自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆「第九」を聴きながら 能登半島地震のこの一年をめぐる思い

2024年12月15日 | ⇒トピック往来

  ベートーベン「第九交響曲」の演奏をきょう聴いて、年の瀬を実感した。石川県音楽文化協会の主催で金沢歌劇座で開催され、石川フィルハーモニー交響楽団の演奏、合唱は県合唱協会合唱団、名古屋なかがわ第九合唱団、氷見第九合唱団のメンバー、指揮者は碇山(いかりやま)隆一郎氏。昭和38年(1963)から続く恒例の年末コンサートで、ことしで62回となる。

  リーフレットに第九をめぐるエピソードが記されている。第九はベートーベンが残した最後の交響曲だが、初演はウイーンで演奏された1824年5月だったので、200周年ということになる。初演のとき、ベートーベンは聴力を完全に失っていて、指揮者の横で各楽章のテンポを指示するだけの役割だった。終演後の聴衆の拍手にまったく気づかず、背を向けていた。見かねたかアルト歌手がベートーベンの手を取って、聴衆の方に向かわせて初めて熱狂的な反応に気が付いたという話だ。そんなリーフレットの説明も目を通していると、演奏が始まった。(※写真は、第九交響曲コンサートのチラシ)

  第一楽章は、弦楽器のトレモロとホルンで始まり、朝靄(あさもや)がかかったような入りだが、やがてホルンに促されるように全楽器が叩きつけるような強奏になる。演奏を聴きながら、元日の能登半島地震を想い起した。穏やかな正月を迎えることができたと思っていたところ、午後4時10分、スマホがピューンピューンと鳴り、緊急地震速報。グラグラと金沢の自宅が揺れ出した。押し入れの引き戸などがガンガンと音を立てて閉じたり開いたりを繰り返している。震源地は能登地方で「震度7」の速報が走った。

  第二楽章は、まるで「ティンパニー協奏曲」だ。ティンパニーを駆使した構成で、弦楽器の各パートによりフーガ風のメロディが次第に盛り上がっていく。震災から復興に向けて動き出した。6月下旬から公費解体が始まり、ガレキは港から船で、金沢と能登を結ぶ自動車専用道路「のと里山海道」はガレキを運ぶ連結トレーラーが目立つようになった。

  第三楽章は、木管楽器による短い序奏に続いてバイオリンが安らぎに満ちた音を奏でる。やがてクラリネットがそれを受け継ぎ。息の長いメロディアと歌声が響く。個人的にこのメロディに雨音を感じた。9月の大雨は最初は柔らかな雨音だった。それが長く続き、ときには強烈に降り、輪島市では48時間で498㍉とい記録的な大雨となり、被害をもたらした。

  第四楽章は、「歓喜の歌」として知られる独唱と合唱を取り入れた楽章だ。管楽器と打楽器による不安げな導入部に続き、チェロとコントラバスによる会話のような演奏が入り、この後、低音弦楽器から順に高音弦楽器へ、そして全楽器による合奏へと高揚していく。聴いているうちに気分が高揚してくるのが分かる。合唱が高らかに歌い上げた後にオーケストラのみで力強く曲を閉じる。同時に、過ぎゆく年を振り返り、来るべき新しい年を喜びとともに迎えたい。そんな気分になる。(※楽章の記事の一部はリーフレットより引用)

⇒15日(日)夜・金沢の天気   あめ


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