青山潤三の世界・あや子版

あや子が紹介する、青山潤三氏の世界です。ジオログ「青山潤三ネイチャークラブ」もよろしく

2006.11.6 屋久島モッチョム岳 アズキヒメリンドウ 10

2011-03-24 11:23:23 | 屋久島 奄美 沖縄 八重山 その他



(第10回)リュウキュウイチゴ補遺

参考までに、奄美大島の最高峰・湯湾岳(698m)と、沖縄本島の最高峰・与那覇岳(503m)の、いずれも山頂付近で撮影した“リュウキュウイチゴ”の葉の写真を紹介しておきます。

台湾や中国大陸の近縁種群を含めた詳しい考察は、『屋久島の植物・第3巻・リュウキュウイチゴとヤクシマキイチゴ』(自費刊行2007年)で行っていますので、興味のある方は、そちらを参照して下さい。



奄美大島湯湾岳山頂(約700m)にて。葉は大形で葉質が薄い。形や色は異なるが、雰囲気はヤクシマキイチゴにどこか似ている。









沖縄本島与那覇岳山頂付近(約450m)にて。ナガバノモミジイチゴに似た葉形。葉裏は粉白色で脈周辺が紫色を帯びる。











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続・ベニシジミ物語 6 アオミドリフチベニシジミ

2011-03-23 15:58:08 | チョウ







雲南省保山市高黎貢山百花嶺2007.7.5【9:12】 


(第9回)アオミドリフチベニシジミHeliophorus androcles Ⅰ

《Heliophorus androclesの♂外部生殖器構造について(被検標本:ヒマラヤ地方産)》

「中国のチョウ」には、刊行時点で本種を撮影・観察し得ていなかったことから、本種の♂外部生殖器構造についてはほとんど触れていなかったと思います。ただし、国外(おそらくネパールまたはインド東北部)産を検鏡していて、特徴は把握しています。ごく大雑把に言えばフカミドリフチベニシジミ&キンイロフチベニシジミに最も近いと考えられますが、両種の持つ幾つかの固有形質の発現は弱く、またvinculum背後縁に大型の突起が生じることではサファイアフチベニシジミと共通します(それ以外の形質のサファイアフチベニシジミとの共通性は少ない)。どこかにメモや略図があるはずなのですけれど、現時点では探し出せないので、それが見つかる(あるいは再検鏡する)までは、詳細は割愛します。なお、ここでは種名をHeliophorus androclesと同定していますが、文献によってまちまちで(ことにサファイアフチベニシジミとの混同が見られます)、近似の複数種が存在する可能性もあります。






アオミドリフチベニシジミ Heliophorus androcles[夏型♂]
(全写真)雲南省保山市高黎貢山百花嶺(標高1700m~2200m) 2007.7.5~6
*1段目と2段目左端の計4カット、3番目3カット、4段目左2カットは、それぞれ同一個体(計6頭)。


《アオミドリフチベニシジミHeliophorus androclesの分布と生態について》

アオミドリフチベニシジミは、雲南からインドシナ半島北部やヒマラヤ東部には広く分布していると思われるのですが、僕は、この高黎貢山百花嶺(白花林)のみでしか撮影・観察していません。撮影地は2か所、百花嶺集落の畑脇の草地(2007.7.5標高1700m付近)と、稜線に向けて数百m登った辺りの林内に開けた草地(2007.7.6標高2000m付近)です。今回は、まず畑脇草地での撮影個体、次回に林内での撮影個体を紹介していきます(高黎貢山百花嶺の自然については、この後、12回に亘って紹介していく予定です)。撮影時間帯は、(今手元に出てきた写真に関しては)午前9時12分からの20分間。観察した個体は全て♂で、ここではフカミドリシジミは目撃していません。







↑怒江(サルウイン河)の畔から望む高黎貢山東面、写真右方の山中に百花嶺があります。上2005.6.30、下2005.2.5(フカミドリフチベニシジミⅡでも同一地点からの写真を紹介済み)。







↑百花嶺の集落。2007.7.5。下の写真の手前がアオミドリフチベニシジミのいた草地。





↑草地の葉上で翅を開いて日浴?中の♂。見渡すとあちこちで見付けることが出来ます。イメージは、日本のベニシジミにそっくりです。高黎貢山百花嶺2007.7.5【9:17】






↑高黎貢山百花嶺2007.7.5【9:12】翅表の色や金属青色鱗の範囲はサファイアフチベニシジミの夏型と似ていますが、僅かに緑がかっていて、同じ青でも色調が明らかに異なります。








↑高黎貢山百花嶺2007.7.5【9:16】前の写真とは別個体。後翅表の朱色班は、夏型で明らかに減少するサファイアフチベニシジミとは、春型(アオミドリフチベニシジミの季節型については未確認)同様に幅広いことで異なります。






↑高黎貢山百花嶺2007.7.5【9:17】近づくと複眼を上に持ち上げてこちらを見ているように思えます。








↑高黎貢山百花嶺2007.7.5【9:19】裏面はフカミドリフチベニシジミやキンイロフチベニシジミとほとんど変わらないように思います。チェックした個体(次回にもう1個体)に関しては前翅の褐色条が太いようですが、安定した有意差なのかどうかは確かではありません。













↑高黎貢山百花嶺2007.7.5【9:12】葉上に止まるとすぐに翅を開きます。








↑高黎貢山百花嶺2007.7.5【9:31】金属光沢青色鱗の範囲はどの個体も安定しています(この個体は前翅が丸味を帯び、基部が濃色)。


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2006.11.6 屋久島モッチョム岳 アズキヒメリンドウ 9

2011-03-23 15:35:37 | 屋久島 奄美 沖縄 八重山 その他



(第9回)リュウキュウイチゴ&ヤクシマキイチゴ(移行型)について



葉形はヤクシマキイチゴに近いように思われますが、より厚く光沢があり、裏面葉脈などは赤色を帯びません。








全体としてはリュウキュウイチゴに近いようですが、、、、。






極めて大型で形も幅広く、一見ビロウドカジイチゴを思わせます。しかし、葉質は革質で光沢があり、その点ではリュウキュウイチゴ的です。








この辺りがちょうど中間程度の印象。
(リュウキュウイチゴの若い個体の葉は、通常深く瓢箪型に切れ込みますが、成木の葉の切れ込みとは無関係)








左2枚:典型リュウキュウイチゴの葉
右2枚:典型ヤクシマキイチゴの葉
(いずれも左が葉表、右が葉裏、以前に写したモッチョム岳登山口と山頂付近の写真が出て来ないので、とりあえず別の場所=安房2006.6.21と安房林道終点付近2006.4.28の撮影品を代用しておきます)






登山口(展望台)付近には、典型的リュウキュウイチゴを含む、様々なパターンの葉が見られます。急傾斜の登山道を登り始めると、典型的リュウキュウイチゴは姿を消し、全ての葉が様々な形をした中間個体ばかりとなります。そして山頂付近では、葉が薄く小さく、鋭くモミジ型に切れ込み、葉裏が真っ赤になる、典型的ヤクシマキイチゴが出現します。今回紹介するのは、11月の無花・無果実期ゆえ、積極的な撮影は行っておらず、実際には、更に著しい変異パターンを見ることが出来ます。なお、両典型個体も今回は撮影していないため、安房林道の入り口・終点付近での撮影写真を代用しました。


