自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「子落とし」狛犬の話

2009年07月16日 | ⇒トピック往来

 神社の神殿や社寺の前庭には、さまざまな表情をした一対の狛犬(こまいぬ)が置かれているものだ。きょう(6月16日)訪ねた、石川県七尾市能登島の大宮神社の狛犬は凄みがあった。「獅子の子落とし」がモチーフなのである。

  大宮神社の狛犬は、獅子(ライオン)が千尋の谷に子供を落として、その子供を見守っているという姿で、左手の子は千尋の谷に落ちて仰向けになり、右手の子供は崖を這い上がっているという構図=写真=になっている。説明書きには、台座に使われている岩は富士山から運んだ溶岩であると記されている。これが黒く、ゴツゴツした感じで、崖というイメージにぴったり合っている。

  「獅子の子落とし」は、自分の子供に厳しい試練を与えて、立派な人間に育て上げることのたとえで使われる。インターネットで検索をかけてみると、「子落とし」をモチーフにした狛犬は、東京・赤坂の氷川神社など関東地方にいくつかある。この狛犬の寄進者が裏面に記されている。昭和14年(1939)、東京・亀戸の「野中菊太郎」となっている。ちょうど70年前のことだ。今回ガイド役を引き受けてくれた県水産総合センター水産部能登島事業所の永田房雄所長の話だと、野中は当地出身という。財を成して、生まれ故郷に報いたのだろう。

  内湾のため穏やかな七尾湾と海辺に青々と広がる田の海。のどかな半農半漁の里に似つかわしくない、激しいモチーフである。ただ、写真のように、崖を這い上がる子をじっと見守る親の表情がどことなく優しい。能登人の気風にあっているのかもしれない。

                  ◇

  ここからはお知らせ。では、なぜ能登島を訪ねたかというと、金沢大学と石川県が主催して実施する環境ツアー「能登エコ・スタジアム2009」の見学コースの確定のため。ツアーの詳細はきょう16日付の読売新聞石川版で記事紹介された。この狛犬はツアー2日目、午前の能登島バスめぐりのコースで見学できる。

⇒16日(木)夜・金沢の天気  あめ

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