Dr.K の日記

日々の出来事を中心に、時々、好きな古伊万里について語ります。

染付 百合文 小皿

2021年07月07日 14時52分14秒 | 古伊万里

 今回は、「染付 百合文 小皿」の紹介です。

 これは、平成10年に(今から23年前に)、田舎の骨董屋から買ってきたものです。田舎の骨董屋は、本歌の鍋島など取り扱ったことなどありませんので、ちょっと見には鍋島のように見えますことから、なるべく高く売ろうと思い、これを鍋島として売っていました。もっとも、値段的には本歌の鍋島の値段よりはかなり低く設定しており、本歌の鍋島に遠慮した価格設定ではありましたが、、、(笑)。

 私としては、これを、盛期鍋島として買ってきたわけではないのは勿論のこと、後期鍋島として買ってきたわけでもありません。ただ、鍋島の良いところをかなり取り入れた、なかなかの出来の伊万里だな~とは思って買ってきたものです(^_^)

 

表面

 

 

側面

 

 

底面(その1)

 

 

底面(その2)

 

生 産 地 : 肥前・有田 肥前・平戸(三川内)

製作年代: 江戸時代後期(幕末)

サ イ ズ : 口径;12.1cm 高さ;3.3cm 底径;6.3cm

 

 

 なお、この「染付 百合文 小皿」につきましては、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中でも紹介したところです。

 次に、その時の紹介文を、参考までに再度掲載いたしますので、お読みいただければ幸いです。ただ、その紹介文は主観性が強く、客観性に欠ける内容が含まれておりますことを予めご了知ください(~_~;)

 

 

   ==================================

        <古伊万里への誘い>

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

*古伊万里ギャラリー88  古伊万里様式染付百合文小皿     (平成17年7月1日登載)

 

  

 この小皿は、古美術店では「鍋島」として売られていた。

 通常、「古伊万里」よりは「鍋島」の方が高いので、売る側からすれば、なるべく高く売りたいので、そのようにするのだろう。

 高台は一応櫛目文である。また、通常のお皿よりも見込みが深く、木杯形に成形されている。百合文もすっきりしている。いかにも鍋島風だ。

 『「鍋島」としてどこが悪いのか! これを「古伊万里」とするか「鍋島」とするかは見解の相違だろう。文句あっか!』と言われれば、ごもっともという雰囲気だ。

 しかし、「鍋島」の定義にもよるが、「鍋島」を、一般的に言われているように、鍋島藩窯で作られたものと定義すれば、この小皿は、「鍋島」には入らないだろう。

 高台櫛目文は「鍋島」の代名詞のように言われているが、「鍋島」のみの専売特許ではない。他の古伊万里にも使用されている例がある。鍋島藩は、「鍋島」以外に高台櫛目文を描くことを禁じたわけでもなさそうである。
 木杯形の成形だって「鍋島」の専売特許ではないだろう。

 このように、この小皿は、「鍋島」の特長をいくつか有してはいるが、全体として見れば、なんとなく「鍋島」の条件を満たさないのである。古美術の世界は、かくも感覚的な世界であり、主観的な世界でもある。

 いずれにせよ、小品ながら、ハットさせるような美しさを秘めた鍋島風の小皿である。

江戸時代後期     口径:12.1cm

 

 

   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

*古伊万里バカ日誌27  古伊万里との対話(百合文の小皿)(平成17年7月1日登載)(平成17年6月筆) 

登場人物
  主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
  百合子 (古伊万里様式染付百合文小皿)

 

 

・・・・・プロローグ・・・・・

 6月だというのに連日真夏日が続いている。こうも暑いと、お花では百合の花が思い出される。
 それに、主人は、5月上旬に近所の野山にタラの芽を採りに行った際、足元にまだ小さな山百合の苗を見つけ、その後の成長が気になっていた。先日、「どのくらい大きくなっただろうか? 蕾でも付けたであろうか?」と見に行ったところ、なんと、数本が引き抜かれ、打ち捨てられているのを発見した。根は付いているが、その先のユリ根と言われる鱗茎がない。恐らく、食用のユリ根だけを採って打ち捨てたようだ。でも、まだ、捨てられて間もないようでもあり、そのままにしておいては可哀想なので、家に持ち帰って庭に植えてやったところ、しっかりと根付いたようである。
 そのようなこともあったので、まだ、ちょっと、百合の季節には早いようだが、主人は百合との四方山話をしたくなったらしく、押入の中から百合文の小皿を引っ張り出してきた。

 

      ---------------------------------------------------------------------

 

