平御幸(Miyuki.Taira)の鳥瞰図

古代史において夥しい新事実を公開する平御幸(Miyuki.Taira)が、独自の視点を日常に向けたものを書いています。

日立 HMA-9500Ⅱの修理3台目~その3 修理完了と修理メモ

2014-11-18 06:37:14 | Lo-D HMA-9500の修理
 ようやく完動状態になりました。残る作業は内部配線の交換と、整流回路のダイオード交換だけです。整流ダイオードは雑音の少ないショットキーバリアというのを購入済みなのですが、何故か行方不明なので出てきたら交換します。

 今回の修理は、数年前に受けたいい加減な修理の修復となりました。下手な医者にかかって悪化した患部を再手術するのと同じです。前回に書いた入力基板の割れ。実は、基板が割れていただけでなく、パターンに添って盛り上げたハンダが多すぎて、隣のRチャンネルパターンと導通している部分があったのです。写真でも分かりますが、割れた部分に大面積で流し込まれたハンダが、基板の中央付近で上隣のパターンに侵食しています↓。


修理屋が破壊した入力基板


入力をコンデンサー入力だけにして切り替えなしに
ラムダコンデンサーは厚紙のバネ(右)とビーズバンド(左)で固定



左が高級なラムダコンデンサー 1.3μF
右2種類は修理屋が付けた150円位のフィルムコンデンサー(赤)1.0μFと
追加で付けられていた60円の 0.1μFポリエステルフィルムコンデンサー(黄)
0.1程度だと追加する意味ないし、両方共オリジナルより劣る


 この結果、シャシーアースと右チャンネルの入力がショートし、バイアス電流が過剰に流れて危険な状態になります。この機種は出力(スピーカー端子)のマイナス側も18Ωの抵抗でシャーシーアースとつながっています。電解コンデンサーに電気が溜まったままMOS-FETを取り付けようとして煙が出ました。MOS-FETも既に壊れていたので、この18Ωの抵抗が焼けたのです。外してみたら87Ωになっていました。入力側は10Ωですが、こちらも焼損して410Ωでした。僕が修理する前からどちらも焼損していたのです。


焼損していた18Ω抵抗

 このアンプは終段のパワーMOS-FETが壊れることは滅多に無く、壊れるほどの大電流が流れるときは、保護用に使われているヒューズ抵抗が焼けて回路が遮断される仕組みです。しかし、このアンプ独特のノンカットオフバイアス回路(擬似A級回路の一つ)に使われる集積回路TM1001は故障が多く、このアンプもTM1001に修理した痕跡がありました。このTM1001が壊れると純A級アンプになって、常時大電流が流れてヒートシンクがチンチンに熱くなります。

 酷い修理をした修理屋は、この集積回路につながっている1/4ワット150Ωヒューズ抵抗を、電力が二倍でも焼き切れない1/2ワットの金属皮膜抵抗に交換していたのです。回路を守るために焼き切れるから1/4ワット指定なのです。その指定容量を無視して勝手に二倍の1/2ワットにされたら、回路を守ることができない大電流が流れます。その結果として集積回路が故障するので、指定の二倍にした修理屋は本末転倒も甚だしい。


中央の緑色の2本の抵抗が容量オーバーの1/2Wタイプ


1/4Wタイプに交換
左端のトランジスタのヒートシンクも電気を通さないプラスチック製ネジにしてショート事故防止


 人間でも発熱すると寝込みます。寝るから治る。しかし、医者が解熱剤や興奮剤を大量に投与して見かけ上だけ元気にする治療法があったとします。この患者は肉体的限界を超えた時に突然死します。このアンプを修理した修理屋は、突然死させる医者と同じなのです。だから、修理後たった4年でボロボロになってジャンクとして売られた。アンプが可哀相です。

 僕が修理するときは、トランジスタのペア(2個一組で使われるセット)やコンプリメンタリー(プラス側とマイナス側のセット)の増幅率を極限まで一致させ、アンプに無理な動作がかからないで歪みが小さくなるように配慮しています。誤差は1%もないから、100万円クラスのアンプより高精度かもしれません。おそらく、一番誤差のあるのが初段のデュアルFETと終段のMOS-FETです。

 ペアやコンプリをきちんと合わせれば、調整指定が5mV以内という直流漏れ(スピーカー出力に直流電圧がかかること)も、容易に0.5mV前後に収まることになります。もっとも、使っているうちにずれてきますけど。


