弁護士太田宏美の公式ブログ

正しい裁判を得るために

前科調書原則禁止の最高裁判決について

2012年09月10日 | 海外法律、トレビア

これまで刑事事件と言えば、前科調書は証拠として当然という
感じでしたが、裁判員制度になり、見直した結果、このような
最高裁の判決となったようです。

この例に留まらず、日本の裁判は証拠に関する規制がほとんど
ないといっていいほどです。
特に、民事事件などは裁判官の自由心証主義の規定が
あるので、どの証拠で判断したのか全く不明なほど、
というか、証拠がないのではないかと思われるような
事実認定が多いように見受けられます。

アメリカでは、どのような証拠が許されるのか許されないのか
詳細に決められています。
刑事事件でいうと、重罪(felony)の有罪判決は事実認定及び
情状の証拠にできます。
重罪と言うのは法定刑が1年以上のものです。
重罪でない有罪判決は、不誠実(dishonest)とか虚偽の供述といった
内容が含まれているものでなければ、認められません。
これは、証言の信用性に関して弾劾証拠として許容されるものです。
つまり、以前に詐欺(人をだます)をした人は、証言でも嘘を言うのではないか
というわけです。ですから、暴力や傷害のような犯罪の有罪判決は
この意味では使えません。
なお、古いものはだめです。古い(remote)というのは10年以上前のものです。
勿論、有罪判決だけでなく、非道徳的行為(specific acts of misconduct)も
動機や意図や同一性(以前の極めて象徴的な(signature)犯罪の遂行方法)
等、被告人の性格や性向以外の犯罪行為の争点と関連性があれば認められます。
ただし、証拠力よりも偏見の危険性が大きい場合は裁判官の裁量で
排除できます。
という具合です。

これを機に、正しい事実認定が担保されるような証拠に関する詳細な
規制(手続きの側面からの規定)の必要性について、検討してほしいと思います。
透明性とかDue Processを尊重することが、結局は実体とか内容の
公正を実現する確実な方法だということです。

裁判員制度は裁判員になった人には負担を強いるものですが、
確実に制度創設の本来の目的を果たしつつあるようです。