主人: ここのところ連日暑いので「百合子」を思い出した。

百合子: それはそれは光栄です。ありがとうございます。
 でも、どうして暑くなると思い出すんですか。できれば毎日のように思い出して欲しいものです・・・・・。

主人: いやいや、本当はね、毎日かすかには思い出しているんだよ。(←ウソ) でもね、暑くなると殊更鮮明に思い出すんだ。
 それはね、大学1年の時の夏休みにキャンプに行ったんだが、その時に見た感動を忘れられないからなんだ。
 山百合なんか、この辺ではちっとも珍しくもなんともない。子供の頃から毎年見飽きるほど見ているんで、なんとも感じなかったのにね。
 長野県の蓼科高原の白樺湖という所へ行ったんだ。高原にテントをかついでキャンプに行くなんてことは生まれて初めてのことだったので、その湖畔に咲いていた山百合に殊更感動したんだろうね。いつも、見飽きるほど見ている物に対しても、その時と場所によって、非常に新鮮な感動を覚えることもあるんだね。
 真夏のギラギラと照りつける下界を離れ、生まれて初めて、さわやかな高原に行ったわけだ。何もかもに感動したね。日本の夏にもこんな涼しい所があったのか。「避暑地」とは、なるほど「避暑」の「地」なんだってね。真夏だというのに高原はヒンヤリしている。その湖畔の白樺の木立の中のあちこちに清楚に咲き誇る山百合。それらはまた威厳に満ち、圧倒的な存在感を示してもいた。私はその美しさに改めて感動したわけさ。
 昔から言うじゃない。「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」ってね。百合の花が美しいことは、それまでも、頭の中で観念的にはわかっていたんだけど、身体で「美しい」とは感じていなかったわけよ。

百合子: そうですか。そのような思い出があるんですか。私を見てその時を思い出して、百合のお花に改めて感動していただけたら嬉しいです。

主人: そうなんだ。その時以来だね。百合の花を本当に美しいと思うようになったのは。
 ところで、山百合の花には清楚で理知的な女性のイメージがあるね。「小百合」さんなんていう名前の女性が多いのもうなずけるよ。きっと、親が、清楚で理知的な女性に育って欲しいとの願いを込めて名付けたんだろうね。その代表例が、「サユリスト」なる言葉を生んだ「吉永 小百合」さんだろう。私は娘に「小百合」の名前を付けなかったので、バカ娘に育ってしまったよ。トホホ、、、だね。

百合子: そんなことを言っては、お嬢様が怒りますよ。

主人: そうそう。私がお前に巡り合ったのは平成10年のことなんだ。古伊万里を好きになったのはそれよりもずっとずっと前だから、もっと前に百合文の古伊万里に巡り合っていてもよさそうなんだけどね。それに、我が家には百合文を描いた古伊万里はお前だけしかいないんだ。お前以外の百合文の古伊万里があってもよさそうなんだよね。不思議だね~。

百合子: そうですか。百合のお花を描いた古伊万里は少ないんですか。

主人: 有田皿山は急峻な山並に囲まれているんだよね。その急峻な山襞のあちこちに美しい山百合が咲き乱れていてもおかしくはないだろう。それを思うと、山百合を描いた古伊万里が沢山あってもよさそうに思えるんだよね。
 それで、ちょっと疑問に思って調べてみたんだけど、本なんかにも、山百合を描いた古伊万里は出てこないんだよね。私の持っている本が悪いのか、私の捜し方が悪いのかしらないけど、、、、、。
 ま、ともかく、「山百合を描いた古伊万里は少ない。」との前提に立って、次に、植物図鑑で調べてみた。もしかして、九州には山百合は咲かないのか? と思って、、、、、。
 そしたらね、私の予想どおりだった。山百合は本州中部地方以北に分布すると書かれているではないの!!

百合子: そうですか。九州に山百合は咲いてないんですか!

主人: うん、そうなんだ。陶工は山百合を見てないんだものね。その清楚で理知的な姿に感動することもないから、百合を描かなかったんだろうね。勿論、オニユリ等は咲くようだけれど、それ等は、山百合のような清楚で理知的で、威厳に満ち、圧倒的な存在感を感じさせるようなことはなかったのではないだろうか。陶工は、山百合以外の百合にはさほど感動しなかったから、百合を描かなかったのではないだろうか。勿論、これも私の独断と偏見かもしれないけどね。

百合子: やはり、私は珍しいんですね。
 昔の陶工さん達は、絵本などを見ながら私を描いたのでしょうか?

