きのうの朝、私のNPOが、Zoomを使って、スタッフ研修を行った。Zoomを使っての遠隔学習指導の研修である。NPOでの最初のリモート研修なので、接続がうまくいかないスタッフがいたり、ミュート(マイク音をきる)にしないのでハウリング(反響)や犬の鳴き声がうるさかったりして、混乱し、なかなか研修が始まらなかった。結局、1時間近くして、予定の研修が始まり、さらに1時間のZoomの操作解説と遠隔指導の注意点の話しを聞いて、研修が終わった。
私は、このリモート研修に疲れはてた。それで、きのうは、いつもの散歩もせず、食欲もわかず、テレビからの音楽が不協和音のように頭の中で響いた。
リモート研修の参加者は30人近くで、5×5のマスのなかで、みんなが右往左往していた。私はというと、神妙な顔をして、ビデオカメラの前で、とりつくろっていた。しかも、研修がなかなか始まらず、いつ始まるか気になって、緊張していた。
遠隔指導の一番の要点は、子どもたちが、画面に神経を集中し疲れはてることを知って、小休止をいれながら学習指導を進めなさい、ということだ。
四角い画面を通して、何か伝え合うことは、とても疲れることである。新聞を読むと、新型コロナ緊急事態宣言で学校が閉鎖になり、私立校では、授業がリモートになっている、という。記事のわきに、生徒たちが画面の縦横のマス目のなかに埋められている写真が添えられていた。
理屈の上では、ITの力で、一目で子どもの授業態度が見渡せる、というが、これは、先生方に神経を非常に疲れさす。「Zoomづかれ」という言葉がアメリカに あるらしい。
私はNPOで ふたりに 1対1のリモート指導をしている。学校の先生よりずっと負担が軽いはずだが、それでも大変だ。
そのひとりの中学生が、1週間前、私の30分のリモート指導の後、「とても疲れた」とつぶやいた。いつも、「わからない」とはっきり言える子で、非常に学習指導しやすい子である。ところが、そのときは、「わからない」とは一度も私に言わず、私は私で、予定のところまで進もうという気持ちでいっぱいで、リモート学習が疲れることを意識していなかった。
今回のリモート研修で、画面を通じて何かを学習しようとすることがいかに疲れるか、ハッキリと学んだ。
考えてみると、いままで、NPOでの対面学習は、勉強したいと気持ちが高まるまでは、じゃれあっていただけだ。子どものほうから、「先生、知ってる~」と、昔のポップスの話しや好きな絵画の話しをしてくれた。買ってもらったばかりの和音が吹けるハーモニカを見せてくれたり、昔のスバルの自動車が好きだとスマホで見せてくれたりした。帰るときは、「先生」と抱きついてくる子だった。男の子だったので、女のスタッフは気持ち悪がり、私が彼の学習指導を引き受けたのだ。
リモート学習となると、私のほうも、ここまでは教えないといけないと思い、つい、効率に走る。この子はチックのけがあり、心の余裕を与えることが、学習指導に優先するということを忘れていた。
もう一人の子は、小学2年生で、個別指導のクラスにずっといる子である。引き受けたとき、この子の親は、言葉が話せないと心配しており、この子に勉強はいらない、好きなことを一生すればよい、音楽ができればよいと言っていた。教材を使った学習指導はむずかしかったが、一緒に遊びながら声をかけると、返事がくるようになった。絵をかいたり、文字を書いたりすることが、とても好きな子であった。家で入浴しているときにも、絵や文字をかいているという。
体面で相手をしていると、足を絡ませてきて、私の存在を確認する子でもあった。すなわち、甘えっ子だが、母親は上の子の教育で いっぱい いっぱいで、甘え足りない子であった。
新型コロナ感染が広がると、親がバスに乗せるのが怖いと言って、NPOに連れて来なくなった。リモート学習をはじめたと知って、親から早速申し込みがあった。さて、リモート学習となると、一緒になって遊ぶということがとても難しい。30分の指導をどう組み立てたら良いか、悩ましい。その子自身は、私と画面越しに会うのがうれしくて、ニコニコしながら、カメラに顔を近づけてくる。前歯が抜けて永久歯が生えてくるときだから、笑顔がとてもかわいい。
ところが、直接あっているときはハッキリ聞こえた彼の声が、パソコンを通してだと、よく聞き取れない。私はヘッドホンをつけているが、いつものようには聞こえてこない。彼のつぶやくように話す声が聞き取れないのだ。
リモート学習より、やはり、直接の対面学習がよい。リモート学習はIT関連会社を儲けさすが、教える側にも教えられる側にも、そんなに良いものではない。学校の授業をリモート学習に切り替えたところでは、子どもたちも親たちも疲れはて、二度とリモート学習をしたくないと思っているではないか。
早く、学校を再開した方が良い。接触できる距離で対面することが教育では重要なのだ。
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