Dr.K の日記

日々の出来事を中心に、時々、好きな古伊万里について語ります。

伊万里 染錦 松竹梅文蓋付向付(5客組)

2020年09月26日 13時28分01秒 | 古伊万里

 今回は、「伊万里 染錦 松竹梅文蓋付向付(5客組)」の紹介です。

 この向付についても、今では止めてしまっている拙ホームページの「古伊万里への誘い」で既に紹介していますので、紹介文はそこに書いたものを紹介することとし、この向付の紹介文に代えさせていただきます。写真だけは新たに撮り直しました。

 

 

伊万里 染錦 松竹梅文蓋付向付(5客組)

 

立面

 

 

松と竹の面(1個が代表して)

 

 

梅と竹の面(松と竹の面の反対面)(1個が代表して)

 

 

蓋を外したところ(1個が代表して)

 

 

 

本体を伏せ蓋を裏返したところ(1個が代表して)

 

 

製作年代: 江戸時代中期末  

サ イ ズ : 口径(蓋):10.4cm  口径(本体):8.8cm  高さ(蓋共):10.8cm

 

 



 

<古伊万里への誘い>

 

*古伊万里バカ日誌35 古伊万里との対話(松竹梅文の蓋付向付)・・・平成18年3月筆

 

登場人物
  主  人 (田舎の平凡なサラリーマン)
  万里子 (古伊万里様式染錦松竹梅文蓋付向付)

 

松と竹の面 梅と竹の面
   

 

・・・・・プロローグ・・・・・ 

 主人は、ここのところ、対話をする古伊万里の選択に苦慮している。といっても、所蔵品が多すぎて、そこからの選択に苦慮しているのでは絶対にない!
 むしろ、貧庫ゆえに、時節時節に応じた対応ができないからである。それで、今回も、またまた、一番安易な方法を選択したようである。
 「押入帳」をめくり、古い順番から眺めていって、これまでに対話をしていない古伊万里を押入れからひっぱり出してきて話しはじめた。

 

 

主人:暫く!
 「押入帳」によると、我が家に来たのは昭和56年だから、25年ぶり、四半世紀ぶりということになるかな? いや、その後も目にしているから、そんなには御無沙汰してはいないか・・・・・。

万里子:お久しぶりでございます。ここに来ました当座は、奥様が2~3度、お料理に使用してくださりましたが、その後は押入に入りっぱなしでございますので、四半世紀近くお目にかかっておりませんことにはまちがいございません(涙)。

主人:そうだった。お前達が来た当座は妻が大変に気に入り、台所に置いて、「茶碗蒸し」用に使っていたな。でも、「茶碗蒸し」用にはちょっと大きかった。ちょっと大き過ぎたんだよね。それで、まもなく使われなくなってしまったので押入に入れてしまったわけなんだ。

万里子:使用方法というのも、なかなかむずかしいものなのですね。

主人:料理と器の取り合わせというのも、なかなかむずかしいね。気にしなけりゃ何だっていいんだろうけどね。料理に合った器、器に合った料理というのがあるよね。
 ところで、今、押入れからお前達をひっぱり出してきたのを妻が見つけ、「あらっ、それ良いんじゃない! 「茶碗蒸し」用に貸してくれない!」と言ったもんだ。以前、お前達を使ったことなんかすっかり忘れてしまってね。

万里子:やはり私達は「茶碗蒸し」用に適してるんですか。

主人:そうらしいね。それで、私は、「前にも「茶碗蒸し」用に使ったけど大き過ぎると言って使わなくなったんじゃないの!」と言ったら、「大きいけど、ウドンを入れた茶碗蒸しの「おだまき蒸し」なんかに適しているわね!」と言ったもんだ。そして、また、「貸してくれない!」とぬかしやがった。
 私は即座に断ったね。乱雑に扱われてお前達に傷なんか付けられたらいやだからね。

万里子:今度はなぜ貸さないんですか? 以前には貸したんでしょう・・・・・。

主人:うん、そうなんだけどね・・・・・。 25年経ったら気が変わった。25年経ってきたらお前達に傷付くことが惜しくなってきたんだよ。

万里子:値上がりしてきているからですか?

主人:うん、まあな・・・・・。それもあるけど、原因は、お前達を手に入れた経緯にあるんだ。私はお前達をタダで手に入れたからなんだよ。だから、当時は、万一傷なんか付いてもいいやと思っていたのさ。

万里子:タダって! まさかドロボウさんでもして・・・・・。

主人:人聞きの悪いことを言うね。まさかね~。それはないよ。骨董屋さんからプレゼントされたのさ。
 もっとも、厳密に言うとタダではないのかな~。

万里子:それはどういうことですか?

主人:旅行に行った時に買ってきたお土産のお返しにもらったんだ。
 よくあるだろう。なじみの骨董屋さんと更に昵懇になって、良い物が入荷したらまっ先に格安にまわしてもらおうという魂胆が! それだよ。 さもしい魂胆だが、貧乏コレクターの悲しい性ではあるね。トホホだね。
 もっとも、現実には、相手も商売だから、格安にまわしてくれることはないだろうけれど、それでも、懇意のお客さんには優先的にまわしてくれるんじゃないかな。
 ま、そういう下心もあって、旅行に行った時にお土産を買ってきて、それをあげたわけさ。
 ところが、相手の骨董屋さんも義理堅い人で、そのお礼にといって、お前達をプレゼントしてくれたわけよ。

万里子:そうでしたか。私達は、当時はそんなに高価ではなかったんですね。

主人:今ほどはね。でも、そんなに安くはなかったと思うよ。お土産が高価な物だったからかな~。(←ウソ!)