屋久島産のキイチゴ属は5グループ8種(コバノフユイチゴ群のコバノフユイチゴ、フユイチゴ群のホウロクイチゴとフユイチゴ、クサイチゴ群のリュウキュウバライチゴとヤクシマヒメバライチゴ、ナワシロイチゴ群のナワシロイチゴ、モミジイチゴ群のリュウキュウイチゴとヤクシマキイチゴ)。そのうち、果実が黄色で(注:キイチゴは「木苺」で、「黄苺」ではなく、大半の種の実は赤い)、花柄や葉枝の付き方が独特の様式を持つ(一枝集散形花序)モミジイチゴ群の2種は、非常に興味深い種間関係にあります。

モミジイチゴ群の種は、おおむね日本本土の東半部にモミジイチゴRubus palmatus var. coptophyllus、西半部にナガバノモミジイチゴR.p.var. palmatus(両種は変種関係に置かれていますが、安定的な特徴を示すこと、および同群他種とのバランスを考えれば、種を分けたほうが妥当ではないかと思われます)、南西諸島にリュウキュウイチゴR.grayanus、伊豆諸島と四国・九州などの太平洋沿岸(九州西岸を含む)にビロウドカジイチゴ(ハチジョウイチゴ)R.ribisoideus、屋久島に固有種のヤクシマキイチゴR.yakumontanusが分布します。ほかに、キソイチゴ、マルバモミジイチゴ、トゲリュウキュウイチゴなどの種・亜種・変種も記載されていますが、上記各分類群の生育環境に応じた変異形、あるいは種間交雑起源による特化形質の表現と想定されます(それらを含め、モミジイチゴ種群全体としての種分化の方向性を探らねばなりません)。

モミジイチゴ群には、ほかに、やや特異な形質を持つ、ビロウドイチゴR.corchorifoliusとゴショイチゴR.chingiiがあります。ともに日本では限られた地域に分布するマイナーな種ですが、中国大陸や台湾などでは、むしろビロウドイチゴが、モミジイチゴ種群の代表種となっているように思われます。

モミジイチゴにやや似通った別群の種に、カジイチゴがあります。多くの文献によると、ヤクシマキイチゴは、カジイチゴとリュウキュウイチゴの自然交雑種と記されていますが、これは明らかな間違いです。まず、屋久島にカジイチゴは分布していないこと、そして、ヤクシマキイチゴはカジイチゴ群的な形質を全く示さず、典型的なモミジイチゴ群の性質を持っていることがその理由です。ナガバノモミジイチゴとリュウキュウイチゴの種間雑種、という説もありますが、これも間違い。ナガバノモミジイチゴも屋久島には分布していません(以下に述べるヤクシマキイチゴとリュウキュウイチゴの移行型の中には稀にナガバノモミジイチゴに似た個体が出現する)。ただし、カジイチゴ由来の話と違って、全くが接点ないわけではありません。ヤクシマキイチゴ自体が、モミジイチゴやナガバノモミジイチゴの共通祖先から分化した可能性が強いからです。そして、あえていえば、より遠距離に分布域をもつモミジイチゴのほうに類似点が多く見出されるように思われるのです(似た傾向は他の屋久島産植物にも見られ、例えば、ヤクシマシャクナゲは、西日本のツクシシャクナゲより東日本のアズマシャクナなどにより近い類縁性を有していると思われます)。

さて、問題はリュウキュウイチゴ。同群の他種と異なり、葉はモミジ型に切れ込まず、革質で濃緑色を帯び、一見した限りでは、全く別のグループの種のように見えます。しかし、花序の様式や、花や実は、典型的なモミジイチゴ群の特徴を示し、モミジイチゴやヤクシマキイチゴにごく近縁な種であることは、疑いを持ち得ません。南西諸島に広く分布するということで、単純に熱帯性・南方型の種、と捉えてしまいがちですが、西南諸島から、さらに南に続いているわけではありません。良く考えるとかなり不思議な分布パターンです。南西諸島の固有種なのです(台湾や中国大陸南部などにも分布している可能性はあり、一部の文献にも記録がなされていますが、真否の程は不明)。あえて言えば、南に繋がるというよりも、ナガバノモミジイチゴやモミジイチゴ、あるいは後述するビロウドイチゴを通して、北(日本本土)や中国大陸との関連が深いように思われます。

同様に、(ほぼ)南西諸島固有といえる種は、ほかにも幾つもあり、例えば、この項の主役であるヘツカリンドウ(広義)がまさにそうですし、テッポウユリもその一つです(ともに台湾に僅かな産地あり)。クマゼミやジャコウアゲハ(本州南部~与那国=クマゼミ/西表=ジャコウアゲハ)も、西南諸島に広く分布し、台湾や中国では明確に種が入れ換わることで、同じカテゴリーに含めて考えて良いでしょう。

リュウキュウイチゴは、(ほぼ)西南諸島の固有種と言っても、どの島にも生えているというわけではなさそうです。屋久島、種子島、奄美大島、徳之島、沖永良部島(たぶん)、沖縄本島、久米島(たぶん)、宮古島(たぶん)、石垣島、西表島、といったメジャーな島々には、ごく普通に見られますが(「たぶん」とした島については未確認)、この後述べる、三島列島、口永良部島、トカラ列島には非分布で、代わりに、上記の島々には分布しないハチジョウイチゴ(ビロウドカジイチゴ)が生えています。また、ヘツカリンドウやトカラアジサイの生える伊平屋島には極めて数が少なく(分布の確認はしている)、対岸の沖縄本島ヤンバル地域で至る所に繁栄しているのとは対照的です。

種としての形質は(屋久島のヤクシマキイチゴ交雑集団を除いては)ごく安定しているようで、屋久・種子から石垣・西表に至る各島嶼間の集団に、これと言った変異は見られないように思われます(丸い葉や、深く“瓢箪型”に切れ込んだ葉など、一見著しく変異が多いようにも見えますが、それは発育段階や環境条件の差によって生じる個体内の非安定的な変化で、個体としての安定的な変異ではありません)。

しかるに、台湾や中国大陸に行くと、リュウキュウイチゴ(少なくとも典型群)は消えてしまう(そのことは、九州や本州などでも同様ですが)。

大雑把に俯瞰すると、次のような筋書きになるのかも知れません。

日本本土や台湾・中国大陸には、別の近縁種のモミジイチゴ・ナガバノモミジイチゴやビロウドイチゴなどが普遍的に分布しています。(歴史的相関性やシステムは不明ですが)仮にかつてリュウキュウイチゴが日本本土や台湾・中国大陸にも分布していたとしても、それら繁栄する近縁各種の中に収斂されていき、典型群は残っていない、と考えることが出来るかも知れません。

