きょうの朝日新聞の1面に記事『規制委10年、問われる独立性 原発推進、強まる包囲網』がのった。記事の趣旨は、首相の岸田文雄が原発の再稼働と新増設に大きく舵を切り、原子力規制委員に圧力をかけているとするものだ。
原子力規制委員会は、原子力利用の安全性を担保するために、環境庁の外局に付設された「行政委員会」である。申請にもとづき、原子力利用に関する法令を満たしているかどうかの判定業務を行う。(「行政委員会」は国会の承認なしに廃止できない。)
原子力規制委員会ができた理由は、2011年の福島第1原発の事故の前は、原子力の安全性の規制は原子力利用推進の経済産業省で行われ、法令が守られていたかが疑わしいかったからだ。
朝日新聞の記事は、その規制委員会の独立性がいま問われているというものだ。問題は、規制員会の人事権が首相にあることだ。記事はいう。
<(この)7月、規制庁(規制委員会事務局のこと)トップ3の長官、次長、原子力規制技監のポストを、経産省の出身者が初めて独占した。発足時は長官、次長に警察庁と環境庁の出身者が就任。原発を推進してきた経産省以外の出身者が一角を占めてきた。>
この3月、自民党の電力安定供給推進議連が、テロ対策施設の設置ができていない原発についても緊急稼働させるよう決議している。また、6月に政府が骨太方針で効率的審査を閣議決定している。
じつは、原子力発電の安全性に関して解決がついていない問題が山積みしている。10年前と違って、太陽光や風力による発電技術も進んでいる。原発よりもコストが下がっている。わざわざ、原発を再稼働、新増設をする必要がない。
原子力発電が日本で始まって60年近くたっているが、いまだに、使用済み核燃処分場が決まっていない。放射性物質は自然崩壊を待つしかないが、それまでの間、安全に隔離しておくための処分場がいる。全国各地の原発には、使用済み核燃料が溜まったままの状態だ。
また、原発の事故処理の問題も解決していない。福島第1原発事故が起きて11年たったが、溶解してかたまった核燃料(デブリ)の取り出しの見通しがたっていない。デブリを冷やすために発生する放射性物質の汚染水の処理も、国内や各国の反対を無視して、海洋投棄処分しようとしている。汚染水は、幸いに液体だから、地中深くの砂礫層に押し込むことができる。それなのに、安くあげるために、東電と経産省は、海洋投棄しようというのだ。
さらに、大きな問題は、ウクライナ侵攻によって、原発は戦争のとき標的になることだ。原子爆弾を投下するより、ずっと、安いコストで、原発を破壊し、国土を放射性物質で汚染できる。
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