きのうの朝日新聞が『(世界発2021)株高韓国、若者の投資熱』という記事を載せていた。昨年からの韓国の株高に若者が巻き込まれて、「東学アリ」と呼ばれているとのことである。
20年前から、私は自分の息子たちのこともあって、若者たちが大変な世の中を生きている、よくここまで生き抜いてくれた、と、何か切ない気持ちで、新入社員などを受け止めるようになった。それが、定年退職したあと、NPOで子どもたちの指導にかかわるようになった理由である。
「アリ」は「アリ地獄に落ちこむアリ」のことである。「東学」とは130年も前にあった新宗教のことで、どういうニュアンスで韓国人が使っているか、私にはわからない。人間の尊厳と平等とを説いたという。13字の題目を唱えるので、浄土真宗や日蓮宗に近いようだ。
また、東学の信徒が1894年の農民による内乱、乱甲午農民戦争に加わったということで、この内乱を「東学農民革命」ともいう。この内乱の鎮圧に日本軍が関与し、日本軍が韓国に常駐するようになった。さらに1895年に日本陸軍は閔妃(明成皇后)を暗殺している。
したがって、「東学アリ」という言葉は、なにか微妙な感情を韓国人に思い起こさすようだ。
新聞記事によれば、この1月11日「KOSPIは、取引時間中に3266.23の歴代最高値を付けた。機関投資家と外国人投資家が計約4兆4690億ウォンを売り越す一方、若者ら個人投資家が4兆4921億ウォンを買い越し、市場を支えた」とある。日本の1円は韓国の10ウォンにあたる。若者ら個人投資家が株高バブルを作っており、機関投資家や外国人投資家が逃げをはかっているとのことだ。
「東学アリ」とは、無謀な反乱を機関投資家や外国人投資家にむかって行っているとのニュアンスで、記者は使っているようだ。
私はそうではなく、韓国の若者に哀れという感情がわきおこる。彼らの行為は「反乱」でもなんでもない。「アリ地獄に落ちゆく悪あがき」である。若者の親の世代は、独裁政権、軍事政権と闘ったはずである。若者は「連帯」を忘れ、自分だけが競争に勝ち、この苦難の時代に生き残ろうとしている。これは、悲しさを通り過ごして、「哀れ」というしかない。
20年前から、私が若者を可哀そうだと思うようになったのは、「社会は変えられる」という思いがない中で育てられていることだ。現在の日本の社会は、「連帯」がなくなって、「競争」と「いじめ」がある。日本の社会がおかしくなっている。韓国社会も日本社会に近づいているのかもしれない。
そういえば、日本も1985年から株と不動産のバブルが始まり、1990年に破綻した。
社会は変えられる、社会は変えられる、社会は変えられる。