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フィルムの行方は

 カメラ映像機器工業会(CIPA)が毎月発表していたカメラの生産・出荷台数統計からフィルムを使うカメラの数値を除いたのは2008年4月に発表された2月分統計からであった。このときには「フィルム方式カメラの時代の終焉」としてちょっとした話題になった。

 確かにここ数年、新しくフィルムを使うカメラを買ったという人を知らない。郷秋<Gauche>は買っているが、「新しく買った」とは云っても発売中の新品を買うわけではなく「中古品」を新たに買ったわけである。そんな訳でDSLRは2台しかないのに、FSLR(間違いないようにフィルムのFを付けてみた)は8台もある(持っている人は数十台持っているから郷秋<Gauche>の8台などまったく話にもならない台数であるが)。

 郷秋<Gauche>がそうであるように、新品のFSLR(一眼レフ以外のフィルムを使うカメラを含む。以下同様)カメラを購入することはなくなっても、既に持っているFSLRを継続して使っている方は少なくないだろう。新たに製造・販売されたFSLRを購入する時代は事実上終わったけれど、使われることが終わったわけではなと云うことである。

 昨日、こちらのblogに写真用ロールフィルムの出荷本数推移の表が掲載されていた。それによると、2004年に2億5,284万本であったものが2008年には5,583万本(内1/3はレンズ付きフィルム)へと激減している。4年で1/5かと思いながらも、2004年はと云えばカメラは既に「デジカメ」が当たり前(コンパクトタイプが中心ではあるが)の時代であったはず。ならばそれ以前はと思い検索してみると、ピークの1997年に4億8,283万本と云う数字を見つけることができた(出典は不明)。

 1997年のピーク時の4億8,283万本と比較すると7年で半減し、11年で1/9になったことになる。そうは云いながら、そろそろ減少幅が少なくなってきたのではないかと期待してデータをもとにして計算してみたが、2004年以降は前年比71.6%、68.8%、69.6%、64.3%で減少が続いている。

 コダクロームが製造・販売終了とのニュースが新聞紙上を(少しだけ)賑わした通り、既にフィルムの品揃え(種類)は少なくなり、126「インスタマチック」は既に無く、富士フイルムは110型フィルムの出荷は本年9月(来月だ)が最後になる事を昨年5月にアナウンスしている。次に無くなるのはIX240(APSカメラ用)だろうか。120、220(ブローニー)と135(35mm)は、暫くは安泰だと思うけれど、種類が少なくなり価格は上がる、ラボの数が少なくなるから即時・即日処理は余程良い場所に住んでいないと無理になることだろう。

 どう考えてもフィルムを使うカメラは「終わっている」。でも過去の遺産(カメラのことだ)が、レンズを含めて山ほど存在している事を考えれば、「フィルムの終わり」はもう暫く先になるだろう。そして、おそらくは、CDの時代になってもLPが生き延びたように、あるいはそれよりはもう少し大きなスケールで生き延びていくことができるだろうと郷秋<Gauche>は考えている。なぜならば、フィルムで写真を撮ることには、CDの時代にLPを聴くことよりももっと沢山の想像性を発揮できる余地とその楽しみが含まれているからである。

参考(消えつつあるフィルムに興味をもたれた方は是非ご覧ください)
最初に消えるのは110(ワン・テン)(前編)
最初に消えるのは110(ワン・テン)(後編)


 少しずつではあるが、自家現像の準備が進む郷秋<Gauche>の写真機材である。今年の5月21日にステンレス製の現像タンクをご覧頂いたが今日は、こんな風にフィルムをリールに巻きつけて使うんです、という再現写真。勿論明るいところでフィルムを引き出せば感光してしまうから、この作業は暗室で行う。

 プリントは暗室が無ければできないが、実はフィルムの現像は暗室が無くてもできる。そのための道具が、現像タンクやリールの周りに見えているファスナーの付いた黒い布、ダークバッグ(チェンジバッグとも云う)。遮光性の黒い布で作られた半袖のTシャツを思い浮かべて欲しい。

 シャツの裾にファスナーがあり、そのファスナーを開けて現像タンクとリールそしてフィルムをシャツの胴の中に入れてファスナーを閉じる。ゴムが入っている両袖口から手を入れて、ダークバッグの中でフィルムをリールに巻きつけて、そのリールをタンクの中に入れて蓋をする。勿論手探りの作業である。

 蓋をすればタンクの中に光は入らないからタンクをダークバックから出して注ぎ口から現像液を注ぎ込み、規定の時間攪拌しながら現像する。時間が来たら現像液を出し、停止液を注ぎ攪拌。停止液を捨てたら今度は定着液を注ぐ。時々攪拌しながら所定の時間の処理が終わったら現像は終了。この時点から明るいところでの作業が可能となるので蓋を取ってタンクに水道水を入れて水洗いをする。十分な水洗いが済んだらフィルムの下側に錘の付いたクリップを挟んでぶら下げて乾燥させる。

 フィルムの現像はざっとこんな手順である。特に難しいテクニックは無く、現像液の温度を20度に保ち、指定の現像時間を間違わなければ失敗することはまず無い。失敗の一番の可能性はリールに正しくフィルムが巻きつけられていないことかな。これにはちょっとしたコツがあるから、賞味期限切れなどのフィルムを使って明るいところで練習すると良い。慣れれば一つのリールに2本のフィルムを背中合わせに巻きつけて、リール2本のタンクで一度に4本のフィルムを現像することもできるようになる。
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