屋久島にも、リュウキュウイチゴと共に(異なる時空由来で)古い時代から在来分布する、ヤクシマキイチゴの存在があります。しかし、そこでのリュウキュウイチゴもヤクシマキイチゴも、日本本土や中国大陸のモミジイチゴやビロウドイチゴなどのように、空間的にも量的にも圧倒しているわけではなく、勢力は拮抗しています。したがって、互いに(どちらかに)収斂・吸収されてしまうわけでも、押し出されてしまうわけでもなく、両者の影響が及ばない空間では、典型的な「リュウキュウイチゴ」「ヤクシマキイチゴ」として成立し続けることが出来るのです。しかし、大多数の空間では、両者は混じりあって、典型的な個体は、それぞれ端と端にのみ見出される、というわけです。完全に混棲しているのでも、完全に交雑しているのでもない、という図式です。

ちなみに、トカラ列島などの島々に於けるリュウキュウイチゴの欠如は、小さな島々ゆえ、ハチジョウイチゴ(ビロウドカジイチゴ)と共存しうるだけのキャパシティが無かった、と考えることが出来るかも知れません。と言って、それならば、ハチジョウイチゴ(ビロウドカジイチゴ)の形質の中に、リュウキュウイチゴの形質の浸透が見られても良さそうに思うのですが、そのようなことはなさそうです。これらの島々には、リュウキュウイチゴはもともと分布していなかった、と考えるべきかも知れません(現在の分布に至る主要因は、果実の鳥散布による、とするのが常識なのでしょうが、それだけで考えうる単純な問題ではないと思う、鳥散布だとすれば、鳥自体の飛行航路が分布決定の重要な、かつ唯一の要素になってくるわけですが)。

以上の筋書きは、何の根拠もない、絵空事です。ついでに、もう一つ空想めいた話を追加しておきます。

屋久島に於ける、リュウキュウイチゴ・ヤクシマキイチゴ“コンプレックス”(複数の異分類群の集合体という意味では無く、もっと広く一般的な意味での複雑な集合体として)は、モミジイチゴ群内の各分類群の形質を(もともと)併せ持った表現体ではないかと。いわば「ヤクシマリュウキュウモミジイチゴ」とでもいうべき、モミジイチゴ群の祖先的形質をトータルに内包した(通常は、様々な形質表現の可能性が内包されていても、実際に表現される形質は限られているはずなのですが、それが全て表現されてしまった)、基本型。その山上タイプ(ヤクシマキイチゴ)から本土のモミジイチゴが派生し、海岸タイプから沖縄のリュウキュウイチゴが派生した、という逆の発想も考えられます(多くの地域集団と共通した様々な段階の白帯出現頻度を示す、屋久島産クマゼミの存在の意味、あるいは多型であることが本来の性質と考えた、沖縄本島産ヘツカリンドウの存在の意味においても、同様のことが言えそうです)。

この“空想”は、実際には様々な無理があり証明は困難です。僕自身、自ら否定したいと思っています。しかし、それぞれの種の由来を探るに当たって(由来はともかく、結果としての祖先的形質の内包を考えるに際して)、“発想の根源”のような部分が鍵を担っている、ということも、言い得るのではないかと思うのです。

一般的な考え方に話を戻しましょう。屋久島産のリュウキュウイチゴは、山上部でヤクシマキイチゴに接し、その影響によってのみ中間的形質を持った個体が出現すると考えるべきか、それとも、山上の環境に移行することによって、次第に中間的形質を表現、さらには典型的ヤクシマキイチゴに至る、という遺伝的な性質が内包されているのか。

後者だとすれば、他の南西諸島の島々でも、標高さえ高ければ(種子島約280m、奄美大島約700m、沖縄本島約500m、西表島約450m)、ヤクシマキイチゴ的集団が出現しても良いことになります。

ちなみに、台湾の山地では(中国大陸の一部でも)、種としてはおそらくビロウドイチゴに帰属すると思われるとしても、リュウキュウイチゴ的、もしくはヤクシマキイチゴ的な葉を持った個体が、しばしば見受けられます(拙書「屋久島の植物:リュウキュウイチゴとヤクシマキイチゴ」参照)。九州南部産のナガバノモミジイチゴにも、しばしばリュウキュウ的な、あるいはヤクシマキイチゴ的な葉の個体を散見します。それらの実態の把握と解釈は、今後の課題です。

僕自身の観察では、これまでのところ、典型リュウキュウイチゴのみが産する島は、種子島、奄美大島、沖縄本島、西表島。このうち奄美大島では、湯湾岳山頂(標高約700m)付近で、リュウキュウイチゴらしからぬ、柔らかで大型の葉の個体を観察しています(葉の質以外はヤクシマキイチゴとは全く別方向の形質表現)。また、沖縄本島の与那覇岳山頂(標高約500m)付近(標高約450m地点)に於いては、葉の形が極めて細長く伸長した(その点では、ナガバノモミジイチゴやヤクシマキイチゴに幾らか類似した個体を観察しています。それらがどのような意味を持つのかも、今後の検証課題です。

三島列島(黒島)、口永良部島、トカラ列島(口之島)は、完全にハチジョウイチゴ(ビロウドカジイチゴ、どの島にも極めて豊富)
の単独分布となり、リュウキュウイチゴもヤクシマキイチゴもナガバノモミジもビロウドイチゴも、全く分布していません。一方、屋久島や奄美大島にはハチジョウイチゴ(屋久島のリュウキュウイチゴ~ヤクシマキイチゴ移行的個体の中には、ややハチジョウイチゴに概形の似た個体が見出されますが、葉の概形以外の諸形質はハチジョウイチゴと全く異なります)は、全く分布を欠きます。鳥散布が分布の主要因であるなら、複数種の(非交雑)混在なり交雑なりが生じても良いはずですから、不思議としか言いようがありません。





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続・ベニシジミ物語 8 フカミドリフチベニシジミ(その2)

2011-03-22 11:19:25 | チョウ






雲南省保山市高黎貢山百花嶺2007.7.6【17:29】 




(第8回)フカミドリフチベニシジミHeliophorus viridipunctata Ⅱ

フカミドリフチベニシジミは、雲南の各地に於いては、ちょうど日本のベニシジミに相当する普遍的なチョウの一つではないかと思われます(四川省西部の成都市西郊一帯ではサファイアフチベニシジミがこれに代わります)。そのためもあってか、あちこちで見た記憶があるにも係わらず、(真面目に撮影していないのでしょうか)意外に写真が少ないのです。あるいは、撮影はしたのだけれど、ついでに1カットとか2カットだけ、ということで、どこかに紛れ込んでしまって、見つけ出せないまま、というのも有りそう。事実、夏期の大理蒼山での撮影カットは多数あるはずなのですが、(前もってワードに張り付けてあるものを除いては)行方不明で探し出せません。

ということで、フカミドリフチベニシジミ夏型は、たまたま多数の個体の撮影写真が出てきた、雲南高黎貢山百花嶺産を中心に紹介していきます。実のところ、今回「ベニシジミ特集」をやろうと思い立ったのは、膨大な数の写真の整理中、この2007.7.5-6百花嶺での撮影カットの7割ぐらいを見付けだしたので、その中の多くを占める、アオミドリフチベニシジミとフカミドリフチベニシジミを紹介しておこうと思い立ち、どうせなら他のベニシジミ類も、と考えて、シリーズ化と相成ったわけです。

