5月23日の朝日新聞『長期政権の磁界』によれば、5月の朝日新聞社の電話による世論調査で、安倍内閣支持率が、18~29歳男性は54%(女性38%)、30代男性は57%(同39%)と、若い男性が高めだ。全体の支持率は45%であるという。
私は世論調査や選挙の出口調査に答えないことにしており、どういう考えの人がこういう世論調査に答えるのか、理解しがたい。こういう調査に答えることは、個人の思想信条を明らかにすることだし、答えるのに自分の時間を奪われる。
しかし、調査結果は何らかの事実を反映していると考えるべきだ。しかも、電話の質問に答えるのだから、社会参加に積極的と考えてもよさそうだ。
若い男性の安倍内閣支持率はどうして高いのだろうか。
政治意識を分析する遠藤晶久・早稲田大学准教授(投票行動論)は、「若い男性ほど経済への不安が強く、経済政策への関心が高い」と言ったとあるが、この調査結果と整合性がとれているのだろうか。
きつい労働に苦労しているはずの若い男性の支持率が高いのが不思議である。非正規の人は調査に答えているのだろうか。また、非正規と正規の人の間で差異があるのだろうか。解雇の不安におびえているはずの40代男性、50代男性の支持率は、どうなっているのだろうか。
「あなたの実感としては、景気は悪くなっていると思いますか」の質問に、全体では、悪くなっているが49%、そう思わないが40%である。若い男性はどう思っているのだろうか。不安を感じるとよけい、現政権を支持してしまうのだろうか。
記事によれば、支持理由として、「他よりよさそう」が51%と過半数を占めたという。この意味がわからない。これまでの内閣と比較してのことなのか、野党のどこかが政権をとったとしたときの仮想内閣と比較してなのか。
同じ5月のTV朝日の世論調査では、6つの選択肢から1つ選ぶようになっている。「安倍総理の人柄が信頼できるから」が12.2%で、「支持する政党の内閣だから」が21.1%、「他の内閣より良さそうだから」が45.7%である。
実は、紙の朝日新聞には、支持理由の選択肢と結果が省略されており、質問が適切だったのかがわからない。たとえば、「安倍総理にリーダーシップがあるから」「安倍総理がカッコウいいから」「法と秩序を重んじるから」「景気に期待できるから」「国防に力を入れているから」「現内閣を支持するのが国民の務めだから」「がんばっているから」「なんとなく」とかの選択肢があったのか。複数選択のほうが、支持の実情を反映している。
朝日新聞は、また、支持しない理由の調査をしていない。なぜしないのか。「自由を重んじないから」「軍備を拡張しているから」「機密保護法を通したから」「共謀罪法を通したから」「憲法を改正しようとしているから」「国会で真面目に答えないから」「嘘をいうから」「株価を操作しているから」とか、いろんな理由があるはずである。
とにもかくにも、若い男性の安倍内閣支持率が高いのが気になる。エーリヒ・フロムが分析したように「自由からの逃避」なのか、ハンナ・アーレントが分析したように単に「凡庸」なのか、バートランド・ラッセルが考えるように「だまされている」のか。気になる。気になる。
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