釈教の歌を女性はどう詠んだか。作者明記のなかでは、まず肥後(肥後守藤原定成の娘)が、目に浮かぶような作品を残している。「あふち」(樗)は栴檀。
1930 紫の雲の林を見わたせば
法にあふちの花咲きにけり 肥後
二人目が小侍従。宮廷女性の仏教理解が、男性に一歩も退かないことが、よく分かる一首である。詞書に「心経の心をよめる」と。
ひらかなy162:いろにだけ こころがそまる むなしさを
しってはれやか はんにゃしんぎょう
ひらかなs1937:いろにのみ そめしこころの くやしきを
むなしととける のりのうれしさ
【略注】○色=この世の全ての事象。古来のやまとことば(color)に、中国
仏教の影響を受けた意味(phenomena)が、掛けられている。以下、
『般若心経』のなかで最も有名な「色即是空」を詠う。
○法(のり)=仏法。
○小侍従=悠 022 (07月23日条)既出。