集落の畑脇で撮影した2007.7.5の分は、全てアオミドリフチベニシジミで、フカミドリフチベニシジミは原生林内の草地で撮影した7.6の分にのみ含まれています。アオミドリフチベニシジミとは完全な混棲をしていて、翅裏の模様による区別を把握していないことから、そこで写した♀がどちらの種に属するかの判別は出来ないでいます。詳細については、アオミドリフチベニシジミ(その2)の項で述べて行きます。



   

   
フカミドリフチベニシジミ Heliophorus viridipunctata[夏型♂(全て別個体)]
1段目左:夏型♂:雲南省保山市高黎貢山白花林2007.7.6
1段目中:夏型♂:雲南省保山市高黎貢山白花林2007.7.6
1段目右:夏型♂:雲南省保山市高黎貢山白花林2007.7.6
2段目左:夏型♂:雲南省保山市高黎貢山白花林2007.7.6
2段目中:夏型♂:雲南省保山市高黎貢山白花林2007.7.6
2段目右:夏型♂:四川省天全県二朗山中腹2009.8.4
7段目左:夏型♂:雲南省保山市高黎貢山白花林2007.7.6
7段目中:夏型♂:雲南省保山市高黎貢山白花林2007.7.6
7段目右:夏型♂:雲南省大理市蒼山中腹2007.7.12
8段目左:夏型♂:雲南省大理市蒼山中腹2007.7.12
8段目中:夏型♂:雲南省大理市蒼山中腹1995.7.27
8段目右:夏型♂:雲南省大理市蒼山中腹1995.8.1
*撮影地点は、春・夏型とも、いずれも標高2000m前後(1800m~2300m)




   

     
フカミドリフチベニシジミ Heliophorus viridipunctata[夏型♀翅表と♂♀翅裏(全て別個体)]
1段目左:夏型♀:雲南省保山市高黎貢山白花林2007.7.6(アオミドリフチベニシジミの可能性もあり)
1段目中:夏型♀:雲南省保山市高黎貢山白花林2007.7.6(アオミドリフチベニシジミの可能性もあり)
1段目右:夏型♀:四川省天全県二朗山中腹2009.8.4(キンイロフチベニシジミの可能性もあり)
2段目左:夏型♀:雲南省保山市高黎貢山白花林2007.7.6
2段目中:夏型♀:雲南省保山市高黎貢山白花林2007.7.6(アオミドリフチベニシジミの可能性もあり)
2段目右:夏型♀:雲南省保山市高黎貢山白花林2007.7.6(アオミドリフチベニシジミの可能性もあり)
3段目左:夏型♀:雲南省金平県(北方の峠上)1995.4.14
3段目中:夏型♀:雲南省大理市蒼山中腹1995.8.1
3段目右:夏型♀:雲南省大理市蒼山中腹1995.7.27





↑怒江(サルウイン河)の畔から望む高黎貢山東面、写真中央辺りに百花嶺があります。2005.2.5(借り物のデジタルカメラで撮影)。アオミドリフチベニシジミⅠにも同地点からの写真を紹介しています。





↑アオミドリフチベニシジミとフカミドリフチベニシジミが混棲する林内の草地。百花嶺の標高2000m付近(アオミドリフチベニシジミⅡにも同じ場所の写真を紹介しています)。2007.7.6





↑フカミドリフチベニシジミ♂裏面。外縁の朱色が鮮やかです。高黎貢山百花嶺2007.7.6【13:32】(撮影時間のリストはアオミドリフチベニシジミⅡの末尾に掲載)









↑高黎貢山百花嶺2007.7.6【13:32~33】







↑♀は♂のように活発な活動はせず、茂みにひっそりと止まっています。アオミドリフチベニシジミとフカミドリフチベニシジミの♂が共に見られるため、どちらの種に属するのかは不明です。高黎貢山百花嶺2007.7.6【13:32~33】





↑占有姿勢をとる2頭の♂。高黎貢山百花嶺2007.7.6【17:29】







↑♂(上)♀(下)とも、たまに花(未同定)を訪れます。高黎貢山百花嶺2007.7.6【上17:29/下17:51】







↑♂(上)♀(種不明・下)。午後5時頃には多数見られたアオミドリフチベニシジミ♂は、5時半頃には姿を消してしまいました。6時頃になると、フカミドリフチベニシジミ♂の活動も静まって来ます。高黎貢山百花嶺2007.7.6【上17:58/下18:02】






↑雲南省昆明市西山。1995.4.3





↑雲南省緑春。1995.4.14





↑雲南省金平。1995.4.7





↑雲南省大理蒼山。1995.8.1 











↑四川省天全県二朗山両河口2009.8.1。前の写真で終えるつもりでいたら、四川省でも撮影しているはずなのを思い出し、急遽探し出して追加しました(随分写真枚数が増えてあや子さんには申し訳なく思っています)。今の所、雲南省の各産地から飛び離れた東北方面での記録地です。本項の組み写真とキンイロフチベニシジミⅡで紹介した「どちらの種か解らない♀翅裏」の写真の個体は、前日、ほぼ同一地点で撮影したものです。二朗山の峠の20㎞ほど手前(以前紹介した、夜中に辿りついて泊まったゲストハウスの少し手前)で、「喇叭河」という山岳リゾート?自然公園への分岐点(標高は1800mくらいでしょうか)。5000m級の稜線(導遊図の上辺)を隔てて、「東拉紀行」で紹介した東拉渓谷(サファイアフチベニシジミを撮影)、その東にキンイロフチベニシジミを撮影した西嶺雪山があります。









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2006.11.6 屋久島モッチョム岳 アズキヒメリンドウ 8

2011-03-22 11:15:13 | 屋久島 奄美 沖縄 八重山 その他




(第8回)登山路、ヤクシマツチトリモチ






ヘツカリンドウの撮影を切り上げて、山頂に登ってみることにしました。4年前の春以来久しぶり。途中、キイチゴ(リュウキュウイチゴ×ヤクシマキイチゴ)の調査をしたいのですが、今は花も実も時期外れ、時間もないことですし、今回はパスということに。下の写真には、カンツワブキとリュウキュウイチゴの葉が、一つ上の写真の下方には、一見ハチジョウイチゴ(ビロウドカジイチゴ)に似た形のリュウキュウイチゴの葉が見えます。















ツチトリモチ(ツチトリモチ科)も、ヤッコソウに負けず劣らずヘンテコな植物です。写真は(たぶん)ヤクシマツチトリモチ。ツチトリモチ、キイレツチトリモチなど数種があり、同定には小さな粒粒に見える花の構造を調べねばならず、厄介です。上の写真の緑の葉は、キッコウハグマ(キク科)。低標高地に見られるホソバハグマに対し、通常は高標高地に多く見られますが、環境によっては低い場所でも見ることが出来ます。今回チェックしたい植物の一つです。









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続・ベニシジミ物語 7 フカミドリフチベニシジミ(その1)

2011-03-21 09:28:21 | チョウ





雲南省大理市蒼山山麓2010.5.5 




(第7回)フカミドリフチベニシジミHeliophorus viridipunctata Ⅰ

《Heliophorus viridipunctataの♂外部生殖器構造について(被検標本:雲南省緑春県産)》

キンイロフチベニシジミの項で記したように、♂外部生殖器の形態は、キンイロフチベニシジミと酷似します。末端部分における微少な差異が、個体変異の範疇に含まれるものなのか、種を分けるに足る有意なものなのかについての判断は、現時点では保留しておきます。将来、検鏡を再開し次第、改めて検証して行く予定です。




