Starlight Terrace

オリジナル写真で綴る夜空と夜景がメインのブログ
【注目の天文現象】
3/5夜遅く すばる食(すばるを月が隠す)

神の目

2009-10-13 12:00:00 | 夜空のコラム

2年ぐらい前でしたでしょうか、「神の目」チェーンメールっていうのが出まわりました。

NASAのHST(ハッブル宇宙望遠鏡)が撮影した天体画像とともに次のようなメッセージ内容

のメールが送られてきました。

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 この写真はナサの天体望遠鏡で撮影されたもので、
 3000年に一度と言われている大変珍しい現象です。
 これは「神の目」と呼ばれています。
 この目を見つめる者には多くの奇跡が訪れるといわれており、
 見るものがこれを信じる信じないは関係なく、
 7つの願いが聞き届けられると言われています。
 とにかく試してみて、どのような変化があるか、見てみてください。

 この知らせを「そのかたの願いが叶いますように」と思いを込めて、
 たくさんの方にシェアして下さい☆
 自分だけで独り占めはしないこと。

 今日から七日までが最も強いパワーだそうです。

---------------------------------------------------------------

"NASA" を「ナサ」とカナで表記しているところが、なんとも脱力系な感じでイイです。

さて、「神の目」として取り上げられた天体は、みずがめ座にある惑星状星雲NGC7293で、

通称 "Helix Nebula"、日本ではそのまま「ヘリックス星雲」または「らせん星雲」と

呼ばれているものです(一部サイトで「フェリクス星雲」との記述が見受けられたりしますが、

英語のスペルからしてヘリックスが正しいです。Felixじゃ黒猫キャラになっちゃいます。)

3000年に一度の珍しい現象などと言われると、ほんの一瞬しか見られない貴重な姿なのか

と考えてしまいますが、実際にはそんなことはなくて、少なくともこの天体が発見された

19世紀前半ごろから現在に至るまで、ほぼ同じ形態を維持しているようです。

日本ではみずがめ座が見やすい位置にやってくる丁度今の季節の宵、南天に浮かんでいる

姿を観望・撮影することができます。天球上の位置は「みなみのひとつぼし」として

知られるみなみのうお座の1等星フォーマルハウトの北西約10度(腕をいっぱいに伸ばして

見る握りこぶしの横幅に相当)のところにあり、空の暗い所であれば小型双眼鏡でも

淡い光芒として見つけ出せます。ただ、暗めの天体なので、残念ながら写真のような

イメージには見えません。

(Astroarts ステラナビゲータで作成した天体位置ガイドマップ)

ということで、眼視観望よりも写真撮影向きの天体と言えそうです。

で、fornax8が過去に撮影した写真がこちら(↓)

【NGC7293】
 キヤノンEOS Kiss Digital X + 口径18cm写真撮影用反射望遠鏡
 ISO800 F2.8 総露出時間48分(6分×8コマ加算合成)
 [静岡県伊豆天城高原にて2008年8月撮影]

 ※画像をクリックすると、大きい画像が別ウィンドウで開きます。

HSTによる高解像度画像と比べれば遥かにショボイですが、一応リング形状をした姿が

ハッキリとわかります。白黒化すると目というよりタバコの煙で作った環という感じ。

リングの見かけ上の直径は満月の半分ほどといいますから、かなり大きい星雲です。

外周部分の赤色は主に水素ガスが、中心部分の青緑色は主に酸素がそれぞれ発している

とみられ、元素の量的な分布状態を反映した独特の色合いになってます。

目を凝らして環の中心部を見ると、ど真ん中に暗い星が写っているのがわかります。

その星が末期を迎えて放出したガスが広がっていき、この星雲が形成されたのでしょう。

この惑星状星雲は地球から見てたまたま正面向きだったので環のように見えていますが、

横向きだったら以前に紹介した「亜鈴星雲」のような姿をしていたと思われます。

ところで、実際に画像を見つめてご利益のあった方はいらっしゃいますでしょうか?

