Starlight Terrace

オリジナル写真で綴る夜空と夜景がメインのブログ
【注目の天文現象】
3/5夜遅く すばる食(すばるを月が隠す)

いて座のティーポット

2009-05-30 17:16:36 | 夜空のコラム

いて座は夏の夜、南の空に濃い天の川とともに見える星座です。

銀河系の中心方向に相当するため、星雲や星団など様々な天体が

密集した天域でもあり、空の十分暗い場所にて双眼鏡で覗いて見ると

とっても賑やかな眺めを楽しむことができます。

 

ところで、「いて」は漢字で書くと「射手」となりますが、

神話上は、上半身が人で下半身が馬のいわゆる半人半馬の

ケンタウロス族の賢者ケイローンのことで、

西隣のさそり座を弓矢で狙っている姿をイメージした

星の並びになっています↓

(Astroarts ステラナビゲータによる)

 

しかしまぁ、この星の結び方はあまりにも複雑過ぎて、

なかなか覚えられないんですよねー。

そのため、実際の星空を見た際にも、どこにいて座があるのか

分かり難かったりします。

そこで、いて座の位置がすぐに分かる方法をご紹介しましょう。


いて座の上半身あたりの星をこういう風に結んじゃいます↓

(Astroarts ステラナビゲータによる)

なな、なんと! ティーポットにそっくりな星の並びがあるんです。

これならすぐにイメージできるので、星がいっぱい見える所でも

迷わずに見つけ出せると思います。

で、これが真南にやってきた時には、右に傾いた格好になるので、

ティーポットからお茶を注いでいるような感じに見えるんですヨ。

しかも、天の川の光芒が注ぎ口から沸き立つ湯気のように

見えてきますから、なんか出来過ぎですネ。

【夏の銀河】
 銀塩一眼レフカメラ+50mm標準レンズにて2002年7月撮影
 ※画像をクリックすると、大きい画像が別ウィンドウで開きます。


コメント
--------これより以下のコメントは、2013年5月30日以前に-----------
あなたのブログにコメント投稿されたものです。
ゆきchan [2009年5月31日 20:22]
こんばんわ。夏の夜空が楽しみになりました。あぁキャンプとかに行きたいなぁ。
fornax8 [2009年5月31日 21:25]
ゆきchanさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
夏の天の川は、空の暗いところで見ると凄くキレイです。
流れ星なんか飛ぶと最高ですネ。
キャンプには双眼鏡を持って行くといろいろと楽しめますヨ。
コビト君 [2009年6月1日 16:46]
はじめまして。
いろいろ、楽しいお話で、夜空を見上げる楽しみができました!
いて座を探してみますっ。
fornax8 [2009年6月1日 18:59]
コビト君さん、はじめまして。コメントありがとうございます。
ぜひ、実際の空でティーポットといて座を探してみてください。
何時ごろが見やすいのか、下記サイトで調べておくとイイですヨ。

http://homepage2.nifty.com/turupura/java/TuruPla.htm

NGC****って何だ?

2009-05-16 17:26:18 | 夜空のコラム

4/27付の記事でM**で表記される「メシエ天体」について解説しました。

今回はNGC****と表記される天体の話です。

このアルファベットと番号の組合せは一体何なんでしょう?

 

答えを先に言うと、NGCは "New General Catalogue" の略なんです。

直訳すると「新一般目録」となりますが、これも天体リストの一つで、

星雲、星団、銀河など、太陽系外の天体が多数登録されています。

これは19世紀の終わり頃にドレイヤーという人が作成したもので、

登録天体数は7840個にも上ります。メシエ天体の110個とは桁違いですネ。

これの元になったのは、18~19世紀にウィリアム・ハーシェルと

その息子のジョン・ハーシェルが作成した星雲・星団リストである

"General Catalogue" でした。

 

ちなみに、ウィリアム・ハーシェルは天王星の発見や、赤外線の発見で

有名な天文学者です。そういえば先日、ヨーロッパ宇宙機関が打ち上げに

成功した宇宙望遠鏡は「ハーシェル」という名称になってましたネ。

おそらく、赤外線観測を行うことにちなんで名付けられたのでしょう。

 

さて、メシエ天体は、彗星探しをしていたメシエさんが、長年の観測の過程で

彗星と紛らわしい天体を見つけては番号登録していったということで、

概ね発見順で番号が付けられていますが(M45=「すばる」などの例外あり)、

NGC天体の番号は赤経順に付けられています。

 