フカミドリフチベニシジミ Heliophorus viridipunctata[春型♂(全て別個体)]
1段目左:春型♂:雲南省大理市蒼山山麓2007.2.24
1段目中:春型♂:雲南省大理市蒼山山麓2007.2.24
1段目右:春型♂:雲南省大理市蒼山山麓2007.2.24
2段目左:春型♂:雲南省大理市蒼山山麓2007.2.24
2段目中:春型♂:雲南省大理市蒼山山麓2007.2.24
2段目右:春型♂:雲南省大理市蒼山山麓2009.3.17
3段目左:春型♂:雲南省緑春県(緑春東方の峠)1995.4.7
3段目中:春型♂:雲南省金平県(金平北方の峠)1995.4.14
3段目右:春型♂:雲南省大理市蒼山山麓2010.5.5
4段目左:春型♂:雲南省大理市蒼山山麓2010.5.5
4段目中:春型♂:雲南省大理市蒼山山麓2010.5.5
4段目右:春型♂:雲南省大理市蒼山山麓2010.5.5









フカミドリフチベニシジミ Heliophorus viridipuncutata[春型♀翅表と♂♀翅裏(全て別個体)]
1段目左:春型♂:雲南省大理市蒼山山麓2009.3.17
1段目中:春型♂:雲南省大理市蒼山山麓2007.2.24
1段目右:春型♂:雲南省大理市蒼山山麓2007.2.24
2段目左:春型♂:雲南省大理市蒼山山麓2010.5.5
2段目中:春型♂:雲南省大理市蒼山山麓2009.3.17
2段目右:春型♂:雲南省大理市蒼山山麓2010.5.5


 

《フカミドリフチベニシジミHeliophorus viridipunctataの分布と生態について》

1995年以降、四川から雲南に、植物や昆虫などの撮影行の比重を移して行きました。そのため、最もよく見かけるベニシジミの仲間が、それまでのサファイアフチベニシジミからフカミドリフチベニシジミに入れ替りました。

フカミドリフチベニシジミの分布域は、マクロに見るとキンイロフチベニシジミと重なります(四川省西部~雲南省西部・南部・インドシナ半島北部)。また、部分的には、サファイアフチベニシジミやアオミドリフチベニシジミの分布圏とも、多少なりとも重なります。僕自身がこれまでに撮影・観察した範囲では、サファイアフチベニシジミ確認西縁(磨西)周辺でフカミドリフチベニシジミ確認東縁(二朗山)周辺と重なり、アオミドリフチベニシジミ確認東縁(高黎貢山=僕自身における唯一の確認地、文献上によるとそれ以西に広く分布していると思われます)周辺で、フカミドリフチベニシジミ確認西縁(高黎貢山、より西のミャンマーなどにも分布)周辺と重なります。

アオミドリフチベニシジミとの混棲状況については、次種の項で詳しく述べます。キンイロフチベニシジミとの混棲状況については、前項で述べたように、マクロに見ればおおむね重複し、ミクロに見れば、完全な混棲地点は今のところ確認し得ていません。調査不足で偶然ということも考えられますが、少なくとも、キンイロフチベニシジミがより山間部の原生的環境に見られ、フカミドリフチベニシジミがより人里近くの人為的環境に多い傾向があることは確かなようです。

僕は、“棲み分け”という言葉を安易に使うのは、好きではありません。種が違えば、多少なりとも性質は異なるはずです。近縁の複数種が同所的に棲息し、活動の微環境・時期や時間帯・パターンなどに差が見られた場合、えてして相互の種の存在が関与して成された(→棲み分けを行う)と考えがちですが、それ以前に、それぞれの種が“もともと”備えもつ性格に導かれた(相手の種の存在とは無関係に成された)「結果としての棲み分け」に過ぎないと考えたほうが、妥当であるように思われるのです。

ただし、非常に近縁な種間においては、その限りではないかも知れません。フカミドリフチベニシジミとキンイロフチベニシジミの場合も、♂外部生殖器の形態が酷似するということは、種分化の時間がごく浅いとも考えられ、デリケートな“種間”の相互作用、たとえば交雑を避けるための(時間や空間や行動や形態に係わる)何らかの制御機構が働くなど、必然的に棲み分けが行われている、という可能性もあるでしょう。

その他のベニシジミ族各種との混棲は、Helleia属3種(メスアカムラサキベニシジミ、シロオビムラサキベニシジミ、オナガムラサキベニシジミ)およびウラフチベニシジミと、大理蒼山山麓~中腹をはじめとした雲南省の幾つかの地点で観察しています。フカミドリフチベニシジミに対し、Helleia属3種はより標高の高い地域に、ウラフチベニシジミはより低標高の地域に見られる傾向があるようです。

フカミドリフチベニシジミの発生期は、僕自身が確認した限りにおいては、2月から8月、(秋期は僕の怠慢でチェックし損ねている、、、雲南では普通種とも言えそうな蝶のため、出会ってもきちんと撮影・記録していない可能性大)おそらく年間を通して発生しているものと考えられます。

顕著な季節差を示すサファイアフチベニシジミと異なり、キンイロフチベニシジミ同様に、出現時期(季節)ごとの差異は微少です。(以下♂♀とも共通)2~4月に出現する“春型”は、後翅表後縁の朱色班がよく発達し、尾状突起は短め。6~8月に出現する“夏型”は、後翅表後縁の朱色班の発達が悪く、尾状突起より長め。両タイプは明確に入れ替るのではなく、例えば、同じ“春型”として一括しましたが、4~5月の個体は、2~3月の個体に比べて幾分“夏型”に近づく傾向があることは、サファイアフチベニシジミやキンイロフチベニシジミの場合と同じです。

♂前翅表については、キンイロフチベニシジミ同様に、出現季節による差違は全く見られません。ただし、外縁と翅端付近の黒色部以外の金属光沢域が、広く安定しているキンイロフチベニシジミと異なり、本種では個体変異が著しいのが特徴です。ほとんど金属光沢青緑色鱗が出現せず、翅表一様に黒褐色の個体から、かなり鮮やかな金属光沢青緑色鱗が翅表中央部に広がる(といっても他種のように全面に広がることはありません)個体まで多様です。また、金属光沢青緑鱗の前方域に、小さな朱色班が現れることもあり、中には朱色班が大きくて金属光沢青緑鱗を欠く、一見♀を思わせる個体もあります。これらのバリエーションは、季節を問わずアットランダムに出現するようで、同一時期・同一地点でも、様々なタイプの個体が見られます。

♀前翅表の朱色紋は、春型でより大きく、夏型で小さめとなることは、サファイアフチベニシジミの場合と同様です。サファイアフチベニシジミのように、朱色紋が外側で盛り上がって内側で湾曲気味になる傾向は特に示さず、単調な楕円型または長方型となります。確実に該当すると判断出来る♀を撮影していないキンイロフチベニシジミに対しては比較が叶いませんが、おそらく差異は極めて少ないのではないかと考えられます。アオミドリフチベニシジミとは、(僕の観察地に関しては)完全に同所的に混在していて、撮影・観察した♀個体がどちらに属するかの確認が出来ずにいます(アオミドリフチベニシジミの項で纏めて紹介)。

