Dr.K の日記

日々の出来事を中心に、時々、好きな古伊万里について語ります。

「伊万里 染付 鳳凰壽字文小皿」と「古染付 鳳凰壽字文小皿」

2020年11月17日 16時19分47秒 | 古伊万里

 今回は、「伊万里 染付 鳳凰壽字文小皿」と「古染付 鳳凰壽字文小皿」の紹介です。

 このうちの「古染付 鳳凰壽字文小皿」のほうは、昭和55年に或る地方都市の古美術店で買ったものです。

 それを買ってから間もなくのことです、「図鑑 伊万里のすべて」(野村泰三著 光芸出版 昭和55年10月20日初版第4刷発行)という本の67ページに、この「古染付 鳳凰壽字文小皿」を模倣した「古伊万里」が存在することを知りました。

 その「図鑑 伊万里のすべて」の67ページには次のように書いてありました。

 

 

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                        <「図鑑 伊万里のすべて」P.67から抜粋>

 

              (左)中国明末染付鳳凰と壽字の皿    (右)古伊万里染付鳳凰と壽字の皿

 

 二枚のうち、左側の中国製がオリジナルである。それを伊万里が江戸時代前期において倣作したもの。注意した眼でみると、本歌は闊達自在、線がよく伸びてよどんだところがなく、開放的であるのにくらべ、倣作の場合はどうしても線が生硬で伸びがなく、いじけて姑息的であるのが、二枚並べた場合によくわかるというものである。だが、写しがすべて悪いというのではない。進歩という大前提があるならば、その模倣は許されてしかるべきものであろう。とくに伊万里は、次期においてヨーロッパを席巻してしまうというような、大飛躍がひかえているのだから。

 この左図の古染付ができた時代の中国は、明の終末期をむかえて天下はすべて疲弊し、ようやく動乱のきざしがみえはじめたころであった。中国には、「陶によって政(まつりごと)を知る」という言葉があるが、これは案外、的を射た言葉である。というのは、明朝の最盛期には、景徳鎮官窯では天下に並ぶものがない優秀精巧な名品が焼造されたが、明も終末に近づき政治力が衰えると、同時に焼物も衰えて、窯の組織も官窯から民窯へと格がおち、粗製乱造されるようになったのである。それまでの大得意先であったオランダ連合東インド会社からは、そっぽをむかれ、やむなくそれらの品を、日本へ振り向けねばならなかったと考えられる。

 

 

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 私は、この本を読んで、私もこの「中国明末染付鳳凰と壽字の皿」を真似た「古伊万里染付鳳凰と壽字の皿」が欲しいな~と思いました。

 でも、その「古伊万里染付鳳凰と壽字の皿」に遭遇するのにはそれほど時間がかかりませんでした。

 その本を読んでおよそ2年ほどが経過した昭和58年のこと、或る地方都市のデパートで開催された「骨董際」で、この「古伊万里染付鳳凰と壽字の皿」に出会ったんです\(^O^)/

 それまで、欲しい、欲しいと思っていましたから、即、購入となりました(^_^)

 その、「古伊万里染付鳳凰と壽字の皿」=「伊万里 染付 鳳凰壽字文小皿」というものは、次のようなものです。なお、ついでに、以前に(昭和55年に)手に入れていた「中国明末染付鳳凰と壽字の皿」=「古染付 鳳凰壽字文小皿」とともに紹介いたします。

 

 

              (左)古染付鳳凰壽字文小皿(表面)   (右)伊万里 染付鳳凰壽字文小皿(表面)

 

 

             (左)古染付鳳凰壽字文小皿(裏面)    (右)伊万里 染付鳳凰壽字文小皿(裏面)

 

 

伊万里 染付鳳凰壽字文小皿(表面)

 

 

伊万里 染付鳳凰壽字文小皿(裏面)

 

 

古染付鳳凰壽字文小皿(表面)

 

 

古染付鳳凰壽字文小皿(裏面)

 

 

「伊万里 染付鳳凰壽字文小皿」

  製作年代: 江戸時代前期~中期

  サ イ  ズ: 口径;16.1cm  高台径;10.0cm

 

「古染付鳳凰壽字文小皿」

  製作年代: 中国明時代末

  サ イ  ズ: 口径;15.8cm  高台径;9.2cm

 

 

 なお、これら「伊万里 染付鳳凰壽字文小皿」と「古染付鳳凰壽字文小皿」につきましては、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」においても既に取り上げているところです。次に、参考までに、それも紹介いたします。

 

 



 

                   <古伊万里への誘い>

 


*古伊万里ギャラリー99 古伊万里様式鳳凰壽字文小皿 (平成18年7月1日登載)