赤経とは、簡単に言うと地球の経度線を空(天球)に投影したようなものです。

単位は度ではなく、時間と同じ時(h)・分(m)・秒(s)が使われます。

春分点が基準で、そこを0時として東回りに数値が上がっていき、24時で一周します。

赤経で1時間は角度の15度に相当します。これは360度/24時=15度で求まりますネ。

ついでですが、赤緯というのもあり、これは地球の緯度線を天球に投影したものです。

こちらの単位は角度と同じ度(゚)・分(')・秒(")が使われ、

天の赤道(地球上の赤道を天球に投影した線)が赤緯0度、

天の北極(地球の自転軸を北へ延ばしていって天球に投影した点)が+90度、

天の南極(地球の自転軸を南へ延ばしていって天球に投影した点)が-90度

と定まっています。

これらを使うと、例えば北極星の位置は赤経2h32m/赤緯+89゚16'と表記されます。

 

ところで、NGCカタログの発表後、さらにマイナー(?)な天体を補うために

"Index Catalogue" というのも作成されました。こちらの略称はICで、

やはりその後に番号を付けて "IC****" という表記が使われます。

 

メシエ天体にもNGCやICのナンバーが付いてたりします。

同じ天体なのに複数のカタログ名称があったりする訳ですが、

そういう天体の表記においてはメシエ・カタログ上の名称 "M**" が優先的に

使われるケースが多い感じがします。

例えば、いて座にある比較的有名な「三裂星雲」はM20と表記されることが多く、

単独でNGC6514と表記されることはほとんどありません。

いて座の三裂星雲 M20(NGC6514)
 2005年5月撮影(口径20cm反射望遠鏡使用)

 ※画像をクリックすると、大きい画像が別ウィンドウで開きます。


七色混成発光星域?

2009-05-06 08:48:34 | 夜空のコラム

不朽の名作「宇宙戦艦ヤマト」で、ガミラス帝国のドメル将軍率いる大艦隊と

ヤマトの決戦の舞台になったのが七色混成発光星域-通称「七色星団」でした。

その星域は、それぞれ習性の違った6つの星とガス状の暗黒星雲とから成る

混成星団という設定で、とてもカラフルなイメージに描かれていました。

もちろんフィクションですが・・・

 

でも、実際にあるんですよ、それに近い星域が。

ただし、星たちの色がカラフルなのではなくて、

星間ガスなどによる星雲が様々な発色を示しているところです。

その写真がこちら↓

 ※画像をクリックすると、大きい画像が別ウィンドウで開きます。
 キヤノンEOS Kiss Digital X + EF200mmF2.8LⅡUSM
 ISO800 F2.8 総露出時間60分(5分×12コマ加算合成)
 [5月2日未明 山梨県甲州市大菩薩湖付近にて撮影]

 

この星雲群は夏の代表星座である「さそり座」にあります。

左下寄りで一番明るく写っているオレンジ色の星が、さそりの心臓にあたる

一等星アンタレスで、その周辺にある星雲は黄色や橙色に発色しています。

おそらく赤色巨星であるアンタレスからの光を星間物質がそのまま反射して

暖色系の色に見えているんでしょう。

その右の星がごちゃごちゃ集まっているところは球状星団M4で、

白っぽい色に写っています。

 

一方、写真上部には高温の青色星があって、その周辺のガス星雲は

やはりその星の色を反映して青色に発色していますが、

アンタレス周辺の星雲と混じり合うエリアは水色や紫色にも見えますネ。

その左からは暗黒星雲が突き刺さるように伸びてきており、

黒~茶色の発色を示しています。

 

画像右寄りに目を転じれば、青色の星に赤色の星雲が纏わりついているのが

わかりますが、これは電離した水素ガスが、青色星の発する紫外線のエネルギー

を受けて特有な波長の光を発する原子発光現象に基づく星雲で、

いわゆるHII(エイチツー)領域と呼ばれる星雲に相当します。

左下端の方にも似たような星雲があるようで、赤色の広がりが認められます。

 

全体として様々な色の天体が寄り集まったイメージで、

全天一カラフルなエリアとも言われています。

ただし、どの星雲も淡いため、肉眼ではもちろん

大きな望遠鏡を使っても目で色を感じ取ることはできません。

写真に撮って初めて色彩豊かであることがわかる星域なのです。


M**って何だ?