裏面は、後翅外縁の朱色班が、春型でやや白色鱗を塗しますが、サファイアフチベニシジミのように顕著ではありません。また、春夏とも褐色条が明瞭に発達することなどから、サファイアフチベニシジミとは容易に区別がつきます。アオミドリフチベニシジミやキンイロフチベニシジミとは酷似し、ことに後者とは有意の区別点を指摘できず、♀の判別は非常に難しいものと思われます。なお、フカミドリフチベニシジミの前翅裏面外縁は鮮やかな朱色(ウラフチベニシジミでは顕著に出現し、サファイアフチベニシジミにはほとんど現れない)で縁取られる傾向がありますが、僕のチェックした個体に限って言えば、キンイロフチベニシジミにおける出現程度はやや弱く、これを有意の差と認めうるか否かについては後の検証結果を待たねばなりません(おそらく個体変異の範疇に入るものと思われます)。










↑雲南省大理 2007.2.23。洱海湖畔と大理古城を結ぶ農道沿いの菜の花畑から仰ぎ見た蒼山4123mの連峰。この季節、山裾の田畑の周辺では、フカミドリフチベニシジミが飛び交っています。








↑雲南省大理 2009.3.17。蒼山の山裾には、畑が開墾されていて、土手には様々な花が咲き競っています。









↑タネツケバナに吸蜜に訪れたフカミドリフチベニシジミ。その雰囲気は、日本の田畑の畔のベニシジミとそっくりです。雲南省大理 2007.2.24。











↑雲南省大理 2007.2.24。上は♂、下2枚は♀。










↑雲南省大理 2007.2.24。畔に舞い落ちた枯葉と、緑の草&ベニシジミの組み合わせは、まさに早春のイメージ。写真上のように新鮮な個体から、写真下のように飛び古した個体までが混在していて、一部個体は冬を通して発生している可能性が推察されます。






↑雲南省大理 2007.2.24。陽だまりのシダの一種の葉上で、占有姿勢をとる2頭の♂。







↑雲南省大理 2009.3.17。ミドリシジミのAB型♀のように、青緑金属光沢班の上に朱色班が現れる♂もいます。







↑雲南省大理 2010.5.5。占有姿勢を取る2頭の♂。互いを意識していて、一頭が向きを変えると、もう一頭も同時に向きを変えます。やがて2頭同時に飛び立って空高く舞い上がり、激しく追飛翔を繰り返したのち、姿を消してしまいます。そして気がつくと、いつの間にか元の葉上に戻って来ているのです。







↑人差し指よりやや大きめ。第2回のマルバネフチベニシジミ(人さし指よりやや小さめ)と比較して下さい。極小のミヤマムラサキベニシジミを除く各種は(日本のベニシジミも)同程度です。雲南省大理 2010.5.5。






↑後翅外縁だけでなく、前翅外縁にも朱を施しています。まるで口紅のようにチャーミング。雲南省大理 2010.5.5。







↑雲南省大理 2010.5.5。この一連の写真(2010年5月)は、以前の「あや子版」でリアルタイムで紹介していますので、そちらも参照して下さい。






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2006.11.6 屋久島モッチョム岳 アズキヒメリンドウ 7

2011-03-21 09:22:12 | 屋久島 奄美 沖縄 八重山 その他

(第7回)アズキヒメリンドウ ⑤



花の裏表の色調の差は極めて明瞭で、沖縄本島産に比べて、質が分厚く感じられます。








花の大きさはこんなところ。沖縄本島産に比べれば、かなり大きいように思われます。






ちなみに葉の大きさ。ずっと小さいものから、もっと大きなものまで様々ですが、この辺りが平均的な大きさではないでしょうか。右の葉はカンツワブキ。






蜜腺溝に蟻がやってきます。以前、春に来たときに、一つの花に10数頭が群がっている写真を撮影したことがあります。開花後期のほうが、よく蜜を分泌するのかも知れません。相互(殊に花の側)の利益関係はどうなっているのか、なども今後の検証課題です。

















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続・ベニシジミ物語 5 キンイロフチベニシジミ(その2)

2011-03-20 09:39:12 | チョウ






↑ベトナム北部ファンシーファン山中腹 2010年4月4日。



(第4回)キンイロフチベニシジミHeliophorus brahma Ⅱ

『中国のチョウ』刊行以降(実質2004年以降)の記録を中心に、簡単にメモっておきます(一応最初の2つは『中国のチョウ』収録の撮影記録)。
■1991年8月9日、四川省大邑県西嶺雪山。
■1995年4月7日、雲南省緑春県。
■2004年7月30日、雲南省騰沖県高黎貢山。
■2010年4月4日、ベトナム北部(サパ)ファンシーファン山中腹。
同時に4~5♂を観察した緑春を除き、各1♂の観察・撮影です。

前記したように、フカミドリフチベニシジミとは♂交尾器にほとんど差異がなく、マクロな分布域はほぼ重なります。ただし、今のところ僕自身は、同一地点では両種を撮影していません。唯一の同一地点での目撃地は、雲南省保山市高黎貢山百花嶺(2007.7.6)で、多数のフカミドリフチベニシジミ、アオミドリフチベニシジミに混じえ、一頭を目撃しています。ちなみに雲南省騰沖県高黎貢山でのキンイロフチベニシジミ撮影地は、百花嶺と同一山系の約40㎞隔てた地点(ともに標高は2000~2300m、7月)、2004年9月末には、その麓の龍川江(イラワジ河支流)畔の水田畔で1♀を撮影していますが、僕の同定能力では、どちらの種であるかの判別は付きません(ただし後述するように、棲息環境からすれば、フカミドリフチベニシジミの♀である可能性が高いと思います)。

最も隣接した地点での同日撮影は、雲南省緑春県東部における、距離にして2~3km、標高にして200~300mほどを隔てた地点の例(標高1500~2000m付近)で、キンイロフチベニシジミが、山間部の道の無い渓流源頭部、フカミドリフチベニシジミが、人里に近い溜池畔の藪と、山腹の雑木林内の山道です。

また、四川省のキンイロフチベニシジミ撮影地(大邑県西嶺雪山)の南西50㎞余の地点(天全県二朗山)でも、フカミドリフチベニシジミを撮影しています。こちらも、標高(1500~2000m付近)季節(8月上旬)とも共通、ただし前者は、山間の渓流、後者は集落近くの国道沿いです。後者の近くでは、別の年に♀も撮影していますが、どちらの種なのかの判別はつきません(おそらくフカミドリフチベニシジミ)。

ベトナム北部のキンイロフチベニシジミ撮影地(サパ・ファンシーファン山)は、ほとんど中国(雲南省)国境に隣接した地点で、緑春県での撮影地と同一の山系に属しています。距離の隔たりは100㎞ほど、その間の元陽県、金平県でもフカミドリフチベニシジミを撮影していて、サパ~金平間は50㎞余です。いずれも標高は1500~2000m。キンイロフチベニシジミの撮影地は、ファンシーファン山中腹の道無き小渓流で、金平と元陽のフカミドリフチベニシジミ撮影地は、それぞれ林内に開けた天然放牧草地と、棚田脇の林縁です。

