気になる情報を入手しました。まだ正式な発表はありませんが、新たに発見されたとみられる
彗星が来月末に太陽最接近を迎え、大彗星になる可能性を秘めているとの噂が出てきています。
今話題になっている紫金山・アトラス彗星とは全く別な彗星で、太陽をかすめる彗星群として
知られている「クロイツ群」の大玉である可能性が指摘されていたりします。
クロイツ群彗星の代表的な例は1965年に出現した池谷・関彗星で、最大光度がマイナス10等に
達して白昼に見えた明るい彗星として有名で、太陽最接近時には国立天文台・乗鞍観測所の
太陽観測用コロナグラフで太陽のすぐ傍を通過する際に尾が太陽に巻きつくような勢いの姿
が捉えられ話題になったりしました。
その彗星群は、紀元前にアリストテレスが目撃したとされている巨大彗星が複数に分裂し、
それぞれの分裂核がほぼ同じ軌道上を様々な間隔で周回しており、それらが百数十年~数年
ごとに太陽へ次々と接近して長く尾を引く大彗星として観測されてきた経緯があります。
最近では2011年に現れたラヴジョイ彗星が同群の彗星として、長い尾を持った姿が観測され、
主に南半球の天文ファンを喜ばせました。
分裂核には様々なサイズのものがあって、そのほとんどは太陽の傍まで近づいた際、高熱に
耐え切れずに消滅してしまう小さいものばかりであることがNASAの太陽観測用探査機SOHOの
コロナグラフによる撮影イメージから判明していて、その数は実に4桁の数に達しています。
そのため、地上から観測可能な大玉が現れるのは滅多にありません。
で、いずれの分裂核も概ね同じ軌道要素を持っていると思いきや、大雑把には2系統あると
指摘されているんですけど、太陽への最接近がいつ頃になるかによって、それぞれが天空上
のどこに見えるのかを推定することができます。そこで、星空シミュレーションソフトにて
来月の末頃に近日点を通過すると仮定して現在位置の推算を行ってみたのがこちら。
AstroArts社ステラナビゲータによるシミュレーション
どちらの系統にしても、うみへび座の一角に見えるはずという結果でした。緑色の十字線は
今月28日における実際の観測位置を示しており、クロイツ群彗星が見られる天空上の位置に
かなり近いことが分かります。どちらかと言うと「サブグループⅡ」と呼ばれる系統の方に
近いようで、同グループの代表格が先述の池谷・関彗星なので期待が膨らんでしまいますね。
まだ観測データが集まっていないため信頼度が低めですが、13年ぶりに地上から観測可能な
同群の大きめの彗星で且つ太陽に最接近しても生き残ってくれれば、11月初旬に夜明け前の
東南東の空でこんな風に見えるかもしれません。
AstroArts社ステラナビゲータによるシミュレーション(日時は11/5 4:55)
※尾の実長を0.3AU(天文単位)と仮定。マゼンタ色の枠はフルサイズセンサー搭載カメラに
85mmレンズを組み合わせた場合の画角です。
問題は光度ですが、太陽近傍の灼熱地獄を生き抜けるレベルのサイズであれば、地上からは
2~3等くらいで見えるのではないかと思われます。まぁ、本当にクロイツ群かどうかも含め
捕らぬ狸の皮算用みたいな話ではありますが、ちょっと楽しみではあります。