2009-04-27 07:44:34 | 夜空のコラム

4/5付の記事でM65,M66銀河というのを紹介しました。

で、このM**っていう天体の呼び名は何なのか?

SFの世界でも、例えばウルトラマンの故郷である「光の国」が

あるのはM78星雲という設定になっていて、M**が出てきたりするので、

気になりますよネ。

 

この "M" はメシエというフランス人の頭文字なのです。

フルネームはシャルル・メシエといい、18世紀に実在した天体観測家です。

少し前に「ルーリン彗星」というのが話題になりましたが、

そのような「彗星」という天体をメシエさんは熱心に探していました。

おそらく長い尾をたなびかせる姿に魅せられたからなんでしょうネ。

あるいは発見すると自分の名前が付いて有名人になれるためだったかも?

 

ところで、その時代には写真技術がまだありませんでしたから、

現代のようにカメラで夜空を撮って彗星を探すといったことはできず、

自ら望遠鏡を覗いて夜空を丹念に捜索していました。

ちなみに、メシエさんがよく使っていたのは口径19cmの反射望遠鏡と

言われています。その性能は、今の技術レベルに比べれば劣悪で、

現在市販されている口径9cm程度の屈折望遠鏡に匹敵するらしいです。

 

さて、彗星というのは望遠鏡で見てもボーっとしたイメージにしか

見えないことが多いのですが、それと似たようなイメージに見えて

しまう「星雲」や「星団」あるいは「銀河」といった天体が

空のあちこちにあって、彗星捜索者を惑わすことになります。

そのような彗星と紛らわしい天体が見えた際に、天空上での位置を

正確に記録しておけば、次に同じ天体に出くわしても迷わなくて済む

ということで、メシエさんは彗星と見間違いそうな天体の精測位置を

記録したリストを作りました。それをメシエ・カタログといいます。

メシエさんは概ね発見順でカタログ登録天体に番号を付けていきました。

で、個々の天体はメシエの頭文字と番号をもってM**と呼ばれてます。

例に挙げたM65,66はカタログの65,66番目に登録されたしし座の銀河、

M78は78番目に登録されたオリオン座の反射星雲(実在天体です!)

にあたります。

 M78星雲(山梨県北杜市にて2006年撮影)

 

メシエ天体は1~110番までありますが、位置の記録ミスや二重登録等

により不明・欠番とされているものが2,3個あったりします。

それから、前回紹介した銀河にNGC3628というのもありましたが、

この"NGC"については、別な機会に解説しましょう。


三つ子銀河

2009-04-05 09:23:35 | 夜空のコラム

しし座の後ろ足の近くに銀河が3つ集まって見えるエリアがあります。

"Leo Triplet"(しし座の三つ子銀河)と呼ばれ、

深宇宙が垣間見える春の夜空の名所となっています。

その写真がこちら↓

※画像をクリックすると、大きい画像が別ウィンドウで開きます。
 キヤノンEOS Kiss Digital X + 口径18cm写真撮影用反射望遠鏡
 ISO800 F2.8 総露出時間50分(5分×10コマ加算合成)
 [3月28日 静岡県東伊豆町稲取にて撮影]

これは3千5百万光年の彼方に浮かぶ銀河の群れで、

一番上がNGC3628、左下がM66、右下がM65と各々呼ばれています。

さらに数個の小銀河が加わってグループを形成していますが、

その中でもM66が最も明るくて親玉的な存在なので、

この群れをM66銀河群と呼ぶことがあります。

銀河というのは、このように群れをなしていることが多いのですが、

我々のいる銀河系も同様に「局部銀河群」と呼ばれるグループの一員

だったりします。その群れの親玉はアンドロメダ大銀河(M31)です↓


(新潟県菖蒲高原にて2005年撮影)

銀河系はこれに次ぐ2番目の大きさで、3番目はさんかく座にある

M33銀河(↓)であることがわかっています。


(富士山富士宮口五合目にて2005年撮影)

その他にも小銀河が40個以上確認されてますが、大玉は3つだけです。

それぞれの位置関係は下記サイトで確認できます。

5百万光年以内の宇宙

M66銀河群からこちらを見たら、同じような三つ子銀河に見えるかも

しれません。その眺めを楽しんでいる知的生命体もいたりして?


