きのう、2月23日、豊田章男社長が、トヨタの東富士工場跡地にウーブン・シティ(Woven City)建設の鍬入れ式を行った。それがテレビや新聞で大々的に報道された。私の息子は、電気自動車の出現で起きる、トヨタの衰退を象徴するものではないか、と心配していた。
トヨタが本当につぶれるかどうかは、まだ、決まったわけではない、と私は思う。トヨタは崖から落ちずにもとに戻ることができる、と思う。
豊田社長はかつてトヨタの危機を救った功労者である。しかし、現在、バカ息子の大輔に足もとがすくわれているのに気づいていない。
まだ、10年以上も前、私が外資系IT会社を退職してまもない頃、豊田社長はアメリカ議会の公聴会に出席し、誠意ある態度をみせ、トヨタの責任追及を回避した。アメリカで、トヨタ車の暴走などが多発し、自動車を電子制御するチップのバグが疑われたのである。
チップにバグがあるかどうかの判定は難しい。バグを全部だすという理論的方法はないのである。チップは入力を処理して出力する電子回路である。すべての場合の入力を確かめることができないから、バグがないと証明はできない。チップの製造の問題ではなく、チップの設計の問題である。いっぽう、バグがあるという証拠も、トヨタがチップのバグだしに時間と労力を注いだ後の出荷だから、よほど運がよくなければ、アメリカ政府がトヨタにバグを突きつけることができない。
公聴会が開かれたということは、問題を政治的に決着しようと、アメリカの議会が判断したということである。豊田社長は、技術者でないのに、自ら公聴会に出席し、委員の責任追及に答えた。裏取引があったか私は知らないが、とにかく、豊田社長は、公聴会の振り上げたこぶしを取り下げることに成功したのである。
電気自動車の出現が自動車業界に旋風を起こすことは、20年も前からいわれていた。それは家電業界やパソコン業界に起こったことが、自動車業界にも起きるということである。部品の共通化が行われ、親会社と部品メーカの系列が崩れることである。それは、しかたがないことで、いつまでも、系列によって、親会社だけがいい目にあうことはできない。
それでも、自動車会社の親会社は、新車の企画、新車の設計、電子制御、新車のフレーム(車体新車)の製造、新車の組み立て、塗装、品質管理、販売などのノウハウをにぎっている。家電とくらべ、設計・生産過程が複雑で、1商品の価格が2桁高いのであり、電気自動車が市場を席捲しても、既存の自動車会社にとって、その変化を乗り越えることができる。
私がIT会社を退職する前から自動車は電子制御になっていた。すでに、車体のなかは、光ファイバを通して電子信号が駆け巡っていた。エンジンが電気モータに置き換えられ、燃料タンクが蓄電池に置き換えられるだけである。
困難は部品を供給する系列会社に降りかかる。電気自動車は要求される部品数は少なくなる。使用される部品も違ってくる。
したがって、本来、トヨタがテスラーやアップルにおびえる必要がない。すでに電子制御のノウハウを確立しているはずである。トヨタはこれまでの系列会社が新体制にうまく組み込まれるように考えていけばよい。また、社員が創造力あふれるよう、民主的で自由な風土に経営陣は心を尽くしていけばよい。いままで以上に、車は安全で美しくなければならない。
しかし、心配するのは、豊田大輔の後ろに怪しげなIT指南役がついているのではないか、ということである。ウーブン・シティは意味不明なプロジェクトである。規模は,広さ約70万平方メートール(東京ディズニーランド約1・5個分)、住民は360人にすぎない。工場を閉じて仕事を失う多くの労働者を生んだだけである。静岡県に360人の研究開発所をつくるというだけで、建設会社に一時的な雇用がうまれるだけである。
記事によれば、トヨタは今年1月、子会社「ウーブン・プラネット・ホールディングス(HD)」を、豊田章男の個人出資で設立し、代表取締役には息子の大輔氏が就任するという。能力のない息子に事業を任すと、魑魅魍魎のごろつきIT指南の食いものになるだけである。多くのトヨタ社員や関連会社の社員のことを思うと、できるだけ、早く、豊田親子に退職してもらい、この新会社の負債をトヨタ本体が負わなくても良いようにしたほうがよい。
豊田章男は10年前の成功に惑わされ、ものづくりの王道を忘れ、政治家のように考えるようになっているのでは、と私は危惧する。ものづくりを忘れた製造会社は結局破滅するのである。