「こんな変わり果てた姿になって・・・。お前には本当に苦労かけたな。」
べつに『おしん』のように子供を厳しい奉公に出していたわけではない。貸していたマンションが空き、4年振りに部屋を見て来たのである。
マンションは随分ぼろくなっていた。床には大きなシミ、壁紙には汚れやひび割れ、障子は破れ、そして窓は開きにくい等々。勿論経年劣化は仕方がないが、使い方のせいなのだろうか、4年という歳月以上に傷んでいる気がした。この間、我々は違うマンションに住んでいたが、そこはここまでひどくない。
う~ん、人に家を貸すというのは、こういうことか。自分の家であれば大事に使うが、他人の家、それも一時の住まいだと思えば、使い方は自ずと雑になるのだろう。せっせと稼いで住宅ローンの返済を助けてくれたマンションに、お詫びの言葉もない。
この4年間、家を貸すとぼろくなると知った以外にも、いくつか発見があった。
まずは、賃借人、つまり借り手の権利が極めて強いと知ったこと。契約書上は「正当な事由」があれば賃借人に退去してもらえるとあるが、実際にはほとんど無理だと聞かされた。例えば、自らが住みたいとか、子供が住むといった程度では「正当」と認められないという(別途家を借りて住めば良いということらしい)。どうしてもとなると、賃借人に相当な立ち退き料を支払う必要があるそうだ。よって、転勤等でいずれ戻って来るつもりならば、多少賃料は下がるかが、期限を切った定期賃貸借にしないといけない。
次に税金の高さ。給与天引きでは税金をあまり意識しないが、確定申告し、自ら追加で税金を納めるとなると、その金額の大きさに驚いた。これは以前「家主はつらいよ 確定申告編」に書いた通りである。
そして退去ビジネスの存在。今回、退去時の立会い代行から、原状回復工事の見積り・交渉、そして実際の工事まで行う業者の存在を知った。入居者の募集・管理等は大手不動産販売業者にお願いしていたが、賃借人の退去にあたり、そこの協力会社として紹介されたのである。また、こちらがプロであれば、先方にもプロがいる。保険会社である。業者の出した見積りを精査し、妥当と判断した金額を支払ってくれる。
原状回復をめぐるトラブルが多いとは聞いていたが、こうしたビジネスが成り立っているとは知らなかった。今では保険に入ることが賃貸の条件になっているケースが多いとのこと。原状回復は敷金で十分といった牧歌的な(?)時代はとうの昔の話なのであった。
実は、このマンションを買う前、一時的に家を借りていたことがある。このときの仲介業者のおばさんがとても良い人で、家主は法人契約を希望していたのに、この人なら個人契約でも問題ないと押し切ってくれたし、僕らが1年ほどで出ることになった際も、綺麗に使っていると敷金は全額返ってくるようにしてくれた。20年近く前の話だが、今のご時世では到底考えられない対応である。やれやれ、家を貸すのも借りるのも大変な世の中になったものだ。
というわけで、結局僕らはこのマンションに戻ることにした。現在リフォーム中。苦労をかけた家が、また綺麗な姿に戻るのが楽しみだ。この家が終の棲家になるか、それとも売って他所に移るか、先のことはわからない。ただ、もう貸すのは止めようと思っている。
べつに『おしん』のように子供を厳しい奉公に出していたわけではない。貸していたマンションが空き、4年振りに部屋を見て来たのである。
マンションは随分ぼろくなっていた。床には大きなシミ、壁紙には汚れやひび割れ、障子は破れ、そして窓は開きにくい等々。勿論経年劣化は仕方がないが、使い方のせいなのだろうか、4年という歳月以上に傷んでいる気がした。この間、我々は違うマンションに住んでいたが、そこはここまでひどくない。
う~ん、人に家を貸すというのは、こういうことか。自分の家であれば大事に使うが、他人の家、それも一時の住まいだと思えば、使い方は自ずと雑になるのだろう。せっせと稼いで住宅ローンの返済を助けてくれたマンションに、お詫びの言葉もない。
この4年間、家を貸すとぼろくなると知った以外にも、いくつか発見があった。
まずは、賃借人、つまり借り手の権利が極めて強いと知ったこと。契約書上は「正当な事由」があれば賃借人に退去してもらえるとあるが、実際にはほとんど無理だと聞かされた。例えば、自らが住みたいとか、子供が住むといった程度では「正当」と認められないという(別途家を借りて住めば良いということらしい)。どうしてもとなると、賃借人に相当な立ち退き料を支払う必要があるそうだ。よって、転勤等でいずれ戻って来るつもりならば、多少賃料は下がるかが、期限を切った定期賃貸借にしないといけない。
次に税金の高さ。給与天引きでは税金をあまり意識しないが、確定申告し、自ら追加で税金を納めるとなると、その金額の大きさに驚いた。これは以前「家主はつらいよ 確定申告編」に書いた通りである。
そして退去ビジネスの存在。今回、退去時の立会い代行から、原状回復工事の見積り・交渉、そして実際の工事まで行う業者の存在を知った。入居者の募集・管理等は大手不動産販売業者にお願いしていたが、賃借人の退去にあたり、そこの協力会社として紹介されたのである。また、こちらがプロであれば、先方にもプロがいる。保険会社である。業者の出した見積りを精査し、妥当と判断した金額を支払ってくれる。
原状回復をめぐるトラブルが多いとは聞いていたが、こうしたビジネスが成り立っているとは知らなかった。今では保険に入ることが賃貸の条件になっているケースが多いとのこと。原状回復は敷金で十分といった牧歌的な(?)時代はとうの昔の話なのであった。
実は、このマンションを買う前、一時的に家を借りていたことがある。このときの仲介業者のおばさんがとても良い人で、家主は法人契約を希望していたのに、この人なら個人契約でも問題ないと押し切ってくれたし、僕らが1年ほどで出ることになった際も、綺麗に使っていると敷金は全額返ってくるようにしてくれた。20年近く前の話だが、今のご時世では到底考えられない対応である。やれやれ、家を貸すのも借りるのも大変な世の中になったものだ。
というわけで、結局僕らはこのマンションに戻ることにした。現在リフォーム中。苦労をかけた家が、また綺麗な姿に戻るのが楽しみだ。この家が終の棲家になるか、それとも売って他所に移るか、先のことはわからない。ただ、もう貸すのは止めようと思っている。