春分点

2009-03-20 01:52:28 | 夜空のコラム

おひつじ、おうし、ふたご、かに、しし、おとめ、

てんびん、さそり、いて、やぎ、みずがめ、うお

と言えば、星占いでお馴染みの黄道12星座ですネ。

黄道(こうどう)とは天空上における太陽の通り道のことです。

その黄道が上の12星座を通っているわけです。

実際には太陽の周りを地球が周回(公転と呼びます)しているのですが、

見かけ上、季節がめぐるにつれて太陽が12星座の中を西から東に

移動していき、1年でほぼ同じところに戻ってきます。

 

さて、その黄道と、地球上の赤道を空に投影した際の線である

天の赤道とが交わる点が2つあるのですが、

太陽が天の赤道の南から北へ移っていく過程での交点を春分点と呼び、

そこに太陽がやってくる日が「春分の日」なんですね。

 

春分点は現在うお座の中にありますが、これは長~い年月とともに

移動していき、590年後にはうお座の西隣のみずがめ座に移ります。

その先の西暦4313年にはやぎ座へ、6302年にはいて座へと移動。

西暦15000年ごろには現在と正反対のおとめ座に春分点が位置します。

現在は冬の代表星座であるオリオン座はその頃、夏の星座と化し、

冬には東京から南十字星が見えるようになっているはずです。

 

そして、春分点が再びうお座にやってくるのは西暦25824年と

かなり先のことになります。

西暦15000年7月10日21時の星空(Astroarts ステラナビゲータによる)
※黄色い線が黄道、赤い線が天の赤道です。
 星座を構成する星の固有運動による位置変化は考慮されていません。


あまのがわ

2009-03-14 12:17:08 | 夜空のコラム

太陽系は天の川銀河(銀河系)の中にあることはよく知られています。

銀河系は数千億個単位の恒星からなる棒渦巻銀河で、

個人的には、こんな姿(↓)に似てるんじゃないかと考えてます。


おおぐま座のM109銀河(長野県大池高原にて2008年撮影)

もし横から眺めたらこんな格好(↓)に相当するとも言われてます。


かみのけ座のNGC4565銀河(富士山富士宮五合目にて2005年撮影)

意外と薄っぺらな円盤状だったりするんですネ。

中心部だけふくらんでいますが、これは「バルジ」と呼ばれています。

太陽は銀河系の渦巻の回転面の中にあることがわかっており、

その上、中心のバルジからは結構離れた「郊外」に位置しているため、

銀河の中心方向を眺めるとNGC4565銀河と類似した姿が見られます。

それはこんなイメージです↓


昇る夏の天の川(山梨県みずがき山自然公園にて2007年撮影)

いわゆる天の川は銀河系を横から見た姿に他ならないのです。

写真右寄りの明るい部分が銀河中心方向にあたる「いて座」で、

いくらかふくらんでいるように見えるのはバルジがあるせいでしょうネ。

残念ながら日本からは銀河中心より北半分しか見えませんが、

南半球ではNGC4565銀河によく似た姿をとらえられるそうです。

いつかはオーストラリア大陸のど真ん中あたりで、

銀河系のパノラマイメージを拝んでみたいものです。


THE GALAXY GINZA

2009-03-06 20:15:43 | 夜空のコラム

春の空は、黄砂の影響や水蒸気が多いこともあって、どんよりと濁った感じがありますよね。

星撮り屋はそれを「透明度の低い空」とか「ヌケの悪い空」、あるいは「ねむい空」などと

表現するのですが、天体撮影にも悪影響があって、良い写真が撮り難い季節だったりします。

 

さて、春の星座であるおとめ座の辺りには、我々のいる銀河系と同じような小宇宙(galaxy)が

密集しています。「おとめ座銀河団」と呼ばれる銀河の群れがあるためです。

天体の位置を記したマップ(星図といいます)上では、その付近がこんな図になってます↓

楕円マーク1つ1つが銀河を表しており、本当に群がっているのがわかります。

その群れの中心とも言われるエリアの写真がこちら↓

ニコンD70 + 口径18cm写真撮影用反射望遠鏡(F2.8)
感度ISO800 総露出時間40分(5分×8コマ加算合成)
※画像クリックで大きい画像が別ウィンドウで開きます。

周辺がぼやけた楕円形のもの、細長く伸びたもの、渦巻状のもの、それら全てが銀河です。

多くの銀河が連なって見え、発見者名を冠して「マルカリアンの銀河鎖」という名がありますが、

個人的には「ギャラクシー銀座」と呼んでます(同名の不条理マンガとは無関係)。

地球からの距離は約6千万光年。

今のところ人類が行くことのできない、遥か彼方の深宇宙ですネ。