。
それでもわが家を嫌う人たちはルイをも排斥する。その人たちの飼っているわんこがルイに吠えついたりして飼主は慌てているのがなんともおかしい。シェラにしても、晩年は吠える側から吠えられる側に変わっていた。
近所から離れ、外のエリアへ出ると、多くのわんこがルイと遊ぼうと近寄ってくる。ルイが身体だけは一丁前だが、まだガキ気分が抜けていなので掟破りなほど激しく反応して相手のわんこに怒られる場面も珍しくない。それでもめげずに突進できるのは、体力的に優位にたてることが多いからで、相手のわんこがルイより体格で勝っている大型だとさすがに防戦一方になっている。つい最近も、ゴールデンレトリバーに蹴散らされたばかりである。
今回のキャンプでルイが大喜びしたのが、元気で明るいオーストラリアンシェパードに遊んでもらえたことだった。
キャンプ2日目の朝、ぼくとルイは美鈴湖周回を含めてたっぷり2時間散歩してキャンプ場へ戻った。けっこう疲れてしまい、ぼくは坂道を登るのがきつくなっていた。そんなとき、とあるサイトのキャンピングカーのオーナーさんの笑顔がのぞいた。前日もルイと散歩中にわざわざルイを撫でにきてくれた方である。
☆もし、秋にまた会えたらいいな
その方がご自分のキャンピングカーからわんこを連れてきてくれた。ぼくはてっきりボーダーコリーだとばかり思っていたら、オーストラリアンシェパードだという。この子が実に陽気で、ルイとのくんずほぐれつの遊びがはじまった。
体力でハンディがあるルイは終始圧倒されっぱなしだが、そんなことでめげるようなルイではない。写真のように「アニキ、ちょっと待ってくれ!」みたいな場面はしばしばあったが、2時間の散歩の疲れもなんのその、大喜びで遊んだ。
あちらの飼主さんも、チビのルイを気遣いながら、おおらかに遊ばせてくれたのが何よりだった。2時間の散歩の疲れもなんのその、ルイの興奮は沸騰するばかりである。
奥さんのほうが、「もうキリがないから……」と途中で気をきかせてルイから引き離し、散歩に向かったが、ルイはそれを必死に追おうと暴れまくった。きっと、乱暴なくらいの遊びが快感だったのだろう。さすが男の子である。
あらためて、「類は友を呼ぶ」わんこに成長してくれているのがわかってうれしかった。
このキャンプ場の常連さんのようなので、これからもまたお会いできる機会があるだろう。そのとき、ルイは、「アニキ、またよろしく!」と遊ばせてもらえるはず。次にぼくたちが予定しているのは秋のキャンプだが、なんとか会いたいオーストラリアンシェパードである。