fornax8はHSTの撮影画像はもちろん、実際の夜空で生の姿も拝みながらBIGで1等が当選

するよう願掛けしてますが、未だに叶ってません。


遥かなるアンドロメダ

2009-09-28 12:00:00 | 夜空のコラム

「アンドロメダ」はギリシャ神話に出てくるお姫様の名前で、父は国王ケフェウス、

母はその妃であるカシオペヤです。ちなみに神話の中では、諸事情により、化けクジラの

生贄となって襲われそうになったところを、天馬ペガススに乗ってたまたま通りがかった

勇者ペルセウスに助けられ、それが縁で結ばれるというストーリーになってます。

それらの全キャラクターは星座になっていて、秋の夜空を彩っています。

ということで、「アンドロメダ」は星座の名前としてもよく知られているわけですが、

この銀河(↓)の代名詞にもなっているような感じです。

【M31】
 キヤノンEOS Kiss Digital X + 口径18cm写真撮影用反射望遠鏡
 ISO800 F2.8 総露出時間40分(8分×5コマ加算合成)
 [8月28日 静岡県伊豆天城高原にて撮影]

アンドロメダ座にあるので、星座名を冠して「アンドロメダ銀河」と呼ばれてます。

我々のいる銀河系のすぐ隣にある大型の銀河ということで有名ですね。

見かけ上の差し渡しは、なんと満月5個分以上にも達していて、

天球上の北半球に位置する銀河としては最も大きく見えるものです。

お隣と言っても凄く遠くて、200万光年以上の彼方にあります。

ですので、今見えているのは200万年以上も前の姿であって、

現在どうなっているのかは分からないことになります。

この銀河は典型的な渦巻銀河で、中心部には2つの巨大ブラックホールがあるとか。

渦巻円盤の直径は20万光年以上あり、銀河系の2倍以上に相当します。

で、またまた遥か未来の話になりますが、数十億年後に銀河系はこのアンドロメダ銀河と

衝突・合体すると予測されています。合体によって星の元になる星間ガスが圧縮・凝集する

などして、新しい星がたくさんできる可能性があります。その頃の太陽は天寿をまっとうし、

惑星状星雲となっていることでしょう。あるいは、そのガスが次の世代の星の材料になって

核融合反応の火が灯っているかもしれません。恒星はしっかりとリサイクルされるようです。


コメント
--------これより以下のコメントは、2013年5月30日以前に-----------
あなたのブログにコメント投稿されたものです。
まめ八 [2009年9月29日 19:31]
こんばんわ。
もう、素晴らしいの一語に尽きる写真ですね。
こういった星雲を直に見ることが出来るなんてfornax8さんは何て幸せな方なのでしょう。
アンドロメダ星雲は、SF小説やアニメ等にも名前が良く出てきますよね。
この写真を見ていると、地球外生命体は必ず存在するような気がします。
でも、こうして写真を見ているとこの光が恒星の集まりであることが信じられません。
それにしても美しくロマンをかきたてられる写真です。
有難うございました。

fornax8 [2009年9月29日 20:54]
まめ八さん、こんばんは。いつもコメントをありがとうございます。
この天体名が出てくるアニメと言えば、やっぱり『銀河鉄道999』が思い浮かびます。
今年は劇場公開から30周年ということで、8月4日には999映画祭りが新宿であったり、
9月9日(9が3つ並ぶ日)にはBDが発売になったりと盛り上がってるようです。
映画祭りでは地球-アンドロメダ間の「無期限パス」のプレゼントもあったとか。
無期限パスには星撮り屋になるとまず撮影したいと思う3つの天体名が記載されてます。
アンドロメダ銀河はもちろんその中の一つです。
残りの天体は、拙ブログでもいずれ紹介することになると思います。
あ、なんか話がそれてしまいましたね、スミマセン。
ゆきchan [2009年10月1日 1:58]
こんばんわ。素晴らしいお写真ですねぇ。どんな望遠鏡で撮影されてるんだろう~?こんな銀河見てみたいです。
fornax8 [2009年10月1日 17:53]
ゆきchanさん、毎度コメントありがとうございます。
アンドロメダ銀河は肉眼でも見える明るさなので、存在を写すだけなら比較的簡単です。
ただ、中心部と周辺部で明暗差が大きいんで、キレイに撮るのは難しいと言われてます。
望遠鏡などの撮影機材については、機をみて紹介していきますね。

