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実写版「ジョーカー・ゲーム」

2015-02-06 16:37:58 | days

「ジョーカー・ゲーム」は予想以上の面白さ。


原作のスパイ養成機関である「D機関」の特徴が織り込まれている箇所のつなげ方が上手い。

嘉藤(亀梨和也)をスカウトするシーンはXX(ダブルクロス)の冒頭だし、彼が仲間にからかわれるカードゲームのシーンは「ジョーカー・ゲーム」。
脱出のシーンは「ロビンソン」、ストーリーのなぞらえは「幽霊(ゴースト)」。

昭和12年頃を設定しているのに外地が舞台なので、時代がかった古臭さを感じないのと軍部の描写が最小限に抑えられているのがいい。
武野大佐役の 嶋田久作は、いくら目を凝らしてもあの「帝都物語」の魔人・加藤保憲そのもので懐かしくなった。
とはいえ、タイトル通りこの映画はオープニングから「ジョーカー・ゲーム」だ。
騙し、騙されのエンドレス。
スクリーンはそれを体現するかの様なノンストップアクション。
とにかく、嘉藤が逃げる、逃げる、逃げる・・・!


さて、嘉藤をスパイとして送り込んだのは「D機関」の創設者であり、魔王と呼ばれる「結城中佐(伊勢谷友介)」。
軍服に軍コートを纏い、ステッキをついていながらもあの姿勢のよさ。
(ステッキ姿も実はジョーカー・・・詳しくは原作をどうぞ)
伊勢谷も大分無駄な映画に使われたけど、私は「ハチミツとクローバー」の森田とこの結城はいいと思う。
伊勢谷って今年大河に出ているけど、演技が上手いわけでもないし、かと言ってひどく悪いわけでもなくて。
ただ、彼の出演はその演技力以外のところを買われている感じはある。
原作にない結城の片腕の神永(小澤征悦)も存在感あり。



原作を分かっていても、ハラハラさせられたシーンはたくさんある。
実際、スリーパーが現れると分かっていても、つい手を握り込んでしまったし。
時計塔のクライマックスシーンはコナンか?!って普通は突っ込むところだけど、
「ジョーカー・ゲーム」の世界をここまで堪能してるので、そんな暇もなく。

ラストは、リン(日本名:マリコ/深田恭子)がスパイ達からスパイ道具を奪って颯爽と逃げていく。
それを、笑顔の諦め顔で見送る嘉藤。
彼らの乗った車を、鼻を明かされた英国情報部が追跡・・・でエンド。

実写化は期待してしまうけど、この構成が限界かなとも思う。
他にも、単独で実写して欲しい原作のストーリーはあるけど、それだと興業的にどうか?って話になってくる。

それから原作を知らなくても、スパイアクションとして十分楽しめるけど、読んでいたほうが時折「あれ、これって・・・?」と思えるシーンが随所にあるのでより楽しめる。
私も最初の方で「?」って思ったところがラストでドンデン返しだっだし。
コミック版では「Dの魔王」が出てるので、そちらも可。


エンディングに流れる主題歌の「Dead or Alive」も歌詞がいい。
♪挑んだGAMEはリセットできない 背負う闇も連れて

スパイ養成機関は実際に先の大戦の時にあった「陸軍中野学校」がモデル。
有名なのは後期に退校した小野田寛郎氏がいる。
フィリピンに残置諜者として送られ、まさにD機関でもいうスパイとして10年、20年生きる・・・を実践した。
当時の上官の武装解除を得て、投降し帰国した。

原作で読んで欲しいのは「パラダイス・ロスト」の「追跡」。
結城の生い立ちなのだけど、読後は混乱する。
どこまでも、「ジョーカー・ゲーム」なのだった。