たまたま僕の撮影した地点が重ならないというだけのことで、完全な混生地も普遍的に存在するのかも知れませんが、フカミドリフチベニシジミが、より人里に近い(あるいは人手の入った)環境、キンイロフチベニシジミが、より原生自然環境に結びついているらしいということも、動かし難い事実と思われます(全体的に見て、後者のほうが明らかに稀)。

♂の活動時間帯と、占有・追飛翔パターンについては、緑春県に於ける観察を『中国のチョウ』に記述しています。ファンシーファン山の小渓流(環境的には緑春での観察地に酷似)でも、ほぼ同様の行動を示し、灌木または高茎草本の葉上で占有姿勢をとっての静止(通常静止直後は翅を閉じていますが、しばらくすると水平に開きます)と、他個体?との追飛翔を、交互に繰り返します。非常に素早くて目まぐるしく、目で追うことはほとんど不可能に思われる程です(葉上から飛び立って姿を消しても、いつの間にか翅を水平に開いて元の葉上に戻っている)。ちなみに、ウラフチベニシジミ群の種(Heliophorus ilaまたはepicles)も、同一地点で同時に占有飛翔を繰り返しており、確認はしていないのですが、両者間で追飛翔を行っている可能性も少なくないと考えられます。

顕著な占有行動を観察したのは、緑春や高黎貢山では正午前後だったのに対し、ファンシーファン山では午後4~5時頃(中国時間に換算、ベトナム現地時間では、午後3~4時頃)でした。しかし、日差しは非常に強く、必ずしも時間帯に係わらず、日照状況などその時々の微気象との相関によって、決定されているものと思われます。

撮影個体のうち、緑春産とファンシーファン山産が春期(4月上旬)で春型、高黎貢山産と西嶺雪山産が夏期(7月末~8月上旬)で夏型に相当すると思われますが、サファイアフチベニシジミとは異なり、前翅表先半部の黒色部の広がりに於いては春夏で全く差異はありません(サファイアフチベニシジミの夏型同様の広がりを示します)。後翅裏面後縁沿いの赤色班は、春型で白色鱗を塗したような様相を呈し、後翅表後縁沿いの朱色班は、春型で発達が良く(色も鮮やか)夏型でやや発達が悪いといった、サファイアフチベニシジミの場合に似た傾向を示しますが、サファイアフチベニシジミのように顕著ではありません。(四川省二朗山で撮影の夏期の♀個体の裏面写真を、一応本種として紹介していますが、フカミドリフチベニシジミか本種かについては、不明です)。

なお、♂翅表が、鮮やかで明るい金色の金属光沢を示す雲南省緑春産・雲南省高黎貢山産に対し、四川省西嶺雪山産はやや緑がかった弱い光沢(飛び古した個体ゆえかも知れません)、ベトナム北部ファンシーファン山はオレンジ色を帯びる(ミャンマー産の所蔵標本も似た色調を示します)、といった差異が見られます。個体変異に由来するものなのか、地域的な(あるいはその他の意味を持つ)安定した変異なのかは、今後の検証課題です。










↑雲南省境に近い、ベトナム最北部ファンシーファン山3142m。









↑ファンシーファン山中腹の、キンイロフチベニシジミとウラフチベニシジミ♂の占有行動が見られる小渓流。













↑ファンシーファン山中腹 2010.4.4(同一個体)。







↑西嶺雪山(大邑原始森林)のキンイロフチベニシジミが棲息する渓谷。






↑おそらく、フカミドリフチベニシジミ、サファイアフチベニシジミも混生しているのではないかと考えられますが、渓流の上部では本種が主体になるものと思われます。花は野生アジサイのアスペラの一種。2009.8.9






↑飛び古した個体なので、正確なことは解らないけれど、ベトナム・サパ産とは反対に、赤色味がほとんど無く、金色というより黄緑色です。四川省大邑県西嶺雪山(大邑原始森林)中腹 1991.8.9






↑♀裏面。四川省天全県二朗山中腹 2009.8.3
成都西郊の山地には、キンイロフチベニシジミ、フカミドリフチベニシジミ、サファイアフチベニシジミの3種が分布している可能性があります。サファイアフチベニシジミに関しては、♀や翅裏面も他種との区別が可能ですが、僕は現時点ではキンイロフチベニシジミとフカミドリフチベニシジミの♀の区別点を把握していません。したがって、この写真の個体も、どちらの種なのかは不明です。







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2006.11.6 屋久島モッチョム岳 アズキヒメリンドウ 6

2011-03-20 09:30:04 | 屋久島 奄美 沖縄 八重山 その他




(第6回)アズキヒメリンドウ ④




花の後期に、花冠が内側に強く巻くことの多い伊平屋島産に対し、屋久島産では外側に強く反り返る花が多いようです。たまたま僕の観察したものがそうなのに過ぎないのか、有意な問題が含まれるのか、今後の調査課題です。

























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続・ベニシジミ物語 5 キンイロフチベニシジミ(その1)

2011-03-19 09:33:44 | チョウ

 



↑雲南省騰沖県高黎貢山2004.7.30 



(第4回)キンイロフチベニシジミHeliophorus brahma Ⅰ

《Heliophorus brahmaの♂外部生殖器構造について(被検標本:雲南省緑春県産)》

【全体の大きさとプロポーション】
●大きさは、ベニシジミ族として中康。Valvaやjuxtaの前後長が短く、全体に丸く頑丈なイメージ。

【Saccusの発達度】
●ウラフチベニシジミHeliophorus ila程ではありませんが、やや長めです。

【Sociusの形状】
●サファイアフチベニシジミHeliophlus saphir同様に、基部が太く後半が内側に湾曲して先端が鋭く尖り、対で「クワガタ」状になりますが、対の幅は本種のほうが広がります。

【Falxの発達程度】
●ベニシジミ族として平均的。

【Vinculum背後縁の張り出し】
●シロオビムラサキベニシジミHelleia pangaともども、張り出しが顕著です。

【Valvaのプロポーション】
●横幅の広い(前後長は幅の約1.5倍)半球形のお椀型で、濃く着色し、(Heliophorus viridipunctataを除く)他の各種に比べて明らかに頑丈な感じがします。

【Costaの発達程度と、Juxta側翼との連接状況】
●Costaの部分が急角度で屈曲してjuxtaの側翼と連接し、costa上方のvalva背基縁が、2分裂した突起となります。

【Juxta両翼面の角度】
●ほぼ90度。

【Juxtaの翼の形状】
●概形はHelleia属3種(オナガムラサキベニシジミ、シロオビムラサキベニシジミ、メスアカムラサキベニシジミ)に似て大型、側翼が発達して左右の幅が前後長を越します。

【Juxtaの腰からsaddleにかけての状況】
●腰の位置が低く、翼面はvalva内面に近づき、腰からsaddleにかけての部分は一様に幅の広い面状となります。