なぜか丸くて古いヤツ

2009-09-05 11:45:00 | 夜空のコラム

夜空のあちこちに「球状星団」と呼ばれる類の天体が散らばっています。

そのうち、北半球において一番見映えの良いものがこちら↓

【M13】
 キヤノンEOS Kiss Digital X + 口径18cm写真撮影用反射望遠鏡
 ISO800 F2.8 総露出時間43分(8分×1+4分×5+2分×5+1分×5)トリミング
 [7月19日 山梨県甲州市嵯峨塩裂石林道にて撮影]

この天体はヘルクレス座の一角にあり、長円軌道を持つ「周期彗星」があることを

見出したことで有名な天文学者エドモンド・ハレーが最初に発見しました。

文字通り、おびただしい数の星が密集して球体を形成しているのがわかりますね。

かなり大きめの望遠鏡(口径30cm以上)で覗くと、

実際に上の写真に近いイメージに見えて、とっても感動します。

さて、我々のいる銀河系には150個程度の球状星団が見つかっていて、

銀河円盤全体を取り囲むように広く分布していることがわかっています。

お隣のアンドロメダ銀河にも同じように数多くの球状星団が取り巻いています。

で、この種の天体を構成している主な星(恒星)はスペクトル観測の結果や

明るさの数的分布から、極めて老齢であることが分かっています。

20世紀終盤まで、その年齢は古いもので150億歳ぐらいになると見積もられていました。

となると、ビッグバン理論から推定される宇宙年齢の約140億歳を越えてしまい、

宇宙が誕生する前から存在していたという大きな矛盾が生じます。

これは天文学上の最大級の謎として議論されてきました。

現在では観測精度の向上等により、球状星団の年齢は120億歳足らずと推定され、

矛盾は解消されていますが、これがどのようにして出来上がったのかは解明が不十分で、

数十万個レベルの星たちがずーっと球形を保っていられるのは何故かということも含めて、

今でも謎の多い天体だったりします。

それにしても、これだけ星が密集している星団の中心付近はどうなっているんでしょう?

恒星がひしめき合うように存在しているんではないかと考えられますが、

もしもそこに地球があったなら、暗い夜空など無かったかもしれませんね。


コメント
--------これより以下のコメントは、2013年5月30日以前に-----------
あなたのブログにコメント投稿されたものです。
まめ八 [2009年9月14日 21:54]
こんばんわ。
きれいですね。まるで宝石のようです。
どうすればこんなに美しく撮れるのでしょうか?
じっと見つめていると遠近感が体感できますよね。
こんな星空を眺めてみたいなぁ。
fornax8 [2009年9月14日 23:12]
まめ八さん、こんばんは。こちらにもコメントをいただき、感謝です。
この天体は大きな望遠鏡で生の姿を見るのがオススメです。
次回、南阿蘇ルナ天文台にご訪問の際にリクエストされてはいかがでしょう?
口径82cmの望遠鏡なら物凄いイメージが網膜に飛び込んでくるはずです。
と言っても、夏場に見やすい天体なので、また来年ということになるでしょうか。

絡み合う赤い網と青い網

2009-08-19 11:45:00 | 夜空のコラム

はくちょう座の東側の翼の辺りにこんな星雲が潜んでいます↓

【NGC6992~6995】
 キヤノンEOS Kiss Digital X + 口径18cm写真撮影用反射望遠鏡
 ISO800 F2.8 総露出時間40分(4分×10コマ加算合成)トリミング
 [8月16日 山梨県小菅村にて撮影]

