自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆江戸時代の能登にタイムスリップ 時空を超えて人々の心根に触れるオペラ

2025年02月02日 | ⇒トピック往来
  『能登奇譚』というオペラを鑑賞してきた。能登を舞台にした初めてのオペラという触れ込みもあり興味がわいた。きょう午後6時から石川県文教会館(金沢市)での2時間余りの公演だった。タイトルの「奇譚(きたん)」という言葉は日常で使う言葉でもないので、辞書やネットで意味を探ると「奇談」「不思議な言い伝え」と出てくる。ますます好奇心がわいて客席に着いた。
 
  時を超えるダイナミックなストーリーだ。主人公の能太(のうた)は不登校がちで頭を金髪に染めた14歳の男子中学生。教室で、今晩はキリコ祭りを見に行こうと話しているうちに気を失って、江戸時代の能登にタイムスリップする。170年余りの時を超えて能登のキリコ祭りで出会ったのが、大飯食らいで江戸に出て横綱になった阿武松緑之介。最初は、飯ばかり食べて相撲が上達しなかったため、親方から「お前は能登に帰れ」と言われ帰途に就く。が、「このままでは死んでも死にきれない」と一念発起して江戸に戻り、ひたすら稽古に励み、「天下に敵なし」と言われた横綱となる。花相撲で故郷に錦を飾った阿武松からそんな話を聞かされる。
 
  そして、「能登の親不知(おやしらず)」で知られた難所、曽々木海岸と真浦の断崖絶壁で道を開いていた麒山和尚と出会う。絶壁の海岸で命を落とす人が多くいた。近くの寺で禅修行をしていた和尚は、「何のために禅修行をしているのか」と悩み続けていたが、53歳のとき「寺で座るのも禅、安全な道を開くのも禅修行」と悟り、開道に必要な浄財集めの托鉢に奔走する。苦難の工事には西洋人の道具(ダイナマイト)を使っている、天狗のチカラを借りているといううわさも聞かされた。
 
  能太は能登に秘められた数々の物語を聴き、教室で目を覚ます。学校の仲間たちがいる。夢を見ていたのかと思ってふと手を見ると、夢の中で占い婆からもらったお守りを握っていた。そして能太の周りには江戸時代の人たちもいた。これでフィナーレとなる。ピアノやフルート、打楽器などによる生の演奏と歌や合唱と芝居が融合したオペラだった。原作と作曲、指揮は金沢在住の木埜下(きのした)大祐氏、そして時代考証は郷土史家の藤平朝雄氏が担当した。時空を超えて結びつく人々の絆と、そして「能登はやさしや土までも」といわれる能登のストーリーが忠実にそして見事に描かれていた。
 
⇒2日(日)夜・金沢の天気   くもり
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