 

 

 


 

*古伊万里ギャラリー96 古伊万里様式染錦松竹梅文向付・・・平成18年4月1日登載

松と竹の面 梅と竹の面 蓋を外したところ

 

 じつに華やかな器である。文様も松竹梅で、いかにも華やかな晴れの祝いの席に出るにふさわしい。

 かつては、上流階級や富裕層の正月の席にでも使用されたのかもしれない。ところが、我が家に来てからは押入れ住まいである。申し訳ないな~と思っている。

 ところで、この器をひときわ目立たせているのは、腰部に金彩で引かれた9条の縞文であろう。本体と蓋に描かれた華やかな松竹梅文を足元から一層引き立てる。

 また、形のバランスも、蓋と合わせてちょうど良い感じに作られていることがわかる。蓋をはずした本体だけを見ると、ちょっと間延びしていて締りがない。全体のバランスを考えて成形され、文様付けがなされていることがわかるのである。

 それに、仔細に見てみると、細かな所にも気を使って作られていることがわかる。
 腰部の9条の縞文も、ロクロで9本の筋を削って作り出し、その筋の底の方に金彩を施して金彩が剥落しずらいようにしているのである。
 更に、蓋の摘みも、上にいくに従って開いていて、蓋を開ける時に、蓋が指から落下しずらいように作っている。誠に使い勝手がよいのだ。昔の人は、使う人の身になって作っているのである。しかし、これは作る立場に立てば、ちょっと面倒なことなのではないだろうか。昨今では、蓋の摘みも垂直に近く作られていて、蓋を開ける時に、蓋が指から落ちそうになることをしばしば体験させられる。でも、これは作る側の身にとっては誠に都合が良いことなのだろう。昨今では、使い勝手よりは作り勝手が優先していると言えそうである。

 

江戸時代中期末  口径(蓋):10.4cm  口径(本体):8.8cm  高さ(蓋共):10.8cm  


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6 コメント

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Unknown (tkgmzt2902)
2020-09-26 15:36:29
蓋のつまみの話は感動です。昔は心が行き届いていましたね~。
少し大きめの茶碗蒸しの器と書いてありますが、 
私は現在のはちょっと小さい気がします。
もっとたっぷり食べたいなと思うときがあります。
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Dr.Kさんへ (遅生)
2020-09-26 18:21:52
同じ蓋物でも、胴がスリムだと上品な感じになるのが不思議ですね。
実際、形に違わず、上手の蓋物です。

>時節時節に応じた・・・
とあるので、紅葉と思いましたが、朱竹だったのですね。洒落た松竹梅です。
輪線を彫ってから金彩をさすなど聞いたこともありませんでした。

これはぜひとも、贅沢に茶碗蒸しに使うべきです。
ちなみに、私の所では、茶碗蒸しに、ずっと大きな器を使っています。
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tkgmzt2902さんへ (Dr.K)
2020-09-26 19:41:50
蓋のつまみの件ですが、今は、型に陶土を流し込んで大量生産するのだろうと思うんです。その場合、つまみが上に行くに従って広がっていては、型から取りだしずらくなるので、そのようにはしないで作るんではないのかなと思っているんです。
使う人のことなど考えていないんではないかと思うんです。

茶碗蒸しの器としては、それほど大きくはないですか。
むしろ小さすぎるくらいですか。
茶碗蒸しの器の大きさとしては合格なんですね😃
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遅生さんへ (Dr.K)
2020-09-26 19:57:29
「>時節時節に応じた・・・」と書きましたのは、当時のホームページの頃は、皆さん、季節に合わせた古伊万里を登場させて紹介していたんです。
我が家は貧庫だったものですから、なかなか、季節に合わせた古伊万里を登場させることが出来なくて苦労していたんです。
この器なら、松竹梅だろうから、季節に関係なく登場さえることが出来るかなと思ったんです。
私も、最初は紅葉かなと思ったんですが、伊万里のことですから、何か意味があるのだろうと考え、松竹梅を描いたんだろうと思い、竹の葉だろうと思うようになったんです。

貰った頃は、タダで手に入れたものですから、惜しげなく使っていたんですが、今見ますと、壊れるのが惜しくなり、なかなか使う気にならなくなってしまいました(__;)
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Dr.kさんへ (酒田の人)
2020-09-26 21:47:44
中期末の伊万里としてはかなり珍しい器形の品ですよね!
染錦手でありながら、実に落ち着いた雰囲気を感じます。
下部に絵付けされた輪線がデザイン的なアクセントになっているようですし
これは相当に上等な品だったのではないでしょうか。
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酒田の人さんへ (Dr.K)
2020-09-27 08:18:55
華やかではありますが、それほど派手派手しくないところが気に入ってます。
上半分の松竹梅文だけならよくあるデザインで陳腐ですが、下半分に輪線文を加えてあるところが珍しいですよね。それによって、スッキリした上品さが加わったように感じます。
これで、どんな人が、どんな物を食べたのかなと考えるとロマンを感じます(^_^;
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