自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★再訪・琉球考-中-

2009年05月09日 | ⇒トピック往来

 宿泊した那覇市のホテルのレストランに入った。店の入り口には朱塗りの酒器がディスプレイとなっていて、屋号も「泉亭」とあったので、てっきり和食の店かと思っていた。ところが、メニューは「日本・琉球・中国料理」だった。和食をと思っていたのだが、せっかく沖縄にやってきたので琉球料理も食べたい、どうしようかと迷って、「琉球会席」というコースがあるのが目にとまり注文した。飲み物は30度の泡盛のロックにした。

          チャンプル・イノベーション

  ミミガーやピーナツ豆腐、チャンプルーがどんどんと出てくるのかと思ったら、そうではない。食前酒(泡盛カクテル)、先付け(ミミガー、苦瓜の香味浸し、ピーナツ豆腐)、前菜(豆腐よう和え、塩豚、島ラッキョ、昆布巻き)、造り(イラブチャー=白身魚)、蓋物(ラフティー=豚の角煮)などと、確かに金沢の料理屋で味わうのと同じように少量の盛り付けで、しかも粋な器は見る楽しみがあった。日本料理のスタイルで味わう琉球料理なのだ。

  「日本・琉球・中国料理」の文字をメニューで見れば、専門性がない、何でもありの食堂をイメージしてしまうかもしれない。ここからは推論だ。北陸や東京の感覚では、沖縄は日本の最南である。ところが、沖縄の人たちの地理感覚では日本、韓国、台湾、中国に隣接する東アジアの真ん中に位置する。歴史的にも交流があり、外交的にも気遣ってきたのだろう。沖縄にはチャンプル料理がある。野菜や豆腐に限らず、様々な材料を一緒にして炒める料理で、ゴーヤーチャンプル、ソーミンチャンプルなどは北陸でもスーパーの惣菜売り場に並ぶようになった。チャンプルは沖縄の方言で「混ぜこぜ」の意味。このチャンプ料理をもじって、沖縄の文化のことを、東南アジアや日本、中国、アメリカの風物や歴史文化が入り交じった「チャンプル文化」とも。

  6年ぶりに沖縄を入り、このチャンプル文化にある種のイノベーションを感じた。イノベーションとは、発明や技術革新だけではない、既存のモノに創意工夫を加えることで生み出す新たな価値でもある。先のレストランでの琉球会席でも、和食を主張しているのではなく、和のスタイルに見事にアレンジした琉球料理なのである。その斬新さが「おいしい」という価値を生んでいる。沖縄の場合、独自の文化資源を主体にスタイルを日本、中国、東南アジアに変幻自在に変えて見せるその器用さである。これは沖縄の観光産業における「チャンプル・イノベーション」と言えるかもしれない。

  那覇市の目抜き通り「国際通り」=写真・上=でこのイノベーションの息吹を感じた。かつては雑貨的な土産品が軒を連ねていたが、今回は沖縄オリジルの主張が目立った。沖縄の特産野菜「紅イモ」を使った「紅いもタルト」が人気の土産商品。伝統の沖縄菓子「ちんすこ」を使った「ちんすこショコラ」の店=写真・下=も。キューピー人形が沖縄の衣装をまとって「沖縄限定コスチューム・キューピー」に。なんとこれが1700種類もある。ゴールデンウイークの人混み、そして南国の日差しは強く、すっかり沖縄の熱気に当てられた。

 ⇒9日(土)朝・金沢の天気  はれ  

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