縁側でちょっと一杯 in 別府

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『アンネの日記』事件に思う

2014-03-03 00:02:26 | 最近思うこと
 東京都内の図書館で『アンネの日記』や関連する書籍が破られる被害が続出している。

 『アンネの日記』は、アンネ・フランクという少女が、ナチス・ドイツの迫害を逃れるため家族とともに隠れ住んだ2年間の生活を綴ったものである。死と背中合わせの生活の中でも希望を失わずに生きて行くアンネの姿は、彼女がナチスに逮捕され強制収容所で僅か15歳で亡くなった事実を思い起こすにつれ、本当に痛々しく涙を禁じ得ない。
 以前『アンネの日記』やアムステルダムの“アンネ・フランクの家”のことを書いているので、ご関心のある方はご覧頂きたい(2006年9月10日付『アンネが信じたもの』)。

 一体全体、誰が何のために『アンネの日記』を破いているのだろう。

 犯人が組織か個人かというと、おそらく個人であろう。何らかの目的、意図を持った組織が犯人であれば、犯行声明を出し、自らの主義主張の正当性を訴えるに違いない。が、今のところ、そんな話は聞いていない。それに組織であればもっと目立つ方法を使うだろう。図書館で本が破られるのはさほど珍しい話ではなく、また誰かが気が付かない限り表にも出ない。何か訴えたいことがあるなら、公衆の面前で本を焼くとか切り裂くとかのパフォーマンスを採ると思う。

 しかし、個人となるとその動機、理由を知るのは難しい。

 歴史的に見ても我が国に反ユダヤ主義的な思想はない。ユダヤ人虐殺・ホロコーストの悲劇の象徴といえる『アンネの日記』はでっち上げだ、と言う極端なナチス信者、ヒトラー信奉者も日本では聞いたことがない。もっとも、たまたまそんな人間が一人いて事件を起こしたのかもしれず、その可能性を完全には否定できない(地理的に横浜の図書館と池袋の書店は別の人物、模倣犯のような気がするが)。

 個人的には、今回の犯行は、アンネ・フランク、あるいは彼女の隠れ家や収容所での生活、そうした外界と隔絶された生活への恨みや病的なまでの執着を持った人物の犯行の気がする。本を破いてはいるものの、図書館に馴染みのある、本好きな人間なのかもしれない。
 もう一つ気になるのは犯行の時期である。被害が見つかったというか話題になったのは2月のことであるが、実際に本が破られたのはもう少し前からの気がする。我々が気が付いていなかった、つまり『アンネの日記』を手に取る人がいなかったり、破られていてもあまり気に留めなかっただけかもしれない。本を破るという行為は褒められたものではないが、犯人はただ我々が『アンネの日記』に無関心であることを哀しみ、警鐘を鳴らしていたと考えられなくもない。

 いずれにしろ、これ以上被害が拡大しないことを切に望む。また、今回の事件で初めて『アンネの日記』を知った人もいると思うし、改めて関心を持った人も多いと思う。災い転じて福となすではないが、この一件が、『アンネの日記』が多くの人に読まれ、今後も読み継がれて行く、一つのきっかけになれば良い。


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