繊維状の構造が見られることから「網状星雲」と名付けられてます。

欧米では "Cirrus Nebula"(絹雲星雲)と呼ばれたりもします。

よく見ると赤色と青緑色の星雲が絡み合っているのがわかりますが、

これは以前に紹介した惑星状星雲と同じように、

複数の元素が各々特有の波長で発光しているためで、

赤色は主に水素が、青緑色は主に酸素が発していることがわかっています。

ところで、この星雲は「超新星残骸(ちょうしんせいざんがい)」という種類の天体の一つで、

惑星状星雲と同様に恒星が死を迎えた後に出来上がったものと考えられています。

超新星(Ⅱ型)とは、太陽と比べて8倍以上の質量を持った恒星がその末期に

大爆発する現象のことで、夜空に突然明るい星が現れることから、そう呼ばれてます。

新星という響きとは裏腹に、重い星が壮絶な死を遂げる時に見られる現象なんです。

で、大爆発して飛び散った物質は周囲に広がっていき、

残骸としてこの網状星雲のような天体が生じるというわけです。

なお、爆心空間にはブラックホールや中性子星が残ると考えられています。

そんな超新星爆発ですが、銀河系内では少なくとも地球から肉眼で見える

レベルのものは400年以上観測されてません。

銀河系のお伴をしている銀河の大マゼラン雲では22年前の1987年に1件起こっていて、

大爆発で放出されたニュートリノという素粒子が岐阜県神岡町にある地下観測所で

とらえられて話題になりました。

2002年に東大名誉教授の小柴先生が、その超新星起因のニュートリノ観測に関する

研究成果により、ノーベル物理学賞を受賞したのは記憶に新しいところです。

大マゼラン雲は16万光年の彼方にあるので、その時に見られた超新星は

3等星程度にまでしか明るくなりませんでしたが、もし同じレベルの超新星爆発が

我々の太陽系から数光年以内の至近距離で起こったら、太陽よりも明るく輝き、

極めて強い宇宙線によってオゾン層が破壊され、有害な紫外線や放射線が地上に

降り注ぐだけでなく、遅れて到達してきた衝撃波で地球大気は剥ぎ取られ、

生物は全滅すると推測されています。

ディープインパクトなら、ある程度の対策は考えられますが、

大量のガンマ線や衝撃波が来たら、全くもって対処のしようがありませんね。

でも幸いなことに太陽の近くには超新星爆発を起こしそうな重い星はないので、

とりあえずはご安心ください。

銀河系内でも我々から十分に遠く離れたところで起こる超新星爆発だったら、

一度見てみたいような気がします。

先月話題になった皆既日食よりもはるかに稀有な現象ですから。


夜空に浮かぶダンベル

2009-08-03 21:30:00 | 夜空のコラム

ダンベル(鉄亜鈴:てつあれい)というのは、主に腕の筋トレに使う道具ですネ。

そんな重いモノが実際の空に浮かぶワケがないので、

記事タイトルに違和感を覚えた方も多いと思います。

実はそういう名前の天体がありまして、今回はそれをご紹介という訳です。

こんな恰好のモノです↓

【M27】
 キヤノンEOS Kiss Digital X + 口径18cm写真撮影用反射望遠鏡
 ISO800 F2.8 総露出時間40分(4分×10コマ加算合成) トリミング
 [7月20日 山梨県甲州市嵯峨塩裂石林道にて撮影]
 ※画像をクリックすると、大きい画像が別ウィンドウで開きます。

