自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★NHKの「在るべき方向」とは

2020年11月29日 | ⇒メディア時評

   このブログでも何度かNHKの受信料をテーマに取り上げてきた。先月10月16日、受信料制度の在り方などを検討する総務省「放送を巡る諸課題に関する検討会」で、NHK側が家庭や事業所でテレビを設置した場合はNHKへの届け出を義務化するよう放送法の改正を要望したというニュース(10月17日付・共同通信Web版)があった。受信契約を結んでいない世帯の居住者の氏名や、転居があった場合は転居先などの個人情報を、公的機関などに照会できるようにする仕組みの導入も求めた。受信契約の対象者を把握することで不払いを減らし、営業経費の削減にもつながるというのだ。

   今月20日、総務省は11月20日、NHKが求めていたテレビ設置届け出の義務化は「不適当」として見送る方針を示した(11月20日付・日経新聞Web版)。NHKは特殊法人として受信料に支えられ、法人税は免除されている。この環境で、さらにテレビ設置届け出の義務化では視聴者・国民の反発を招くと判断したようだ。このいきさつについて詳しく知りたいと思いネットで検索したところ、関西テレビ公式ホームページ「東京駐在 キーパーソンに訊く!」で、高市早苗・前総務大臣へのインタビュー記事が参考になった。以下記事を引用する。

   NHKの2019年度決算の営業経費(徴収経費)は759億円だった。同年度の受信料収入は7115億円なので、営業経費が10.6%を占めたことになる。徴収コストが高い。それは強制徴収の制度も罰則もないので、「NHKの苦労」はある意味で同情する。ちなみに、フランス、ドイツ、韓国では受信料は強制徴収で、支払わない場合は罰金や追徴金が課される。イギリスは強制徴収制度はないが、罰則規定はある。

    NHKの営業経費の中で「訪問要員による係わる経費」が305億円。訪問要員は、未契約者や入居者の入れ替わりを把握するための「点検」、「面接」、「(テレビの)設置把握」、「説明・説得」という手順を踏んで、「契約取次」にいたる。が、未契約者からは「急に訪ねてきたNHKの訪問員が、テレビの有無を確認すると言って無理やり部屋に上がりこんで・・・」といった苦情が寄せられることになる。こうしたクレームやトラブルを解消するために、NHKは公共料金や税金との共同徴収を可能にする「放送法」の改正を望んでいる。

   しかし、地上波のみの地上契約で年額1万4700円、地上波を含む衛星契約で年額2万6040円の受信料。衛星アンテナが設置された集合住宅に入居すると、衛星放送をまったくに視聴しないのに年額2万6040円の受信料負担は納得できないと感じている視聴者も多い。ましてや、(上記の)放送法の改正をするのであれば、受信料を相当安い水準にしなければ視聴者の支持と信頼感は得られない。また、コスト的に、地上波2波、ラジオ3波、衛星4波は「放送波の肥大化」との批判もある。受信料の引き下げは放送波のコストカットと連動して行うべきだ。さらに、2019年度の「繰越余剰金」、つまり内部留保は1280億円もある。繰越余剰金を受信料に還元する会計上の仕組みが必要であるが、これは実現性が高い。

   インターネットと地上波の同時配信で問題もある。テレビは持っていないが、ネットでNHKを視聴したいというニーズに対応できていない。放送法の受信料制度は「テレビ受信機の設置」が基準になっている。放送法の抜本的な見直しも必要となるだろう。

   最後に高市氏が述べていること。「そもそも企業スポンサーが不要なのですから、民放と競って視聴率狙いの番組制作をする必要はない」「『伝えるべき方向』に向けて進んでいただきたい」と。同感である。

⇒29日(日)夜・金沢の天気     はれ


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