今回は、「伊万里 染付 文字蝙蝠(?)文台鉢」の紹介です。
最近、古伊万里の紹介の頻度が高くなってきていますが、これまでのように、出し惜しみをして、月に1~2点を紹介していたのでは、これまでのコレクションの多くを紹介し終わらないうちに、あの世に逝くような気がしてきたからです(-_-;) 焦りを感じてきたのかもしれません(^^;
ということで、これからも、古伊万里紹介の頻度が高くなるかと思います。ただ、下手な鉄砲数撃ちや当たるではないですが、片っ端から集めていれば名品に当たるかもしれないというような態度で集めたものですから、これから紹介する古伊万里の全てが自慢できるようなものではありません(-_-;) 「こんなもの、わざわざ紹介してくれなくてもいいのに。目が腐るよ、、、」という物も多いかと思いますが、「世の中には、こんな物を集めて喜んでいる者もいるんだ~」とご了承いただき、ざっと目を通していただければ幸いです。
この「伊万里 染付 文字蝙蝠(?)文台鉢」も、昭和54年に買ってきたものですから、やはり、今から41年前に買ってきたものです。
ご覧の通り、これまた、全面、疵だらけです(><) 前回紹介した「伊万里 色絵 花籠文花瓶」よりも酷い状態です(><)
破片の集合体のような状態ですが、それを焼継ぎで修理したり、鎹(かすがい)止めで修理しています。その修理された後の外観は酷いもので、外観などかまうものか、とにかく使えるようになっていればいいではないかという態度の修理です(><)
ところで、鎹止め修理といいますと、東京国立博物館所蔵で重要文化財に指定されている龍泉窯青磁の銘「馬蝗絆(ばこうはん)」茶碗が有名ですよね。
私は、この「伊万里 染付 文字蝙蝠(?)文台鉢」を見たとき、真っ先に、この東京国立博物館所蔵の「馬蝗絆」茶碗を思い浮かべました(^-^;
「馬蝗絆」茶碗(東京国立博物館所蔵)
(この画像は、ネットから借用)
そして、また、こうも考えました。
「名品とは、必ずしも、無疵完品とは限らないんだ!」と、、、。
これまでは、無疵完品の古伊万里の収集を目指してきましたが、必ずしも無疵である必要はないんだ、と思うようになったわけです。ある意味、「開眼」です!
それに、疵物でも、「もしもこれが無疵だったなら優品なんだがな~」と思えるものが市場には多く存在しますし、また、価格も安いんです。一石二鳥とはこのことですね(^-^;
この、「伊万里 染付 文字蝙蝠(?)文台鉢」に出会って以来、私は、特に、疵に囚われずに古伊万里を集めるようになったわけです。ですから、私のコレクションには疵物が多いんです。
その意味では、私にとっては、私の収集の方針を変更させた意義深い台鉢でもあります。
またまた、前置きが長くなりましたが、いよいよ、私のこれまでの古伊万里コレクションの方針を転換させ、私に、「古伊万里の収集は疵の有無に囚われない」ということを開眼させてくれた「伊万里 染付 文字蝙蝠(?)文台鉢」を、次に、紹介します。
立面
見込み面
真ん中には龍が、その周辺には文字(壽)が4字、蝙蝠(?)が4匹描かれています。
文字(壽)と蝙蝠(?)が描かれた部分の拡大画像
口縁部に残る鎹止め修理に使用した鎹(錆びた金蔵部分)
口縁部全周には4か所の鎹跡がありますが、1個所だけに鎹が残っています。
口縁部全周には4か所の鎹跡があるわけですが、1個所だけに鎹が残っていて、他の3か所は、上の画像にありますように、鎹は錆びて剥落し、その穴だけが残っています。
裏面(亀甲文と蝙蝠文が描かれています。)
見込み面からは、それほどに疵の酷さが分かりませんが、裏面で見ますと、その疵の酷さの状態が良く分かります(><)
割れた部分は焼継ぎで修理され、また、多くの鎹を使って鎹止めの修理がなされています(ただ、殆んどの鎹は錆びて剥落し、穴の中に金属だけが残っています)。
焼継ぎ修理の跡と鎹止め修理の跡(その1)
焼継ぎ修理の跡と鎹止め修理の跡(その2)
前所有者が彫ったと思われる屋号のような文字記号
台鉢の根元部分
花唐草のような文様が、手前側とその裏側に描かれています。
製作年代: 江戸時代中期
サ イ ズ : 口径;23.5cm 高さ;7.8cm 底径;10.1cm
追記(令和2年8月23日)
森川天さんから、裏面に彫られた文字記号は、「かぎ小」であろうということと、当時は、修理をした職人が、自分の屋号を記して残す習慣があったので、この台鉢を修理した職人が自分の屋号を記して残したのであろうというコメントが寄せられました。
また、鎹留め修理をした職人は、自分の屋号を彫って残す場合が多いので、この台鉢の場合は、鎹留め職人が彫ったものだろうということです。
なお、焼継ぎをした場合は、焼継ぎ職人は、硝子で自分の屋号を書いて残す習慣があったということです。
森川天さん、いつもいつも、貴重なコメントをありがとうございます(^-^;
それをここまで根気よく、見事に繋ぎ合わせているところを見ると、
相当に価値のあるものでしょうね。
世の中に存在させるか、無くしてしまうか。形あればこそ存在意義が
あると思います。
しかし、その割には、欠損部分が殆ど無いんですよね。
昔の磁器の材料は良かったんですね。現代の磁器でしたら、これほどの衝撃を受けたならば、もっとバラバラになり、欠損部分も多くなると思います。
修理のプロが修理しているんです。
それだけの価値がまだ残っているのでプロに修理を依頼しているんですね。
疵になっても残したいと思われた物、また、疵になっても残された物には、もともと、それなりの良さがあったんだと思います。
そこまでして残された物ですから、これからも、大切にして残してあげようと思っています(^-^;
「世の中には、こんな物を集めて喜んでいる者」として一言うのもなんですが(^.^)、修復伊万里のチャンピオンです。
思うに、初めに鎹を打って補修し、後に鎹を取って、焼継ぎし、本格的に直したのではないでしょうか。一個は取り忘れか。それとも残した?
江戸時代の所有者は、屋号を彫っていたりして、よほど思い入れが深かったのでしょう。
その品が、数百年後にDrの所へ来るのも、縁だとおもいます(^.^)
龍の回りの文字は、「譽(誉)」か「壽(寿)」ではないでしょうか。
これじゃ、馬蝗絆茶碗もビックリですよね(笑)。
ホント、修理伊万里の中でのチャンピオンですね。まるで、フランケンシュタインです!
どんな風に修理したのかわ分かりませんが、鎹止め師と焼継ぎ師は別人だと思いますので、少なくとも二人の修理師の手にかかっていますよね。
それに、私が、更に手を加えていますので、三人になりますね(笑)。
焼継ぎの部分が取れてしまっているところがありましたので、そこを補強するために、ボンドで補修しました。ちょっと黄ばんだ部分は、私が補修した跡です(-_-;)
龍の周りの文字は、「壽(寿)」かもしれませんね。
ありがとうございます(^-^;
ありがとうございました(^-^;