縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

たかが外国語、されど外国語

2013-02-07 23:37:08 | 最近思うこと
 以前、米国駐在から戻って来た人から聞いたジョーク。
  「2ヶ国語を話せる人をなんて言う?」「バイリンガル!」
  「3ヶ国語だと?」「トリリンガル?」
  「OK。じゃあ、1ヶ国語しか話せないのは?」「モノリンガル??」
  「いいや、それはアメリカンさ。」

 これを聞いたのは80年代の半ば。当時、アメリカは世界の中心であった。世界中の人がこぞって英語を勉強するから、アメリカ人が外国語を勉強する必要はない。アメリカ人は英語だけ話せば十分なのである。これは一種驕りのようでもあるが、反面事実でもあった。
 しかし、40年近く経った今、アメリカにもはやこのジョークは通用しない。

 先日、アメリカに行った。フロリダで6日間過ごした。アメリカで一番ヒスパニックが多く住むと言われるだけあって、街を歩いているとスペイン語がよく聞こえてくる。ホテルでタクシーをお願いしたところ、ずっと英語を話していたフロントの女性が、電話でいきなり“Hola!”とスペイン語を話し始めた。で、終わった途端、今度は僕に、タクシーはすぐ来ますと英語で応えてくれた。見事である。あたかも英語とスペイン語が公用語のような感じであった。
 が、これはフロリダに限ったことではない。フロリダからボストン経由で帰国したが、空港の係員は強烈なスペイン語なまりの英語を話していた。巻き舌というか、どこか「べらんめえ調」の英語である。

 移民が自国語と英語を話すだけで生粋のアメリカ人は英語しか話せない、やはりアメリカ人は外国語が苦手だ、と言う人がいるかもしれない。
 しかし、アメリカは元々移民の国である。そして、今やヒスパニックの人口は5,000万人を突破し、全人口の16%を占めるまでになっている。それだけ英語以外の言葉を話す人が増えているわけだし、恋人や友人がヒスパニックという人も多いはずだ。社会全体としてスペイン語、つまり外国語に触れる機会が増えているのである。実際、あの華麗なるブッシュ一族のジェブ・ブッシュ氏(ブッシュ元大統領の息子で、ブッシュ前大統領の弟)の妻はメキシコ系で、彼はスペイン語に堪能とのことである。
 アメリカでは確実にバイリンガル人口が増えているに違いない。

 さて、翻って日本はどうだろうか。
 実は新年早々中国大使館に行く機会があった。パスポートの更新、結婚・離婚等の手続き、各種証明等の事務を行う領事部は、中国人でごった返していた。聞こえてくるのは中国語ばかり。とても日本とは思えない。
 我が国に暮らす外国人は207万人。大まかに60人に1人が外国人という計算になる。国別では中国人が67万人でトップ。尖閣問題以降中国からの観光客は減ったが、一時は銀座を歩けば中国人に当たるといった観すらあった。
 しかし、周りを見ると、中国語に堪能な日本人は極めて少ない。なぜなら日本に来る中国人はたいてい日本語を話すからである。必要は発明の母ではないが、日本にいると中国語を話す必要がないから、日本人は中国語を話さないのである。
 いや、これは何も中国語に限った話ではない。中学、高校、さらには大学と、6年なり10年なり勉強する英語にしても同じだ。日本にいる限り、英語を使わざるを得ない場面に遭遇することは少ない。これでは外国語は上達しない。残念ながら、冒頭のジョーク、1ヶ国語しか話せないのは「日本人!」が正解かもしれない。