Lチャンネルの直流漏れ0.3mV(上)とバイアス値


Rチャンネルの直流漏れ0.7mV(上)とバイアス値

 HMA-9500Ⅱは、パーツのばらつきを吸収する回路になっています。だから、増幅率を合わせなくても良い音で再生するのですが、きっちり合わせれば次元の違う空間が表現されてきます。参考までに、取り外した古いパーツの増幅率hFEを掲載しておきます。ただし、数値は絶対的なものではなく、あくまでも僕の測定条件下での数値です。気温や測定回路で数値が変化するのだから、絶対的な数値など無いのです。大事なのは、取り付ける直前に測定してペアやコンプリが取れていることです。

初段カスコードペア(Qは回路図での番号)
Q701L 2SD666 hFE 87/ Q702L 2SD666 hFE 97 誤差11%
Q701R 2SD666 hFE 97/ Q702R 2SD666 hFE 102 誤差5%
(LRとも2SD667 hFE 185ペアに交換)

2段目ペア
Q703L 2SB648A hFE 112/ Q704L 2SB648A hFE 115 誤差3%
Q703R 2SB648A hFE 100/ Q704R 2SB648A hFE 115 誤差15%
(L 2SB648A hFE 119ペア、R 2SB648A hFE 117ペアに交換)

2段目カスコードペア
Q715L 2SC1775E hFE 408/ Q716L 2SC1775E hFE 495 誤差21%
Q715R 2SC1775E hFE 500/ Q716R 2SC1775E hFE 468 誤差6.5%
(L 2SC1775E hFE 395/396ペア、R 2SC1775E hFE 397ペアに交換)

3段目コンプリ
Q713L 2SD669A hFE 115/ Q714L 2SB649A hFE 148 誤差28%
Q713R 2SD669A hFE 123/ Q714R 2SB649A hFE 126 誤差2.4%
(L 2SD669A/2SB649A hFE 121コンプリ、R 2SD669A/2SB649A hFE 123コンプリに交換)

 おそらく、比較的合っているのはオリジナルから壊れずに残っているトランジスタ。誤差の大きい物は修理屋が買ってきて取り付けたものだと思います。トランジスタ全交換と書いてあっても、全てに新品を使ったとは書いてありませんから、別のアンプからの取り外し品も交換に使われていたと思います。

 僕の修理では、トランジスタ選別段階から1分測定をして使っています。選別品を売っている業者は30秒足らずの測定で、これでは数字が信用できません。測定し始めて、約1分頃に数字が1だけ変化することも多いからです。そうやって数字が完全に一致した未使用品を使っていますが、使えるトランジスタが絶滅しかけているので、泣く泣く1違いの誤差0.2%~0.5%も使うことがあります。

 本当は誤差があっても良い定電圧電源とか保護回路とかも、せっかく選別したのだからと誤差のないものを使っています。信号増幅回路の誤差は3%以内なら超高級品アンプなので、僕のやっていることは無駄といえば無駄、悪あがきといえば悪あがきですけど。HMA-9500やHMA-9500Ⅱには、それだけ注いでも惜しくない魅力があるということです。でも、選別から漏れたトランジスタの使い道も考えないと (;^ω^)


修理完了後
右後ろはパイオニアのプリアンプC-90a
1988年の発売だから佐藤あり紗さんの生まれた1989年の製品かも



大洗祭り号のガルパン新聞と記念写真
イエスの遺体に掛けたとされる亜麻布の上に置いて修理している


19日 画像追加


モレックスのコネクタでサトー電気で在庫限りを出してもらった
今回使うのは中のピンと、ハンダゴテの熱で縮む熱収縮チューブ



基板を何度も裏返されて電力供給ケーブルが切れて再ハンダが数度


抜き差しできるようにコネクタを付けてケーブルも長いものに交換
熱収縮チューブを二重にして緩み防止と短絡防止



取り付け後の別角度から
ピンの間が狭くて断線した時に危険なのが分かる


作業後に底板をネジ止めしようと思ったけどネジが行方不明 orz

    エフライム工房 平御幸
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8 コメント

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Unknown (うずしお)
2014-11-18 20:05:36
先生こんばんは。
日立のバレーボールの試合と、大変な修理の完了と、おつかれさまでしたm(__)mありがとうございました。
沖縄知事選が自民公認でない知事になり恐ろしかったですが、安倍首相の解散表明を聞き、周りから自民党しかないことを広げたいです。
返信する
Unknown ()
2014-11-18 22:00:59
先生 こんばんは

