猫じじいのブログ

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約40年精神科病棟に閉じ込められた69歳の男の国への賠償訴訟

2020-10-01 21:12:57 | こころの病(やまい)


きょうの朝日新聞に、計約40年精神科病院に閉じ込められた69歳の男が、国に3300万円の賠償を求めて、9月30日、東京地裁に提訴したとあった。

彼は、16歳で統合失調症を発症し、1973年、福島県の精神病院に転院後、退院したいと医師に訴えたにもかからず、そのまま、閉じ込められ、2011年の東日本大震災、福島原発事故で茨城県の病院に避難し、翌年、医師から退院してグループホームに行くよう勧められ、61歳で精神科病棟からようやく脱出できた。

朝日新聞によれば、訴えはつぎのようである。

〈原告側は、1968年に世界保健機関(WHO)の顧問から長期入院の改善を勧告されるなど、以前から問題が指摘されてきたのに、50年施行の精神衛生法(現在の精神保健福祉法)で定められた、家族らの同意があれば入院できる同意入院(現在の医療保護入院)の要件があいまいなままで、地域移行への予算も不十分などとして「国は実効性のある退院措置を講じなかった」と主張。地域生活の自由を奪われ、憲法が保障する幸福追求権や居住・移転及び職業選択の自由を侵害されたと訴えている。〉

精神科病棟に患者が閉じ込められるというハリウッド映画が昔からあった。1960年代に閉鎖病棟のあまりに環境の悪さにびっくりした米国民は、精神疾患の治療は通院の形でという運動をはじめ、精神科病院もできるだけ退院させるよう努力した。

統合失調症であれ双極性障害であれ、急性症状を引き起こしているのは、一時的である。したがって、現在、日本でも、入院は原則本人の同意によってであり、薬で症状がコントロールできるようになると、通院となる。閉鎖病棟もなくなり、病棟に自由に出入りができ、部屋もきれいになっている。

ところが、いっぽうで、昔、精神科病棟に閉じ込められた患者は、長く閉じ込められたまま、老いていくうちに、気力もなくなり、戻るところもない。現在、精神科病棟に行くと、年寄りばっかりが入院している。

彼の場合、大震災で病院を移ったおかげで、良心的な医師に出会え、退院を進められると同時に、グループホームという住む場所をあたえられた。ほんとうに彼は幸運であった。

しかし、本来は、国の制度として、退院できる状態かどうかを、第3者の医師の目で判定される権利が患者にあるはずだ。患者が訴えれば、客観的な判定をうける退院判定制度を、アメリカでは、1960年代末に国が作ったと記憶している。(判定会の場をハリウッド映画でみたような気がするが、小説だったかもしれない。)

また、退院後の住む場所を地域社会は提供する必要がある。ところが、悲しいことに、グループホームをつくるとなると、日本では、時価が下がると反対運動が起きる。私の住んでいる場所の近くでも反対運動が起きている。

今回の訴訟を期に、メディアも精神疾患の患者への偏見を壊し、地域社会で共生できるようにしてほしいと願う。


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