この「まぐれ」という邦題はなかなか秀逸だと思います。
が、個人的な感覚で言うと「投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか」という副題の「運」という言葉は少々自分の感覚にはそぐわないのです。
というのは、これだと「運」というなにかしらのものがあるように思えるので。
まあ、感覚的なものですが、「運」よりも、この邦題の「まぐれ」、あるいは「たまたま」「偶然」、あるいは「確率的必然」というような言葉の方がしっくりきます。
タレブ氏の言い回しはなかなか難しいところがあり、本書の内容すべてを一度でスッキリと理解するのは難しいところがあります。
が、投資ということに関わって言うならば、本書は投資における「まぐれ」の意味について、あらためて考えさせてくれる機会になります。
買った株が騰がり、利益が出ることが続いたりすると「俺って、けっこううまいかも」などと、妙に自信過剰になったり、なにか実力があると勘違いしたりすることがあります。ところが、それらのほとんどは勘違いで、「結果オーライ」か「たまたま」「偶然」「まぐれ」にすぎません。
期待値は低いにしても、宝くじは誰かに一等が当たります。それは確率的必然であり、同時に人の側でその当選をコントロールすることはできません。
同様に、投資において極端なポジジョンを取り、それが成功して大きな利益が出ることがあるのも必然です。同時にそれは大きな損失が出る場合があることでもあります。なので「○億儲けた」人が出るのは、それ自体は当然のことであり、別にその儲けた人に「実力」があったわけではない場合が多いかと思います。
投資において、この「まぐれ」というのはかなり重要だというのが実感です。
私たちに可能なことは、「まぐれ」の可能性を整えることと、逆「まぐれ」、大きな損失を被るような可能性を低くすること、そして「まぐれ」に巡り合ったらそれを生かすことではないかと思います。
例えば、IPOの人気銘柄の公募、「どうせ当たらないわ」と申し込まなければ決して当たることはありませんから。