Dr.K の日記

日々の出来事を中心に、時々、好きな古伊万里について語ります。

染錦 太湖石花文 ミニ髭皿(ヒゲザラ)

2021年02月22日 19時10分46秒 | 古伊万里

 今回は、「染錦 太湖石花文 ミニ髭皿(ヒゲザラ)」の紹介です。

 これは、平成2年に(今から31年前に)、東京の古美術店から買ってきたものです。

 

表面

非常に保存状態が良いようです。

ドールハウス用だったので、実用にはされなかったからでしょう。

 

 

裏面

 

生 産  地: 肥前・有田

製作年代: 江戸時代中期(1700~40年代)

サ  イズ : 口径;10.0cm  高さ;3.2cm  底径;4.4cm

 

 

 ところで、これを買った時点で、ミニ髭皿というものが世の中には存在すること、また、それが珍品であることは承知していました。

 といいますのは、「図鑑 伊万里のすべて」(野村 泰三著 光芸出版 昭和55年 初版 第4刷発行)という本を読んでいて、その16ページに、

 

「  古伊万里染錦草花文ひげ皿

        享保前後   径11cm  高台径4.3cm

ミニ髭皿である。

はじめみたときは、ちょっと信じがたかった。それもそのはず、これはひげ皿としては、ものの用にもたちがたいしろものだから。

だが、手にとってみると、製作年代はやはり江戸中期はバッチリあった。ひげ皿のサンプルという説もあるが、はたして何に使用したものか。大珍品ではある。   」

 

と書いてあることを知っていたからです。

 また、上掲書の17ページにはカラーの写真も載っていて、それも見ていたからでもあります。

 

上の写真の下側の2枚がミニ髭皿

 

 

 しかし、手に入れた当座は、「やった~! 大珍品を手に入れた!」と喜んだものですが、だんだんと不安になってきました(~_~;)

 だいたいにおいて、大珍品が、そう簡単に手に入るわけがないですものね(><) それに、保存状態が良すぎて、それほど時代を感じなくなってきたんです(><) 上掲書にあるような、「手にとってみると、製作年代はやはり江戸中期はバッチリあった」という感じがしないんです(><)

 それで、だんだんと、「これは、後世の写しなのではないだろうか、、、」と思うようになってきたわけです(~_~;)

 それからは、このミニ髭皿は、後世の写しであろうと思うようになっていたわけですが、その後、平成12年(2000年)に発行された「日蘭交流400周年記念・佐賀県立九州陶磁文化館開館20周年記念 古伊万里の道」(佐賀県立九州陶磁文化館監修)を見て、ビックリしました。

 

 

 上掲書の94ページに、このミニ髭皿と同じようなものが掲載されていたからです。

 

表面(上掲書の94ページから転載)

   181 色絵花文髭皿(ミニチュア)

   有田 1700~40年代

   口径10.8 高さ3.3 高台径4.6

   源右衛門窯 古伊万里資料館

 

 

裏面(上掲書の94ページから転載)

 

 

 上掲書によりますと、ミニ髭皿の用途はドールハウス用のものだったんですね。

 上に掲載されているミニ髭皿は保存状態が悪いですが、ドールハウス用だったとすれば、実用になどされませんから、保存状態が良く、最近作られたように見えてもおかしくないものがありうるわけですよね。

 また、ドールハウス用だったわけですので、結構な数は存在したわけですから、大珍品とまでは言えないわけですよね。

 そのように考えるようになり、やはり、このミニ髭皿は、江戸中期はあると思うようになった次第です(^-^*)

 

 

 

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追記 (令和3年3月1日)

 このミニ髭皿を紹介したのち、或る方から、「ミニ髭皿がドールハウス用のものだったということですが、具体的には、ドールハウスではどのように使われていたのでしょうか?」とのコメントが寄せられました。

 それで、次に、参考までに、上掲書「日蘭交流400周年記念・佐賀県立九州陶磁文化館開館20周年記念 古伊万里の道」(佐賀県立九州陶磁文化館監修 平成12年(2000年)発行)から、ドールハウスでの使用例を2例紹介したいと思います。

 

<ドールハウスでの使用例:その1>(上掲書P.152から転載)

 

髭皿をかけた場面を再現している例

     ペトロネア デュノワ夫人のドールハウス 1676年頃 

     アムステルダム国立博物館 『17世紀のドールハウス』図録1994年より転載

 

 

<ドールハウスでの使用例:その2>(上掲書P.152から転載)

 

髭皿は、髭を剃るために使用する以外に、瀉血療法のために使用したともみなされている。それを示しているのか、患者を処置する様子をあらわしたドールハウスに、従者が髭皿を持っている場面を再現している例

     ドールハウス 所蔵不明

     写真提供:源右衛門窯


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4 コメント

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Dr.Kさんへ (遅生)
2021-02-22 19:49:16
いや、これは超珍品だと思います。
ヨーロッパではドールハウスが早くからあったとはいえ、一部の富裕層のための物であったに違いありません。その中で、髭皿を備えた物、さらに輸入伊万里の髭皿となると、数は限られていたと思います。同時期のカップ&ソーサーと比べてはるかに少ない。
しかもそれが窯からあがったばかりのような状態で残ってるのは奇蹟に近いと思います。
博物館級!(^.^)
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遅生さんへ (Dr.K)
2021-02-23 09:42:04
過分なるコメントをありがとうございます。

>ヨーロッパではドールハウスが早くからあったとはいえ、一部の富裕層のための物であったに違いありません。その中で、髭皿を備えた物、さらに輸入伊万里の髭皿となると、数は限られていたと思います。

確かに、そう考えますと、珍品かもしれませんよね。
でも、日本なら、さしずめ、雛飾り用の各種道具類の一つにすぎませんし、玩具にすぎないな~と考えますと、「なんかな~」という感じにもなります(~_~;)
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Dr.kさんへ (酒田の人)
2021-02-23 13:42:40
これと同じ品がヤフオクに出たのを見たことがありますが
当時は勉強不足で、「怪しい品」と思ってしまった覚えがあります。
ドールハウス用だったんですね~、昔はひげ皿と言えば、輸出古伊万里の中でも憧れの品だったんですが
収集を続ける中で好みが変わったようには思います。
とは言え、このミニひげ皿、今売られていたら是非欲しい品です。
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酒田の人さんへ (Dr.K)
2021-02-23 14:54:35
ミニ髭皿は、真贋以前に、だいたいにおいて、「これは何だろう? こんな物が存在するのだろうか?」となりますよね(~_~;)

私は、「図鑑 伊万里のすべて」を読んで存在は知っていましたので、物好きなものですから買ってきてしまったわけです。
普通は、「怪しい品」と思いますよね。
もしも、これから登場しましたら、是非買ってください(^_^;

昔は、髭皿は、憧れの的でしたよね。しかし、高くて買えませんでしたね(><)
でも、なんとか1点だけは買いました。
今は随分と安くなりましたね。しかし、私も、好みが変わったのか、最近では、それほど欲しいと感じなくなりました(~_~;)
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