 

                 左:古染付   右:古伊万里        左:古染付  右:古伊万里

 

 「図鑑 伊万里のすべて」(野村泰三著 光芸出版 昭和50年刊)の67ページには、「二枚のうち、左側の中国製がオリジナルである。それを伊万里が江戸前期において倣作したもの。注意した眼でみると、本歌は闊達自在、線がよく伸びてよどんだところがなく、開放的であるのにくらべ、倣作の場合はどうしても線が生硬で伸びがなく、いじけて姑息的であるのが、二枚並べた場合によくわかるというものである。」と書かれている。

 この本に載っている伊万里は、かなり忠実に中国製のオリジナルを写しているので、正に倣作であり、今なら盗作であろう。それに反し、ここに載せた伊万里は、それよりはかなり自由に描いてはいるが、今、洋画で話題になっているように、盗作にはちがいないだろう。

 また、この本に載っている伊万里は、中国製のオリジナルをかなり忠実に写しているので、この本の著者は江戸前期に倣作したものであろうと言っている。その点、ここに載せた伊万里は、それよりはかなり自由に写しているので、相当に写し慣れてきたとみることが出来るので、江戸前期でもかなり後半に入り、江戸中期ぐらいになるのではないかと思っている。

 古伊万里の場合は、当初、どうしても中国の模倣になってしまったことは否めない。オランダ連合東インド会社から、中国景徳鎮のピンチヒッターとして指名され、それをバネとして隆盛を誇るようになってきた経緯から考えてもやむをえないのである。

 しかし、模倣がすべて悪いわけではないのではなかろうか。それを参考に、追いつけ追い越せの精神で精進し、進歩発展するならば許されると思う。その後、伊万里は、ヨーロッパにおいて一世を風靡したのであるから!

 

古伊万里・・・江戸時代前期~中期    口径:16.1cm  高台径:10.0cm  

            ( 古染付・・・中国明時代末        口径:15.8cm  高台径:9.2cm )

 

 


*古伊万里バカ日誌38 古伊万里との対話(中国模倣の古伊万里) (平成18年6月筆)

 

登場人物
  主  人 (田舎の平凡なサラリーマン)
  元  子 (古染付鳳凰壽字文小皿)
  真似男 (古伊万里様式染付鳳凰壽字文小皿)

 

 左:元子    右:真似男

 

・・・・・プロローグ・・・・・

 主人は、今回も何と対話をしようかと迷ったようである。
 今の時節に合ったものをとも考えたが、どうも発想力が弱く、どのようなものが今の時節に合う古伊万里なのかが思い当たらない。もっとも、紫陽花文などがいいのかなとかの陳腐な発想は浮かんだが、それとても貧庫ゆえ、期待に応えるような物を取り出して来ることは困難である。
 そこで、「時節」の意味を、「季節」ではなく「世の中の情勢」という観点から考えてみようということを思いついた。主人にしては大ヒットの発想ではある。
 昨今、洋画において、倣作とか盗作というようなことが問題になっているので、これに沿ったものを押入れの奥の方から引っ張り出してきて対話をはじめた。

 

 

主人: ここのところ、ずーっと、一人だけに登場してもらっていたんだが、今日は、特別、元子と真似男の二人に登場してもらった。最近、洋画の分野で、外国のものの倣作とか盗作が話題になっているので、それに関連した話をしたかったからだ。

元子・真似男: 理由はともあれ、出していただいて嬉しいです。

元子: 私は、この家に来ましたのは昭和55年ですから、26年ぶりのご対面ですね。

真似男: 私は昭和58年に来ていますので、23年ぶりです。

主人: ずいぶんと久しぶりになってしまったな。
 確かに、最初は元子と出会ったんだよね。地元の骨董屋で見かけたんだ。最初見た時、高いな~と思った。でも、そのうち、何回か見ているうちに、「買っておこうかな~」という気になってきて、遂に買ったわけだ。当時は、「古染付」というのは珍しかったんで高かったんだよ。その後、だんだんと安くなってしまってね。26年も経ったが、値段は今よりも当時の方が高かったかな。
 ところで、お前を買ったのが昭和55年の10月なんだが、それからまもなくして「図鑑 伊万里のすべて」(野村泰三著 光芸出版)というのにお前と同じようなのが載っていることを発見した。同書は昭和55年5月が初版第1刷だけど、私の買ったものは昭和55年10月の初版第4刷のものだから、たぶん昭和56年の1月頃にその本を買ったんだと思う。だから、同書にお前と同じようなものが載っていることを発見したのは昭和56年の1月頃だろうね。