主人: うん。更に植物図鑑で調べてみると、山百合やオニユリには花に斑点があると書いてある。お前にはその斑点がないよね。斑点がなくて、お前によく似ている花を捜してみると「ササユリ」というのが見つかった。私は、自生した「ササユリ」を見たことがないので、はっきりとはわからないが、「ササユリ」を描いたんだろうね。

百合子: 私は「ササユリ」だったんですか。

主人: たぶんそうだろう。でも、「サユリスト」には違いないよ!

 

追 記:これを書いた後、ネットで調べていましたら、九州には、テッポウユリとかいろんなユリが咲いているらしいことがわかってきました(~_~;) 結局、あまりにも少ない資料を基に、独断と偏見で書いてしまったことになります(><) もっと調べて書き直すだけの時間的余裕もありませんでしたので、そのままにしてアップしてしまいました。従いまして、内容的には誤りの可能性が高いですので、一つの読物として、読み飛ばしていただければ幸いです。

 

  ===================================

 

追 記(令和3年7月8日)

 私は、最近まで、伊万里を、肥前地域一帯で焼かれた磁器の総称として捉えていました。

 しかし、最近になって、九州陶磁文化館の区分にならい、生産地を、有田、平戸(三川内)、波佐見などに細分化すべきなのかなと考えるようになってきたところです。

 そのような考え方にたちますと、今回の「染付 百合文 小皿」は平戸(三川内)に区分すべきものなのだろうと考えます(~_~;)

 ところが、急に宗旨替えをしましたので、まだ、頭の中が混乱したままで、整理が出来ていませんでした(~_~;)

 酒田の人さんのところでも、これに似た「沢瀉に鷺文 六寸皿」を「古平戸」として紹介しているところです。それで、私も、それにならい、この「染付 百合文 小皿」の生産地を「肥前・平戸(三川内)」に変更したいと思います。


最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Dr.kさんへ (遅生)
2021-07-07 16:13:33
百合は永遠の乙女ですね。
鍋島百合子さんも、対話シリーズの中では珍しくほめられっ子です。
裏側をもう少し丁寧に描いておいてくれたら、鍋島小百合さんになっていましたね(^.^)
返信する
こんにちは (つや姫日記)
2021-07-07 18:48:47
美しいですね。
こんな百合が書かれた器があるのですね。

ご主人との対話
百合子さんでくるなと想像していたら
その通り。(笑)
色々分かって面白いですね。
返信する
遅生さんへ (Dr.K)
2021-07-07 20:02:44
これ、なかなか文様が良いですよね。
まず、絵柄のテーマが良いですよね(^-^*)
百合は永遠の乙女ですものね。
それをテーマにしたのが成功のもとですね(^_^)
ホント、もう少し裏面を丁寧に描いてくれていたら、「鍋島百合子」だったんですが、、(笑)。

そこまでされては、鍋島藩窯のメンツが丸潰れになりますから、許されなかったのでしょうか、、、(笑)。
返信する
つや姫日記さんへ (Dr.K)
2021-07-07 20:10:00
美しいですよね(^_^)
このような百合が描かれた伊万里は少ないと思います。

古伊万里との対話で「百合子」で登場してくると読みましたか(^_^)
ストーリーが読まれるようになってしまいましたね(笑)。
もっとも、それを裏返えしますと、つや姫さんの古伊万里への理解が深まってきている証拠ですね(^-^*)
返信する
Dr.kさんへ (酒田の人)
2021-07-07 20:42:52
裏面の唐草に平戸(三川内)の特長がでていますよね
このタイプの美しい薄濃みの品は大好きです
この手は裏面も鍋島風になっているタイプとそうでないタイプがあって
表と裏で多少ギャップを感じますよね。
ウチの「沢潟に鷺文皿」なども同タイプの品だhttps://blog.goo.ne.jp/sakatanohito/e/4caf3521b8a68a889684a2b489820869と思います。
返信する
酒田の人さんへ (Dr.K)
2021-07-08 09:56:03
改めて、酒田の人さんのところの「古平戸沢瀉に鷺文六寸皿」を拝見しました。
両者は、薄濃の技法が良く似ていますよね。

私は、最近まで、伊万里を、肥前地域一帯で焼かれた磁器の総称として捉えていました。
最近になって、九州陶磁文化館にならい、生産地を、有田、平戸(三川内)、波佐見などに細分化すべきなのかなと考えるようになったわけです。
そのように考えますと、今回の「染付 百合文 小皿」は平戸(三川内)に区分すべきものなのだと思います(~_~;)
ところが、急に宗旨替えをしましたので、まだ、頭の中の整理が出来ていません(~_~;)
追記で、生産地を変更したいと思います。

製作年代につきましては、明治にしてしまいますと夢が無くなりますので、幕末あたりに留めておこうと思います(^_^)
返信する

コメントを投稿