現在、新型コロナ感染の流行で、「行動の変容」が言われている。「行動の変容」で、どのような社会変化が期待されているのか。働き方が変わるのか。弱者を助けることの大事さを共有するのか。お金が一番、お金を設けて何が悪いという価値観が変わるのか。
現状は、日本社会がまだ慌てふためいているだけで、インフラや物流の維持、食料や物資の生産、医療に働いている人たちへの感謝までいっていないように見える。
東京に人が集中しているというが、じっさいには、会社が東京に集中していて、周辺の遠くから人々が電車などに乗って集まってくる。
テレワークですむとは、そのような仕事は必要なのかと思ってしまう。ハンコを押さないといけないから東京に出勤しないといけないと聞くと、そんな仕事が必要なのかと思ってしまう。営業だからお客さんを接待しないといけないと聞くと、そんな仕事が必要なのかと思ってしまう。
日本には、管理や営業などのコミュニケーションの仕事に従事する人たちが多すぎるのではないか。頭を使う仕事より、手を使う仕事のほうが、社会に必要な仕事ではないか。みんなで手を使う仕事をして、労働時間を減らしたほうが良いのではないか。
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93年前のドイツのSF映画『メトロポリス』は、つぎのメッセージが出て終わる。
MITTLER ZWISCHEN HIRN UND HÄDEN MUSS DAS HERZ ZEIN!
これを日本語にすると、「脳(HIRN)と手(HÄDEN)の仲介者(MITTLER)がいるべきだ」となる。
この映画製作者が、考えた「手」とは工場労働者のことである。では、「脳」とは何かというと、銀行員のように、帳簿をつけて計算することである。パソコンが普及した現在では、「脳」を担う人がもっと少しでいいのではないか。東京の本社機構は縮小していいのではないか。
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115年前に、レフ・トルストイの書いた『イワンのばか』という童話がある。イワンは「手」を使って働くことしか、興味がない。だから、「ばか」と言われる。
この「ばか」が王様の娘の病気をなおしたことで、娘と結婚して、王様になる。ところが、手で働くことばかりして、お金に興味がない。賢い人たちは、こんな王のもとにいてもしかたがないと、国を去る。ばかばかりが残って、みんなが自分の手で働いて食べる国になる。誰もお金をもっていない。
悪魔の親方にとって、これが面白くない。この国を潰そうと出かけて いろいろなことをするが、うまくいかない。国に残っている人たちは、お金に興味がないから、国を潰しに来た悪魔の親方は食べ物が買えない。キリストの名前で恵んでもらうことが嫌いな悪魔の親方は、お腹をすかして、王のイワンにつぎのように言う。
「誰もかも手を使って働かなきゃならないなんて、お前の国でももっとも ばかげた おきてだ。…… 賢い人は何で働くか知っているか?」
「手で働くより頭を使った方がどんなに得だか わかるだろう。」
「頭で働くことは手よりも百倍もむずかしいと言うことをちっとも知らない。時としちゃ、全く頭がさけてしまうこともある。」
王のイワンはびっくりして、「頭」で働くことを、悪魔の親方から教えてもらおうと、国のすべての人たちを集める。
悪魔の親方は、高い塔の上から、集まったイワンの国の人たちに、「頭」で働くことを説明する。毎日、毎日、悪魔の親方は話し続けるのだが、いつまでも、「頭」で働き出さないので、みんな帰っていく。とうとう、お腹のすいた悪魔の親方は、足がよろめいて、壁に頭をぶつける。いよいよ、「頭」で働き始めたとみんなが再び集まった。
悪魔の親方は、塔の階段に頭から倒れて、そのまま、頭を段に打ちつけながら、地面に思い切り落ち、本当に頭が裂けてしまう。
童話なので、トルストイの言っていることは極端だが、中央官庁と政治家が役に立たないのを見るにつけ、もっと手や足で働く社会に変容する必要があると思う きょう この頃である。
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