バルバラが死んだ (急激に進行する毒素感染症によるショック死)

1997年11月26日 | 歌っているのは?
 今朝,新聞でバルバラ Barbaraの死亡記事を見た。社会面左下のその小さな記事を発見した時,不意を突かれたように驚いた。「急激に進行する毒素感染症によるショック死」という訳の判らない病名が書かれていた。パリ郊外ヌイイの病院にて24日夕刻死亡。享年67才(ホントか?)。あーぁ,とうとう死んじゃったか。

 改めて思い返せば,遥か記憶の彼方より様々な歌が次々と浮かびあがっては消えてゆく。それはまるで亡霊のように止むことがない。大体においてメランコリックで内向的な情念を助長させるような歌が主体をなしていたが,それでもある一時代,そのひた向きな歌う姿に心安らぎ勇気づけられたことも確かにあったのだ。さて,追悼歌には何が相応しいか。そう,《鞄を持たずに》なんかはちょっとシンミリする。
 

  あなたが私のもとにやって来る日
  荷物を持ってきではだめ
  鞄のなかに何が入っていようと 私にはどうでもいい
  顔を見ればすぐにわかるわ
  長い長いあいだ 私はあなたを待っていた
  あなたは私に手を差しのべてくれる
  私はその手をとり あなたの言葉を聞いて
  むせぶ声をなぐさめさえすればいいの
  灯を消して あなたをいたわってあげる
  何も言わなくていいわ 私はよく覚えているもの
  あの淋しげなまなざしの小さな男の子を
  その悲しみを 今は失われた公園に隠して
  石蹴りか 戦争ごっこしかできず
  すべてを与えて何物も与えられなかった男の子を
 
  もし私があなたの方へゆくなら
  私は荷物を持たずにゆく
  鞄のなかに何があろうと あなたにはどうでもいいわよね
  顔を見ればすぐ 私だとわかるはず
  長い長いあいだ あなたは私を待っていた
  私はあなたに手を差しのべよう
  その手をとって 私の言葉にむせぶ
  あなたの声をなぐさめるだけでいいのよ
  灯を消して あなたはいたわってくれるわね
  私は何も言わない あなたはきっと覚えていてくれる
  あの髪を乱した小さな女の子を
  その悲しみを 今は失われた公園に隠して
  雨や風や麦わらや夜の涼しさを
  禁断の遊びを愛していた女の子を
 
  その日がやってきたら
  過去も荷物もなく 新しい春に向かって
  二人連れ立って出掛けましょう
  春は 二人の身体と手と顔とをひとつにするでしょう
  長い長いあいだ 二人はおたがいに待っていた
  幼い日の夢を繰り返しあったとして
  失われたまぼろしを追ったとして それが何になろう
  その日がくれば いつまでも認めあい
  見つけあって二人はともに出発するのだから
  あなたが私のもとにやって来る日
  あなたがやって来る日…


 
 Il y a tant et tant de temps que je t'attends..... そんなフレーズが脳裏にこびりついて離れない。新しい春に向かって,さて誰と一緒に歩いていっちまったんだか。とまれ,神よ安らかな眠りを与え給え。
  
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