これが "Dumbbell Nebula"(亜鈴星雲)というニックネームを持つ天体で、

はくちょう座の南に隣接する「こぎつね座」の中にあります。

上の写真のとおり、真ん中が少しくびれていて、端っこが広がったイメージで、

言われてみれば確かにダンベルに似ているような印象です。

望遠鏡を使って実際に覗くと、中心部の明るい部分が目立っていて、

ダンベルというより地図の銀行マーク(分銅)のように見えるんですヨ。

あるいはリンゴを丸かじりして残った芯の部分のようにも見えたりします。

残念ながら写真のような色までは分かりませんけどね。

ところで、水素ガス主体のHⅡ領域と呼ばれる星雲は赤一辺倒の色合いですが、

この星雲は写真でわかるとおり、赤色と青緑色が混在してます。

その理由は、いろんな元素のガスが混ざった状態になっているからなんです。

で、赤色は水素または窒素が、青緑色はヘリウムや酸素がそれぞれ発しているんですヨ。

質量のあまり大きくないごく一般的な恒星が死を迎えた際に、

このような星雲が形成されると考えられています。

こういう天体を「惑星状星雲」と呼んでいて、これも輝線星雲の一種です。

我々の太陽も数十億年後には大きく膨らんで地球などの惑星を飲み込んだ後、

最終的にはこのような天体に姿を変えて一生を終えるとみられています。

遥か遠い将来、人類はそうなる前に別な恒星系に移住したりするんでしょうかねぇ。

いや、その前に自然破壊か核戦争で自滅するかな?

ディープインパクト等の不可抗力で滅亡という可能性もゼロではないですし・・・

そういった事態の方が遥かに早くやってくるんでしょうね、多分。


コメント
--------これより以下のコメントは、2013年5月30日以前に-----------
あなたのブログにコメント投稿されたものです。
キラリ [2009年8月4日 11:24]
おはようございます★
いろんな未来が想像できてしまいますね。
こんな空をずっとみていますと、自分て何だろうって思ってしまそうです・・・
fornax8 [2009年8月4日 18:57]
キラリさん、こんにちは。いつもコメントありがとうございます。
宇宙って広さもさることながら、時間のスケールも壮大ですネ。
人間なんてちっぽけな存在で、その一生もほんの一瞬にしか
過ぎないんだなぁーって、無常感を抱いてしまいます。
その一方で、有限だからこそ、貴重なこと、大切にしなければ
ならないこと、楽しめること、感動できること、面白いこと、
頑張れること・・・が沢山あるような気もします。
なんて言うと、ちょっとキザですかねぇ?

北米とペリカンが並ぶ夜空の一角

2009-07-16 11:45:00 | 夜空のコラム

七夕伝説のネタでカササギに見立てられる「はくちょう座」を紹介しましたが、

この星座にある1等星デネブのすぐ東にこんな(↓)赤い星雲が存在してます。

【NGC7000&IC5067~70】
 キヤノンEOS Kiss Digital X + 口径18cm写真撮影用反射望遠鏡
 ISO800 F2.8 総露出時間128分(8分×8コマ加算×2フレーム並列合成)
 [2007年8月 静岡県天城高原にて撮影]
 ※画像をクリックすると、大きい画像が別ウィンドウで開きます。

左側の大きな星雲は「北アメリカ星雲」というニックネームが付いてます。

確かに北米大陸の形によく似てますネ。

一方、右側の少し小さい星雲は「ペリカン星雲」と呼ばれてます。

こちらは言われてみれば、そう見えるかなぁ・・・って感じでしょうか。

これらの星雲までの距離は正確には分かっていないようですが、デネブまでの

距離とほぼ同じなら約1800光年の彼方に存在していることになります。

北アメリカ星雲は、見かけ上の大きさが何と満月の12個分もあるんですヨ。

で、推定されている実際の星雲の差し渡しは数十~百光年ほどになります。

実に太陽-地球間の距離の数百万倍。全く想像できないほどの広がりですネ。

この鮮やかな赤い色は、宇宙空間に漂う星間物質のうちの水素ガスが出しており、

その波長は656nm(ナノメートル)と定まっています。プレゼンなどで使う赤色の

レーザポインターの光が波長650nmですから、それとほぼ同じ波長の光になります。

このように特定の波長で輝く星雲を「輝線星雲」(きせんせいうん)と言うのですが、

その中でも水素に由来する赤い星雲を「HⅡ領域」(エイチツーりょういき)と

呼んだりします。なぜ赤く発光しているのかについて興味のある方は下記のサイト

をご覧になるとよいでしょう(かなり難解ですが・・・)。

http://galaxy.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/mano/gas/denri/denri.htm

