おととい、11月21日から、イスラエルとハマスが人質50人規模の解放の交渉が合意にいたったとの報道がメディアをにぎわしている。
この人質50人の解放の交渉は、イスラエルの地上軍の侵攻前の1カ月前からウォール・ストリート・ジャーナルによって報道されていた。そのときのハマス側の要求はガザ地区への燃料と食料の供給であって、イスラエル側の拒否で交渉はとん挫した。
今回は、4日間の休戦とイスラエル側が拘束している300人(18歳未満の男性暴動参加者とテロ未遂事件の女性関係者)と引き換えに、ハマスが50人規模の人質解放すると報道されている。
交渉はイスラエル国外のカタールで行われてきた。ガザ地区は、イスラエルによって塀の中に閉じこめられ、燃料や食料や水の兵糧ぜめにあっており、昼夜の区別なく、空爆や地上軍に攻撃されている。いまや、どうやって、カタールでの合意がガザ地区のハマスに伝わるのか、私は気になる。
伝えられる報道では「少なくとも50人の人質」となっているから、カタールのハマス代表は、ガザの人質の拘束状況を もはや つかめなくなっているのでは、と私は推測する。ハマス側の相互の連絡は寸断されていると思うからである。
22日の日テレの『深層ニュース』での松村五郎(元陸上自衛隊 東北方面総監)と田中浩一郎(慶応義塾大学教授)のコメントでは、イスラエル側は、次の攻撃のため、人質はどこから出てくるかを監視しているだろうと言う。また、ハマス側も人質をすべて解放したら、自分たちの安全はなくなると思っているだろう、と言う。
イスラエル側は、人質解放妥結後も、内閣も軍もハマスを壊滅させるまで戦争をやめないと宣言している。ハマスの壊滅はハマスの全員を殺すとのことである。ハマス壊滅のためには、ハマス以外の人々が何人死んでもかまわないという立場を崩していない。ガザ地区北部から住民を南部に非難せよ、とイスラエル側が言っておきながら、北部で地上軍が病院を捜索してもハマスの本拠が見つからず、現在、ガザ地区南部の攻撃を始めている。ガザ地区の住民には逃げ場がないのだ。
ハマスは1993年のオスロ合意(暫定自治政府原則の宣言)にもとづくパレスチナ自治区の自由な選挙で勝った政党である。イスラエル側がそれを認めず、ハマスがガザ地区を「実効支配」していると主張する。本当は、ハマスがパレスチナ人を法的に代表しており、ガザ地区の行政をになってきた。イスラエルは2000年に入ってから、パレスチナ自治区と外部を塀で囲むだけでなく、ハマスの幹部を暗殺するようになった。
今回の交渉妥結には、イスラエル国内やアメリカでの反戦の盛り上がりによるものだが、イスラエル政府がハマス壊滅を主張続けているので、停戦までは なかなか いかないであろう、と私は悲観する。今後も、一方的で非人道的な戦争が、イスラエル側によって行われ続けるだろう。
[追記11月24日]
きょうの朝日新聞に、イスラエル側が人質解放の交換条件で釈放したパレスチナ人についての報道に、つぎの記述があった。
<イスラエル側は、パレスチナ人が道路や家を破壊されることに抗議するだけで拘束するケースがあり、今回釈放されたのはそうした理由で捕まった人が多い欧米メディアは報じた。イスラエル警察は釈放される人の家族に「祝わないように」と繰り返し通告した。>
ここでの釈放されたパレスチナ人は、ハマスでもガザ地区のパレスチナ人でもなく、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区の住民である。イスラエルの基本法(憲法)では、非ユダヤ人には人権が保障されないのである。ユダヤ人以外は警察国家(刑務所)のなかにいる状態がイスラエル政府のもとで続いている。
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