元子: 以前は、私のようなものは今よりも高かったんですか。

主人: そうなんだ。特に地方ではね。珍しかったからね。その後、どんどん輸入されるようになってきて安くなってしまった。
 話は変わるが、その「図鑑 伊万里のすべて」の67ページに、元子を写した古伊万里があることを発見したんだ。当時は、「なるほどなー、そんなこともあり得るんだろうなー。」と思い、是非、元子を写したような古伊万里を入手したいもんだと思うようになった。
 それで、その後、気を付けて見ていて、遂に見つけたわけだ。それは、或る地方都市のデパートの「骨董祭」だった。最近でこそ、あっちこっちで骨董市やら骨董祭というものが開かれているが、当時は、年に1~2度デパートで開かれていたんだ。デパートの会場使用料みたいなのが乗っかっているから骨董屋の値段よりは1~2割高いのは自明の理になっていた。でも、品数も多く、良い物も出ていたので、皆んな楽しみに待っていて出かけて行ったもんだよ。
 ちょっと脱線したが、真似男を見つけたのが昭和58年の2月だから、真似男のような存在を知ってから2年が経過していたわけだ。もっとも、たった2年で入手できたんだからラッキーといえるかもしれないがね。

真似男: 私を熱心に捜したくれてありがとうございました。

主人: いや~、礼を言われるほどのことではないがね。でも、みつけた時は嬉しかったよ。その後、東京などで大がかりな骨董市などで何度か見たような気はするが、当時は少なかったと思う。
 ところで、昔は、外国の物を真似るなんてことは問題にならなかったんだろうね。むしろ、東西の交流とか何かとか言われるぐらいだから、大いに模倣されたんだろうと思う。今では、意匠権などの知的財産権の侵害とか何かとかやかましいね。それだけ地球が狭くなったんだろうかね。美術の世界でも、そうした時代の流れというものを十分に認識していなければならないと思う。


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4 コメント

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パクリですね(笑)。 (不あがり)
2020-11-17 16:58:01
Dr.K様へ
これは面白いです。今でいう所のパクリですよね(笑)。今はそれを中国がやって大成長をして、下手をすれば覇権を握る勢いです。
これを当時の伊万里がやってしまった事になります。それにしても良く見つけられましたよね。難しかったと思うのですが。それと今と違って大変な高値です。見つけても買うのが大変だったと思います。私はこういう歴史の生き証人みたいは品物好きなのです。勉強になりました。有難うございます。
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Dr.Kさんへ (遅生)
2020-11-17 17:37:50
文章のそこかしこから、伊万里にかけるDrの情熱がほとばしって来ます。日本の伊万里研究の歩みそのものですね。

こうやって比較すると、伊万里の生真面目さがあらためてわかりますね。ほとんどヤケクソで描いているような明末古染付に対して、これから頑張るぞという伊万里。対照的で面白いです。

私も、最初の頃、メダカ紋の煎茶碗を手に入れ、その後何度か伊万里の写しに出会ったのですが購入に至らず。比較ができません。買っておけばよかったです(^^;

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不あがりさんへ (Dr.K)
2020-11-17 19:06:31
昔から、東西文明は交流していましたよね。
そして文明は発展してきたんでしょうね。
悪く言えば、真似したり、真似されたりで、、、。
ただ、今は、そのテンポが速過ぎますよね。
どうしても、真似した、真似されたという意識が明確になってしまいますね。

でも、それは、昔からのことで、真似をしてでも、より良い物を生み出した方が勝利者になるんでしょね。
今は、それを中国がやりつつあるわけですが、日本も頑張らないと遅れをとってしまいますよね。

この古染付と古伊万里は、骨董市などでたまに見かけます。
この本の影響もあり、有名な組み合わせになってしまって、市場に出回ったんですね。残存数も多いのかもしれません。
でも、昔のほうが高かったですね。
今は、古染付も古伊万里も安くなりましたものね。
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遅生さんへ (Dr.K)
2020-11-17 19:21:19
あまりにものお褒めのお言葉に赤面のいたりです(~_~;)

伊万里が古染付の模倣から始まったということですので、それを実証するためにも集めました。
でも、その後、結構、骨董市などで見かけましたが、更に同じ物を集める気にもならず、この1組で止めました(><)
美術品でもないですから、1組あれば十分と思っています。

メダカ紋の古染付の煎茶碗を手に入れたあと、何度か伊万里の写しに出会ったことがあるんですか。買わなかったのは、ちょっぴり残念でしたね。
でも、そのようなものは、資料的価値はあるんでしょうけれど、持っていても飽きてきてしまうようですね。
私の場合は、タンスの肥やしならぬ、押入れの肥やしになっています(~_~;)
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