いま、不思議なほど、新型コロナが なりをひそめている。海外では新型コロナの感染がぶり返しているのに、日本では静かになっている。
理由がわからないが、子どもを相手にしている私たちにとって、これは、ありがたいことである。私のいる放課後デーサービスでも、子ども同士が接触しない対面指導に加えて、子ども同士が遊んだり、食べたりすることを、先週から解禁した。教室が、急に にぎやかになった。華やいだ。まだマスク着用が原則だが、うれしい限りである。
うれしいことはそればかりでない。
胆管を手術した子どもがようやく退院できた。炎症を起こして手術の予後が悪く、とても心配だったが、あすからリモート学習に復帰できる。母子家庭の子である。
彼は、物理や数学が好きな工業高校の電気科2年生だ。障害をもった人の義手・義足を開発したいという。人に負けたくないという性格があるので、点数をとることより、好奇心と考える能力を育てたいと思い、高校の範囲を超えた話をしてきた。一般相対論や量子論の話もしてきた。よく、私の話に食らいついてきた子だった。
また、今年の4月から担当した子どもが高校に受かった、と木曜日に連絡があった。この子は会ったときからずっとマスクをしていたので、素顔をしらない。
勉強がまったく嫌いだし、じっさいに、できない。勉強になると全くいじけてしまう。好きなことはゲームである。パソコンゲームやアーケドゲームをしまくっている。中学でパソコン部にはいっているので、プログラミングが好きかと思ってC言語を教えようとしたが、成功しなかった。私の教え方は難しすぎると言う。
彼もユニークな子である。キーボードからだとどんどん文章が書ける。勤め人ではなく自営業になりたいと言う。どんなことをしたいかと問うと、VRカフェを開きたいと言う。安い値段で仮想現実の世界をみんなに楽しんでもらいたいと言う。
彼の受ける高校の入試に面接と作文があった。面接は大丈夫だと本人は言う。親は作文が心配だと言う。キーボードからだと どんどんと書けるから大丈夫だと思ったが、紙と鉛筆をもたすと全然書きだせない。本人は手が自然に震えると言う。書けた文章も、小学校低学年の漢字も書けていず、平仮名ばかりで、読みにくい。せっかくの個性あふれる文章が紙だと展開できない。
こんなユニークな子を見捨てよいものか。
作文の課題を予測して、練習することにした。キーボードから入力した自分の文章を鉛筆を使って紙に写す。筆圧が弱いので、芯のやわらい鉛筆を使う。小学校低学年レベルの漢字は できたら 覚える。句点と読点の使い方をまちがわない。平仮名が多くなって読みずらいときは、1字コマをあけるか、句点をいれる。漢字使用の反対論者の私が、とにかく、読める文章を作成するよう、指導した。
いまは、子どもの自尊心を傷つけにすんだので、ほっとしている。本当は、マス目の原稿用紙に文章を起こすのは、作文という観点からは間違っているのだが。
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