HⅡ領域は天の川沿いに点在しており、様々な形のものがあって面白いです。

ただし、一般的には光量が弱い上に、波長656nmの光は人間の目では感じ難いため、

天体望遠鏡を使っても実際に目で見て楽しめるものはごく少数に限られています。

つまり、写真でしかその本来の姿を確認できないようなものばかりなんです。

そのせいか、目で見えないものを無性に撮りたがる星撮り屋たちにとっては

極めて「萌えー(死語?)」な天体だったりします。


【七夕】

2009-07-07 11:45:00 | 夜空のコラム

7月7日は言わずと知れた七夕ですネ。

天の川を挟んで東西に引き離された織女と牽牛が年に一度だけ会えるという日。

両者が会うには天の川を渡らなければいけないんですけど・・・

今宵の空における川渡しの月の舟は、位置的にみて天の川の岸辺に置かれた状態です。

そもそも舟(上弦の月)の格好をしてないんで、どうやら今年の七夕は営業しない模様。

太陽暦(グレゴリオ暦)では、残念ながらそういう状況になりがちです。

そこで、翼を繋げて橋を作ってくれるカササギくん達の登場ということになるのですが、

実際の天空上にそんな都合のいい鳥なんて・・・

いましたー! 天の川と平行するように北から南へ向かって飛んでいる鳥が↓

【夏の大三角
 デジタル一眼レフカメラ+17-50mmズームレンズ(17mmに設定)にて6月27日未明撮影。

 星座絵はAstroarts ステラナビゲータによる。

 記事の最後の地図を開くと撮影地がわかります。
 ※画像をクリックすると、大きい画像(星座絵なし)が別ウィンドウで開きます。

七夕伝説に出てくるのは間違いなくカササギなんですが、実際の星座においては

この「はくちょう」をカササギに見立てる(あるいは代役とする)解釈があるようです。

で、太陽暦における月の舟と違い、コイツは年によって天の川から離れることなどなく、

しかも、とっても大きく翼を広げてくれてるお陰で、たった1羽で橋が出来上がります。

-------------------------------------------------------------------
夏の大三角とは、織女星であること座のベガ、牽牛星であるわし座のアルタイル、
   はくちょう座のデネブの3つを結んでできるアステリズム(特徴的な星の並び)
   の一つです。

「みつまた高原」地図


夜空に黒い"S"マーク

2009-06-19 18:00:00 | 夜空のコラム

夏の星座の一つであるへびつかい座。その南部には天の川が流れています。

その流れの中に、こんな天体が潜んでいるんですヨ↓

【 B72 】
 デジタル一眼レフカメラ+口径20cm反射望遠鏡にて2005年5月撮影

 ※画像をクリックすると、大きい画像が別ウィンドウで開きます。

通称「S字状暗黒星雲」。欧米では "Snake Nebula"(蛇星雲)とも呼ばれてます。

名前の通り、天の川の中に見事なS字のシルエットが形成されていますネ。

実はこの黒い部分にも周りと同じように星があるのですが、

その手前に星の光を遮る「雲」のようなものがあるため、

星が無いように見えているんです。こういう天体を「暗黒星雲」といいます。

なお、この天体は米国の天文学者E.E.バーナードが作成した暗黒星雲リストの

72番目に登録されているため、"B72" というカタログ番号の名称を持っています。

 

暗黒星雲は星間物質と呼ばれるガスや塵(ちり)が濃くなったエリアであり、

銀河系の渦巻き円盤の面内を中心として、あちこちに散らばっています。

広角写真で見る天の川が中央で引き裂かれているかのようなイメージになっているのは、

銀河回転面付近に暗黒星雲が多く分布しているためなんですヨ。

それらの星間物質は今は輝いていなくても、いずれは集まって高温になり、

宇宙スケールの長~い年月をかけて星になっていくと考えられています。

つまり暗黒星雲は新たに生まれてくる星の材料だったりする訳です。

 

