そのゴールデン・レトリバーは、散歩しながら背後から連れているお母さんの腰にしがみついて遊んでいた。慣れているのだろう、お母さんのほうもワンコを叱ったりしない。
いいなぁ、と心から思った。
10歳のオスだという。ルイと同じ年齢である。
ぼくも家人も大きい犬が好きだ。
ルイは中型犬とはいえ、それに「大きいコーギー」とはいわれるものの、やっぱり小型犬よりやや大きいといったところである。
今朝逢ったゴールデン・レトリーバーは体重が45キロあるという。人間なみだ。いま13キロのルイがいちばん体重があったときで15.5キロだった。
これだけの体重があると、性格が荒かったら飼い主もなかなか御しきれないだろう。
ゴールデン・レトリーバーは性格が穏やかだと聞いていたが、犬同士だと攻撃的になるヤツがいる。
もう、15年ほど前になるが、横浜の公園を散歩中、まだ元気だったシェラが背後からいきなり襲われたことがあった。
ゴールデン・レトリーバーが近づいてきたのに気づいたが、温順な犬だとの先入観があってぼくも油断した。そいつがいきなりシェラの背中を咬んだ。
とっさにぼくが蹴りを入れて、それ以上の攻撃をさせなかった。
ゴールデン・レトリーバーもぼくには攻撃しなかった。
シェラを家人に預け、ヤツのリードを引いて繋がれていたトイレの前に連れていき、しっかり結んだ。
やがてトイレからできた飼い主が、リードの結び目をギョッとしたように見た。
ぼくは近づいていっていま起こったことを説明した。
いい歳をした飼い主はそっぽを向いて黙っていた。
「そういう犬だったら、ちゃんとしばらなけりゃ危ないでしょう」
飼い主はぼくを無視したままだった。
この飼い主にしてこの犬ありか。
犬は、ときとして、飼い主の性格を反映することがあるとあるという。
今朝逢った10歳の子はぼくにも頭を擦り寄せてきたくらいだ。やっぱりいい飼い主に恵まれたのだろう。
このところ、すぐ散歩をやめたがるルイも、飼い主を反映して根性不足なのかもしれない。