アンプの修理ありがとうございました。

基盤を割ってしまうなんて、修理というより破壊だと思いました。
アンプの回路は複雑ですが、部品一つ一つに意味があるのですね。

さて、先日名古屋の大須の電気街に行ったところ、
先日お借りしたサンハヤトのミニドリルの台が製造中止との
話を聞きました。(ミニドリルは大丈夫なようです)
少し探してみたのですが、ネット上では、マルツに
まだ若干在庫があるようです。

こちら→http://www.marutsu.co.jp/pc/i/7810/

不思議なことに「サンハヤト ミニドリル」で検索しても出てこなかったのですが、
品番の「ST-3」を入力したら出てきました。

もし、購入を検討されていた方がいらっしゃれば、お早目の
購入をお勧めします。
ちなみに、私は1台確保しました。
ドリル本体の方も早めに手に入れたいと思います。
返信する
Unknown (ふく)
2014-11-19 00:17:48
先生、今晩は。

アンプの修理完了お疲れ様でした。
試聴会も選挙も間近のお忙しい中、ありがとうございました。m(__)m
早くお疲れがとれますように。私も周知活動します。
返信する
うずしおさんほかへ (平御幸)
2014-11-19 00:46:06
うずしおさん今晩は。

自分の選挙区はミンスになりそうです。前回に落下傘で当選したヤンキー先生が、ただの一度も駅前で街頭演説をしているのを見たこともありませんから。やはりただのアホでした orz

訓さん今晩は。

基板の穴あけは慣れたらスタンドは必要ないですね。薄いから斜めでも余り気にならないからです。やはりバッフルや端子穴の加工に威力を発揮します。

スーパーマリンバを聴いたら、さすがに切れと迫力とリアルさが違います。エージングが進めば艶と透明度もアップすると思います。

ふくさん今晩は。

まだ3台修理しなくては orz

9500Ⅱの置き場所も考えないと (;・∀・)
返信する
Unknown (ひなた)
2014-11-19 09:44:16
先生おはようございます。

立て続けのアンプ修理お疲れ様です。
オーディオは本当に繊細なものなんですね。今、代わりのアンプが届くのを待っていますが、到着したら使い方などをもっと調べて大切に使ってあげたいと思います。
回路を守るためにわざと抵抗が壊れるようになっているというのが、自己犠牲の精神そのものだと思いましたが、ケンチャナヨ壊し屋(修理屋に非ず)には理解できなかったんでしょうね。
前回の記事で先生が自作された基盤は、女性の飾り櫛のようにも見えました。
返信する
ひなたさんへ (平御幸)
2014-11-19 13:27:35
ひなたさんこんにちは。

9500Ⅱの回路図には数カ所の間違いがあります。間違いを発見できて一人前。

穿った見方をすれば他メーカーに真似されないようにわざと間違えたのかも。回路図を書くのは若手の仕事だと思うので、素で間違えた可能性もあります。

この修理屋は、サンスイの高価なアンプの基板も割ってトラブルになった過去があるようです。昔は勝手に取り外したラムダコンデンサーを高価格で売っていたという噂も。ランクの落ちるパーツに取り替えて、価値のあるオリジナルを売って儲けていたみたいです。

今回のはラムダコンデンサーが付いていただけましでした。
返信する
Unknown (れい)
2014-11-20 11:05:37
先生おはようございます。

修理最後までお疲れ様でしたm(__)m
記事を拝見し、先生が「日立の9500は一台2週間はかかる」と仰っていたのがわかりました…
いつか私も小さなアンプを作ってみたいと思っていましたが、ハードルは高そうです(lll゜Д゜)

それからバレーの応援に行かれた皆様もありがとうございましたm(__)m
日立の下克上を信じて見守りながら応援します!

訓さん

サンハヤトの情報ありがとうございます、無事購入できましたm(__)m
私もですが、家族がミニサイズのスタンドを珍しがり気にしていたので助かりました!
返信する
れいさんへ (平御幸)
2014-11-20 12:26:13
れいさんこんにちは。

新しく作るほうがはるかに楽です。一番時間のかかる作業が古いハンダを取り除いてパーツを外すことですから。

在庫はなくなりましたが、日立のMOS-FETを使用したアンプ製作キットというものがあります。

http://www2.ocn.ne.jp/~san-ei/mos50kbkit.htm

ノートパソコン用のDCアダプタを使えば簡単にアンプは製作できます。一番ドン臭い人でも作れますから、少なくともホットケーキよりは簡単です。
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