それにしても、この暗黒星雲は地球から見て偶然 "S" の形になっていて、

奇跡的な自然の造形という感じですネ。


コメント
--------これより以下のコメントは、2013年5月30日以前に-----------
あなたのブログにコメント投稿されたものです。
キラリ [2009年7月1日 21:16]
こんばんは。宇宙って凄い・・・
ホント黒いS字ですね。
fornax8 [2009年7月1日 21:57]
キラリさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
いやー、宇宙の造形には驚かされますネ。
もっと面白い格好の天体も多数ありますので、
追々紹介していこうと考えてます。

かぐや、月に帰る。

2009-06-11 21:00:00 | 夜空のコラム

日本の月探査機「かぐや」が使命を終え、11日に月に落下したとのこと。

見事なハイビジョン映像を送ってくるなど、素晴らしい成果を挙げましたが、

探査活動を終了し、予定通り月面に落ち、おそらく大破したと思われます。

 

で、このニュースを知った一般の方々から「月にゴミを捨てるな」といった

意見が出てきたりして、宇宙開発推進派の人達は、ちょっと意外な(?)反応に

戸惑いもあるようです。

 

具体的には、月に落とすくらいなら、宇宙の彼方へ葬り去るべき、とか

ちゃんと地球に帰還させて回収・リサイクルしろ、などの声が上がってます。

なるほど、そういう考え方も一理あるかもしれませんネ。

それに対しては、燃料のことを考えると機体重量も増加して予算の無駄遣いになる

とか、地球へ戻すにしても回収にかかる費用や安全性に問題があると反論する

向きもあるようです。技術的には十分可能でも、現実問題としてとらえると

そういった反論も、ある意味納得できるような気がします。

 

ちなみに、昔のアポロ計画では機器類などを月面に置いてきてるようですし、

ソ連、欧州、中国の探査機なんかも既に月面にころがってたりします。それが現実。

個人的には、遠い(?)将来、人類が月に移住するようなことになった際に、

落下物が遺跡として発掘されたら面白いんじゃないかなぁー、なんて考えてます。

長崎の軍艦島のように長い年月を経てから注目される日が、いずれ来るんじゃ

ないでしょうかねぇ。「月世界遺産」に登録! とか言って、観光資源になるかも。

ゴミを美化し過ぎでしょうか?

【 月 】
 デジタル一眼レフカメラ+口径18cm反射望遠鏡にて2004年12月撮影

 ※画像をクリックすると、大きい画像が別ウィンドウで開きます。

 (大雑把ですが、★の辺りが「かぐや」の落下点かと思います。)


コメント
--------これより以下のコメントは、2013年5月30日以前に-----------
あなたのブログにコメント投稿されたものです。
コビト君 [2009年6月12日 13:50]
こんにちは。コビトです。
小説や映画のように「月と行き来」できるような未来がきてほしいような…。
やはり月は、想像力がかきたてられますね。
fornax8 [2009年6月12日 17:34]
コビト君さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
今のところ月世界旅行は夢物語やSFレベルの話ですが、
数世代後にはノンフィクションな話になってるんじゃないでしょうか。
でも、地球の周りを回っているスペースデブリと呼ばれるゴミの問題を
解決しない限り、危なくて宇宙旅行になんか行けないよー なんてことに
なっているかもしれません。

昼間流星群 ☆彡

2009-06-05 18:30:00 | 夜空のコラム

流れ星って夜だけしか飛ばないと思ったら大間違い。

空が明るいから見えないだけで、昼間でも飛んでいるんですヨ。

で、6月上旬は、なんと昼間に沢山の流星が飛ぶ季節だったりします。

えっ、日中に流れ星が見える訳ないのに、なんで沢山飛んでるってわかるの?

