枕元の携帯が鳴った。
寝ぼけた目で携帯画面を凝視する。 誰からか確認すると、母。
こんな時間に?
こちらからかけ直したが、母は携帯に出なかった。
嫌な予感がした。
時刻は午前2時半過ぎ。
時間を確認した直後に大サイレンが鳴った。 それも大きく、長い!
背筋が寒くなった。 まさか!
ベッドを飛び出し、玄関のカーテンを開け店の方向を見る。
大きな煙が立ち上っていた。 下の方は赤くなっている。 火事!!
「起きて! 店の方が火事!」 (というようなことを言ったと思う) 息子に叫んだ。
「何!?」
「店が燃えてるのかもしれない。ばあちゃん、電話に出ない! お姉起こしてくる!」
二階へ駆け上がりながら大声で怒鳴る。
「お姉!起きて。店が火事かも!」
「んあ?」
寝ぼけたような声だったが、再び繰り返すと娘も飛び起きた。
階段を降り、まずトイレへ走りこんだ。 こんな時にと思われるかもしれないが、正直なところ先が見えない。 いつものように [事が起こる前にはまずトイレ] へ行っておくべきだと思った。
落ち着け。 何を持てばいい。 落ち着け。 慌てるな。
トイレを出て、まず身じまいだ。 時刻は午前3時。 寒いはず。
手近にあった長袖セーターを頭からかぶり、ジャケットを引っかけた。
そして考えた。 もし店が火事で両親が無事に外へ逃げているとすれば、両親は起き抜けの着の身着のままのはずだ。
トイレを飛び出し寝室に戻ると、着れそうな服を3つ4つ、押し入れクローゼットからハンガーごと引っ張り落とし片手に抱えて次の事を考える。
「いい?! 行くよ!!」
携帯電話、忘れずに。 子供たちにも確認。 それから・・ うちのガス。 ちゃんと消えてるか。 それから・・ それから・・なんだっけ。
息子が 「コスモちゃんで行くぞ!」 家の横にはつい2日前に営業用にと本社から預かった軽自動車を止めてあった。
そうだ、え~と。 鍵。 鍵をちゃんと閉めていかないと。 猫どもが脱走する。
息子がエンジンをかけている間に娘と私が乗り込む。
急いで!
実家が燃えていようとも信号無視はできない。 無情にも信号は赤。 そして次の信号もまた赤。
なぜこんなときに!
「行け! 行って!」 「いや、それはできない!」 そうだろなぁ・・
自宅から店へは車で約5分程度。
息子に車を任せ、私と娘は一番近い交差点で車から降り、店へ走った。
きな臭い。
お願い! 無事でいて!!
店へ向かって曲がろうとした瞬間、友人のS氏が目に飛び込んだ。
リアルで見かけるのは久しぶりだったが、今はごめん! 声をかけてる時間も惜しい!
すり抜けざま、腕をポンと叩いて (もっと強かったかも。ごめんね。S氏) そのまま曲がる。
店が目に飛び込んだ。 後方から真っ赤な炎が大きくものすごい勢いで噴出しており、今にも店の壁は炎になめられそうだ。
火の勢いを見て覚悟した。 消火は無理だ。 店は燃える。
息子の携帯で撮った写真
燃えている家と、実家は棟続き。物置兼用の通路でつながっており、建物どうしはわずか2間(3.6M)ほどの距離。
消防さんたちが必死の作業で何とか火の勢いを収めてくれたが、私たちが到着時、大きな炎が噴出していたのは写真中央の窓だった。 その時には、右手前の建物~私の実家・食堂~の外壁を、炎がなめていた。
燃える室内で、パァン! パン! と、3度鋭い音がして何かが爆発した。
両親を探した。 父は、母はどこ? どこにいる?
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