きょう12月13日の朝日新聞は、ドイツの移民の劣悪な労働環境として、ドイツのRheda-Wiedenbrück市の食肉加工会社テニエス社の新型コロナ集団感染をとりあげていた。
この集団感染は6月23日にも報道されている。そのときは、ドイツ西部ノルトライン・ウェストファーレン州ギュータースロー郡の食肉加工会社として報道された。毎日新聞は11月28日に「ドイツの食肉工場集団感染で浮かぶ外国人の劣悪な環境 規制に乗り出す政府」という見出しで同じ事件を取り扱っている。
6月23日の報道では「食肉処理場で1550人以上の新型コロナウイルスの集団感染」となっていたが、きょうの報道では、食肉加工会社テニエスで「今年6月、1400人超が次々と新型コロナウイルスに感染した」とある。すなわち、ギュータースロー郡の集団感染のほとんどが、ドイツ最大手の食肉加工会社テニエスで起きたのだ。
今回、朝日新聞がもう一度報道したのは、10月下旬に、記者がこの会社の工場を訪ねたからだ。
テニエス社は授業員7400人の会社だが、そのうちの3分2がルーマニアやブルガリア、ポーランドなど中東欧を主とした移民だという。
テニエス社で約20年働くポーランド出身の50代の従業員は、雇用主がテニエス社の下請け会社だと言う。日本の派遣労働の仕組みと同じで、会社は労働者の待遇管理を自分たちの責任でないとするためだ。
その授業員は、週6日、1日10時間以上、加工施設で豚を解体しつづける。それだけ、時間当たりの賃金が低いわけだ。彼は「肉体的につらいが、ここ10年は、昇給していない」と言う。
また、狭い1室に複数人が寝ているという。移民労働者を支援するNGOによると、勤務シフトの違いを利用して1つのベッドを共用する人もいるという。日本の外国人実習生の生活と同じだ。
移民労働者の多くは、工場と寝るところを往復するだけの生活で、ドイツ語を学ぶ機会がないという。ドイツ語を話せなければ、この惨めな労働環境から這い上がることもできない。
まさに現代の合法的な奴隷制である。
ドイツ政府は、食肉業界の労働者を守るために、来年の1月から「従業員50人以上の食肉加工会社には労働者の直接雇用を命じ、勤務時間や住環境の厳重な管理を求める」という。これに対し、テニエス社は「来年の1月以降は生産現場の中核の従業員を直接雇用にしたい」としている。
「中核の従業員」以外の労働者の人権を守らないということか。
食肉業界の労働者の待遇が悪いのはスーパーが肉の安さを競うことだという。緑の党の連邦議会議員は「そもそも肉の価格が安すぎる」という。私もそうだそうだと思う。スーパーの出現で小売業が大規模化したため、農産業、畜産業、漁業の生産者が弱い立場に追いやられ、生産物の価格が不当に安くなっていると思う。
しかし、緑の党の連邦議員はとんでもないことをいう。「安い肉を望む一人ひとりの消費者の態度が変わらなければならない。私たちの社会的な倫理の問題だ」
消費者個人の心の問題に落としてしまっては、事態は改善されない。
会社と政府の問題だ。会社と政府は労働者の待遇に責任をもたないといけない。
外国人労働者も移民も、国内の労働者と同じ法で人権を守らないといけない。同じ最低賃金が適用されなければならない。「中核の労働者」とか、怪しげな格差を設けてはならない。単純労働だから格安の賃金で良いというのはおかしい。単純労働であろうが、雇う以上、ちゃんと生活できる賃金をはらわないといけない。
これは、まさに日本の問題でもある。
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