「おんなの城」(安部龍太郎著 文藝春秋 2016年9月30日第1刷発行)を読みました。
この本は、内容的には、
① 霧の城
② 満月の城
③ 湖上の城
の三つの中編で構成されています。
「① 霧の城」は、奥美濃の岩村城(別名霧ケ城)に嫁いだ織田信長の叔母の珠子(たまこ)をテーマとした中編です。
珠子は、紆余曲折を経て、一時、岩村城の女城主となりますが、岩村城は敵の武田軍に囲まれてしまいます。しかし、織田信長軍の救援が間に合わず、降伏せざるを得なくなり、珠子は降伏の条件として、武田軍の敵将秋山虎繁の妻となります。
その後、珠子と敵将秋山虎繁との間の夫婦仲は良くなり、岩村城で穏やかな生活が続きますが、今度は、岩村城は、勢力を建て直してきた織田信長軍の攻撃を受けることになります。
しかし、その時点になりますと、前の時点とは反対に、武田軍の力はなくなっていますので、武田軍の救援が期待出来なくなっていましたから、今度は、逆に、岩村城が織田軍に降伏せざるを得なくなります。
ただ、この物語では、珠子が降伏に抵抗を示すところで終わっています。
「② 満月の城」は、能登畠山家の9代当主・七尾城主畠山義綱の側室佐代(さよ)をテーマとした中編です。
物語の中心は、お家騒動というか、当主を巡る主導権争いの話が中心となっています。家も長年続きますと、その間に、近親婚が続き、血縁が濃くなり、当主を巡る争いが多く激しくなるんですね。権謀術数も渦巻くようです。多かれ少なかれ、長く続いている地方の豪族には、このようなことは多くみられたことかもしれません。
それはともかく、畠山家9代当主・七尾城主畠山義綱が有力家臣団から追放され、正室の子・嫡男の義慶が当主になります。しかし、これも陰謀によって毒殺され、側室佐代の子・義隆が当主となります。
その間、七尾城は、上杉謙信に攻められ、厳しい状況に置かれます。そして、上杉謙信に降伏すべきか、織田信長の援軍があるまで戦うべきかで、城内は分裂します。
しかし、織田軍の救援が難しい状況下にありましたので、上杉軍に降伏すべしという意見が強くなり、降伏派と反降伏派とで、城内は内乱状態となります。
そうした状況下で、降伏に反対の当主である側室佐代の子・義隆は、自分は死んだことにし、一端、場外に脱出します。
そのようなことを知らない佐代は、愛する息子の義隆の意思を受け継ぎ、女武者となって戦う決意をします。
少数の武者を従えて多数の降伏派と戦いますが、たちまちのうちに破れ、自害寸前に追い込まれます。
あわやというところで、屈強な武者を従えた息子の義隆が現われ、義隆が、腰を抜かして座り込んでしまった佐代をおぶって場外に脱出するというところで終わっています。
その後の七尾城の帰趨、義隆母子の消息については触れておりません(~_~;)
「③ 湖上の城」は、最近では、女城主として有名な井伊次郎法師直虎をテーマとした中編です。
井伊直虎につきましては、よく分らないところが多いこともあり、その生涯、活動内容も明らかでないようですね。
この本でも、史実に基づかない著者の創作による部分も多いのかもしれません。
そんなことから、この本のあらすじの紹介は省略したく思います。
大きな山城です。荒城の月を口ずさむと気分に浸れます(^.^)
何年か前から、岩村城址薪能が行われています。これまた情緒たっぷり(^.^)
信長はやはり魔王ですね。
私は、たまたま、別な本で読んで知っていました。
その本に依りますと、岩村城に養子に出された坊丸は、信長と濃姫との間に生まれたたった一人の子供だったという設定でした。
二人は大変に可愛がり、将来、政争に巻き込まれずに生き延びるようにと、わざと、目立たないような所に養子に出したとのことでした。
それが、その信長の叔母の女城主は、武田信玄に人質として出してしまったので、信長は、てっきり、坊丸は信玄に殺されたと思い、ことのほか激怒したとか。
そのためもあって、信長は、この女城主を極刑に処したとか、、、。
ところが、後日、坊丸は、武田信玄に大切に育てられていたことを知り、救出されたわけですね。
それが後の織田勝長で、本能寺の変の際、織田信忠と共に戦死したようですね。
戦国時代にはいろんなドラマがあり、いろいろと小説にする題材も豊富ですね。
それを題材にした小説を読むのもまた面白いです(^-^*)
岩村城址薪能は情緒豊かでしょうね。
見てみたいものです(^_^)