およそ一年ぶりに「ウナギの話」なんぞを蒸し返してみる。ウナギの蒸し焼き,ってなモンで(時節柄御勘弁下さい)。まずは,昨日のYAHOO!ニュースでネット配信された記事を以下に引用しよう(毎日新聞2013年07月23日)。
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◆土用の丑、うな重弁当盗む 52歳女、容疑で逮捕 (愛知・豊橋)
22日午後0時20分ごろ、愛知県豊橋市藤沢町のイトーヨーカドー豊橋店で、女がうな重弁当などをカートに入れて支払いをせずに店外に出たのを男性従業員(38)が発見。駐車場から出ようとする女の軽乗用車のボンネットにかぶさるように乗ると、女は急ブレーキをかけて転落させ、逃走した。県警豊橋署は車のナンバーから豊橋市橋良町向山、会社員、滝井裕美容疑者(52)を割り出し、強盗の疑いで緊急逮捕した。
同署によると、うな重弁当4つ、うなぎ寿司とモズク酢各2パックの計8点(約8,076円相当)を盗んだとしている。22日は土用の丑(うし)。同署の調べに「その商品が欲しかった」と窃盗は認めたが、意図して従業員を転落させるなどの暴行は否認しているという。
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あれま,何とも難儀なこって。土用の丑の日だからって誰も彼もが律儀にウナギを食べなきゃならんという訳でもなかろうに。しかも盗んだのは随分とお高い「うな重」みたいだ(ヨーカドーのチラシを一寸チェックしてみると 1人前1,480円の品に相当するのかな?)。そんな無理をせずとも,ちょいと吉野家にでもゆけば680円で鰻丼が食べられますのに(ただし並盛)。私なんぞ最後にウナギを食べたのはいつだったか知ら。。。 と,過去の記憶を辿ってみても,すぐにはパッと思い浮かばないくらい,それはそれはかなり昔であることは確かだ。といって,ウナギを「食べれない」現状が不憫だとも不幸だともチットモ思ってはいない。人生イロイロ,であります。
もっとも,このネット記事だけでは,うな重4人前を万引きしたこのオカアチャン一家が日々生活苦に喘ぐアワレナ境遇にあるのか(極貧家族),あるいは単なるオキテ破りのクズ一家に過ぎないのか(極道家族)は即断しかねる。ただ,いずれにしても,逃げる際にクルマで人を跳ねる(未遂)という行為自体がクズであることは全く確かだ。それじゃぁ包丁を振り回しながら逃げる強盗と一緒じゃないか!(クルマ=包丁) 一切の弁解の余地はない。もしこれが,万引きしたうな重をママチャリの前カゴに入れてダッシュで自転車漕いで必死で逃げ去っていった。。。という事件であれば,まだ多少とも世間の同情を誘うところがあったかも知れないケレドモ。
閑話休題。これまた私事ながら,二十代の半ば頃,ウナギまみれの生活をしていた一時期があった。当時勤めていた環境調査会社において,水生生物実験施設の一部を利用してウナギの養殖をやっていたのだ。それは本業であるコンサルタント業務の合間を縫って社内で片手間におこなわれていたもので,有り体にいえば会社のボス(超ワンマン経営者)のウナギ道楽が社員に半ば強制的に押しつけられていただけなのだが,本業の仕事量が少ないときはその道楽(ウナギ養魚池の維持管理作業)の方が仕事の主体となったりもした。そのときの理不尽な経験から,食べ物としてのウナギについては個人的にあまり好い印象を持っておらず,とくに養殖ウナギは積極的に食べたいとも思わなくなってしまった(天然ウナギについては一応別モノとしておきましょう)。一方で,これを職業としてみた場合は,そのときの経験を活かすことで現在でもウナギ養殖池の飼育管理員の仕事ぐらいなら出来そうな気がする。ただし体力的に結構キツイ作業なので,フルタイムワーカーはちょっと無理ですけど。
そうだ,思い出した。やはりその当時,日本の某大手水産会社が支那(China)におけるウナギ養殖事業に進出するという計画があり,それに関連して現地法人での養殖指導を行う水産技術者を探していた。そして東大農学部の著名な某先生の方へその人材推薦依頼があったらしく,巡り巡って私のところにその話が舞い込んできたのだった。それである年の初夏の頃だったか,都心一等地にあるその某社の本社に呼ばれて事業担当者およびその会社のエライさんらと面談というか面接をおこなった。先方は20代の若造が来たのでのっけから驚いた様子だったが,東大のエライ先生の口利きとあっては無下にあしらうわけにもゆかなかったのだろう,非常に丁重に応対された。面談のあとには,丸ノ内にある一流レストランで,こちらがビックリするような豪華ランチを接待されたりもした。しかしながら,結局のところ,経験年数が少なく年も若すぎる(現地雇用者らに軽んじられる?)ということで,後日その話は体よく断られた。もしあの時その就活?が実現していたら,昨今は隆盛を極めている支那(La Chine)のウナギ養殖業者あたりと恐らくは強力なコネクションを得ていたであろうから,今の時期,自分のところにはお中元に養殖ウナギが山のように届いているのかも知れないなぁ,なんてショーモナイ皮算用をはじいたりもいたします。さて,逃がしたサカナは大きかったノカ?
ところで,ウナギの研究といえば,現在では東大海洋研(東京大学付属海洋研究所)が有名だが,やはりその昔,海洋生物の調査がらみで,その頃は東京都中野区内にあった海洋研に何度か足を運んだことがあった。現在ではウナギ研究の大家・大御所としてマスコミなどにもしばしば登場される塚本勝巳さんとも何度かお会いした。なかなか人当たりのよい先生だった。当時はまだ助教授で,もっぱらアユの回遊機構などの研究をやっておられ,ウナギのウの字の気配もなかったように思うが,ま,アユもウナギも海と川とを往き来する回遊魚であって(ただし前者は両側回遊魚amphidromous,後者は降下回遊魚catadromous),そのように研究対象が移行することは,いわば自然の成り行きとしてよくあることだろう。アユからウナギへ,どちらも大変美味しい魚ですし。
中野といえば,昨年春からウチの長男が大学の関係で都内の中野区に住むようになった。住まいは海洋研があった場所に比較的近いところなので,私もワンルームマンションの賃貸契約やらその後の引っ越し等の関係やらでその地に何度か足を運んだ。ずいぶんと久し振り,それこそ20数年ぶりの中野区界隈であった。中野坂上交差点あたりの変貌振りにはまったく驚いてしまったが,方南通りや中野通りなど主要街道沿いの風景は昔と大して変わっちゃいない様子だった。よく言えば既に十分に成熟して適度に落ち着いて適度に活気のある町並み。悪く言えば。。。 いやそれは言わないでおこう。親としては,それらの街の様子から,来るべき首都圏大地震に備えた行政の対応ぶりが,いささか不安に思えたのだけれども。。。 果たして,ウチの息子はあのようなゴチャゴチャした大都会の中にひとりポツンと住み暮らしていて,その期に及んで冷静沈着な対応が出来るだろうか? 養殖ウナギのように知らぬ者同士が集団蝟集して徒にワラワラと慌てふためくことなく,天然ウナギのように自己を律した正しい判断のもとシタタカに生き延びて欲しいものだ,なんて秘かに願うばかりである(ハイ,親バカです)。
ウナギがテーマなだけに,とりとめのない昔話をヌルヌルと蒸し返してしまった。メンボクナイ。なお,いずれも既に時効となっているであろう事どもゆえ,関係各位におかれましては何とぞ御容赦の程!