っていう疑問は当然わいてきますよネ。

実は流星を電波で観測する方法があって、それにより昼間でも

どのくらいの数の流星が飛んでいるかがわかるんです。

流れ星の正体は宇宙空間に漂う塵(ちり)で、それが地球の大気圏内に

高速で飛び込んできた際に大気中の気体分子と衝突し、高温になって

プラズマ化する際に発光現象が見られるのです。

で、プラズマ中では大気ガスの原子が電子を放出した状態になるんですが、

その分離した電子が高密度になると電波を反射するんです。

流星の電波観測はそのような現象を利用しています。

例えば、普段は遠過ぎて受信不可能な距離にあるFM放送局等の電波源からの

電波が、流星が飛ぶと瞬間的に反射されて受信可能になるんだそうです。

それを「流星エコー」と呼んでいて、エコー数がほぼ流星数に相当します。

これなら昼間でも、曇っていても、流星出現数をカウントできるという訳です。

最近はアマチュアでも比較的簡単に電波観測が可能になっているみたいで、

詳細はこちらをご覧になるといいです↓(ちょっと難しい内容ですが・・・)

http://www.amro-net.jp/about-hro/index.html

ところで、流星の元になる塵は彗星が撒き散らした固体粒子だったり

することが多いのですが、彗星の通った道(軌道)が地球の公転軌道と

交差していると、毎年決まって同じ時期に多くの流星が見られたりします。

それが「流星群」と呼ばれるもので、8月のペルセウス座流星群や

11月のしし座流星群、12月のふたご座流星群などが有名です。

流星群の流星は空のある一点から放射状に流れるように見えるのですが、

その一点を輻射点(または放射点)と呼び、輻射点がある星座を

頭に付けて「○○座流星群」と名付けられています。

【しし座流星群】 流星群の一例。空の1点から放射状に流れているのがわかります。
 銀塩一眼レフカメラ+35mm広角レンズにて2001年11月撮影(28枚画像合成)

 ※画像をクリックすると、大きい画像が別ウィンドウで開きます。

 

毎年6月上旬には「おひつじ座流星群」というのが主に活動するのですが、

この時期の太陽は、おひつじ座のすぐ東隣のおうし座に位置しています。

つまり、おひつじ座流星群の輻射点は太陽の方向に近いので、

夜明け近くに東から昇り、夕方には西へ沈んでしまいます。

そのため、主に昼間の青空の中に流星が飛ぶことになり、

「昼間流星群」と呼ばれたりする訳です。

その活動状況は、電波観測によるとピーク時には1時間に

数十~百個ぐらいは流れていると推定されています。

これは年間最大の活動を示すと言われる12月のふたご座流星群に匹敵する

レベルとのこと。ちなみにピークは例年ですと6月8日に来ます。

でも、目で見えないんじゃ楽しめませんネ。

なんか
悔しいです!


コメント
--------これより以下のコメントは、2013年5月30日以前に-----------
あなたのブログにコメント投稿されたものです。
キラリ [2009年6月5日 21:13]
再びこんばんは。とても勉強になりました。知らなかった事がいっぱいでした★
1時間に百個も流れる事があるのですね。ホント、お昼じゃなかったらいいのに・・・
fornax8 [2009年6月5日 23:44]
キラリさん、再度のご訪問&カキコありがとうございます。
小難しい記事をお読みくださいまして、恐縮です。
流星群は他にもいろいろとありますので、
夜に見やすい群も時期が来たら紹介していきますね。
ぺ^ーパードライバー [2012年6月18日 16:59]
火球級の流星だったら見えるそうですがね。
本当に見てみたいものです。
fornax8 [2012年6月18日 19:44]
ぺ^ーパードライバーさん、はじめまして。
古い記事にコメントを入れていただき、ありがとうございます。

そういえばそんな季節でしたね。書いた本人がすっかり忘れてました。
おひつじ座昼間群の流星なら、夜が明け切らない3時台に見えることがあるそうです。
真昼の大火球よりも可能性は高いと思いますが、梅雨入りの時期と重なる中で、
天気にも恵まれないとダメでしょうから、結構ハードルが高いです。