【Phallusの形状】
●ベニシジミ族の一般型。

本種の♂外部生殖器の基本構造は、次に述べるフカミドリフチベニシジミHeliophorus viridipunctataと完全に相同です。末端部分には微少な相違点が見られますが、種差と言える程のものかどうかは疑問です。ただし、仮に微少な差であっても、相互に安定的であればその限りではありません。被検標本が少ない現時点では、保留にしておくほかないでしょう。








キンイロフチベニシジミ Heliophorus brahma

1段目左:春型♂:雲南省緑春県 1995.4.7
1段目中:夏型♂:雲南省騰沖県高黎貢山 2004.7.30
1段目右:同上(同一個体)
2段目左:春型♂:ベトナム北部ファンシーファン山中腹 2010.3.20
2段目中:同上(同一個体)
2段目右:同上(同一個体)
3段目左:同上(同一個体)
3段目中:同上(同一個体)
3段目右:夏型♂:四川省大邑県西嶺雪山中腹 1991.8.9
4段目左:春型♂裏面:雲南省緑春県 1995.4.7
4段目中:春型♂裏面:ベトナム北部ファンシーファン山中腹 2010.3.20
4段目右:夏型♀裏面:四川省天全県二朗山中腹 2009.8.3(フカミドリフチベニシジミないしはサファイアフチベニシジミの可能性あり)

*撮影地点はいずれも標高2000m前後(1700m~2300m)



《キンイロフチベニシジミHeliophorus brahmaの分布と生態について》

昨年末、沖縄にヘツカリンドウの調査に赴く際、なかなか予算を捻出出来ず、出発当日の時点で、どう考えても2万円ほどが足りません。思いあぐねた挙句、羽田に向かう途中に、神田神保町の古本屋へ本を売却しに行くことにしました。

用意したのは、作者や出版元から寄贈された、一冊数万円単位の豪華写真集を2冊、高額で購入した学術書を1冊、中国の奥地で入手し苦労をして持ち帰った分厚い図鑑2冊、いずれも手放したくは無かったのですが、背に腹は代えられません。少なくとも万単位の金額にはなるはずです。もし、予想より少な目なら、それらに加えて、中国の研究施設に寄贈するという名目で、つい先日無理を言って出版元より頂いたばかりの、自著「中国のチョウ」も付け加える、という算段です。

ところが何と、、、、数万円どころか、5冊併せて、たったの500円!幾らなんでもそれは無いですよ!と抗議したのですが、今の時勢、写真集などは全く値が付かない、外国物も買い手がない、と埒があきません。『中国のチョウ』なら6000円を出しても良いです、併せて6500円、じゃあどうでしょう、ということで、(必要のない重い本を何冊も中国や沖縄で持ち歩く訳には行かないし)仕方なく、粘って計7000円で引き取ってもらうことにしました。

帰京後、『中国のチョウ』を買い戻しに行ったのです。6000円ということは、8000円ぐらいで店頭に出ているかも、売却者本人ということで、少しは負けて貰えるかも、だったら手持ちの資金でギリギリ足りそう、と思っていたのですが、売値は定価(1万6000円)と左程変わらない1万3500円。1万2000円に負けておきましょう、と言われても、今の僕には購入は無理な話です。

というわけで、今現在『中国のチョウ』は僕の手元に存在しません。幸い、ベニシジミ族全体のゲニタリアについて記述した部分と、サファイアフチベニシジミの記述部分に関しては、以前にパソコン内に取り込んでいたため、それを再編して利用することが可能になったのですけれど、その他の種に関しての(ゲニタリア以外の)記述は、参照することが出来なくなってしまったわけです(原資料を引っ張り出して新たに一から纏めるのは大変!)。従って、キンイロフチベニシジミ以下の種の、『中国のチョウ』刊行以前の記録(1988~1997年)の紹介は、今回は割愛し、そのうちに『中国のチョウ』を再入手した時点で、追加記述をしていきたいと考えています。





↑雲南省緑春県 1995.4.7。元陽県との境界の峠付近から、数100m登った森林中の渓谷の陽だまりで、キンイロフチベニシジミの数頭の♂が、葉上で占有行動するのに出会いました。詳細は『中国のチョウ』に記述しているので、入手後、転載を予定しています。







↑雲南省緑春県 1995.4.7。春型♂。サファイアフチベニシジミと違って、翅表は、後翅外縁の朱色班が鮮やかなことを除けば、夏型との間に目立った差違はありません。数頭の♂による葉上での目まぐるしい占有行動を観察していたのですが、一時間近く絶った頃、突然姿が消えてしまいました。しばらくして、足下の小さな流れの岩上に数頭の♂が吸水にやって来ているのに気がつきました。








↑後方から見ると、翅の輝きは消え、クロミドリシジミを思わせる、味わいのある深い暗色と成ります。






↑雲南省緑春県 1995.4.7。後翅裏面外縁朱色班が白く塗されるのは、サファイアフチベニシジミ春型と同じ。ただし、その程度はより軽微で、裏面の条紋は明瞭、尾状突起はかなり長めです。






↑キンイロフチベニシジミの棲息する渓流周辺の天然林の写真が見つからないので、代わりに緑春への行き帰りに出会った巨大棚田の写真を紹介しておきましょう(「あや子版」では何度か紹介済み」。初出時は日本初の紹介だったはずですが、16年後の現在では、超有名観光地になってしまったようですね。ちなみにこのような開けた環境の周辺には、フカミドリフチベニシジミは見られても、キンイロフチベニシジミは棲息していない筈です。雲南省元陽~緑春1995.4.8












↑雲南省騰沖県高黎貢山 2004.7.30。♂は葉上に静止し、他の個体が近づくと飛び立って、物凄いスピードで目まぐるしく占有飛翔を繰り返します。金属光沢の煌めきは、前方から見た時が最も顕著なようです。春型との差は、翅表では後翅外縁朱色班の鮮やかさがやや弱く、翅裏では朱色班に白色鱗を塗さないことぐらいで、全体としてごく軽微です。翅裏の黒条紋は、サファイアフチベニシジミと違って良く発達します。












↑雲南省騰沖県高黎貢山2004.4.20。キンイロフチベニシジミが見られるのは、峠頂近くの原生林(写真上:樹冠、中:林内2004.4.20)中に開けた、天然放牧草地(下1995.7.30)の周縁です。








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2006.11.6 屋久島モッチョム岳 アズキヒメリンドウ 5

2011-03-19 09:30:25 | 屋久島 奄美 沖縄 八重山 その他




(第5回)アズキヒメリンドウ ③






同じ株でも4弁の花があったり、5~6弁の花があったりすることは、奄美や沖縄や伊平屋島の場合と同じです。
















この個体は、伊平屋島産と特に良く似ています。







でも色は、屋久島産のほうが、ずっと濃いアズキ色。










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続・ベニシジミ物語 4 サファイアフチベニシジミ(その2)

2011-03-18 14:11:35 | チョウ
続・ベニシジミ物語 4 サファイアフチベニシジミ(その2)





↑浙江省杭州市西郊臨安県西天目山山麓 2005.4.12


(第4回)サファイアフチベニシジミHeliophorus sapher Ⅱ

このシリーズで紹介するベニシジミ族各種の大多数の写真は、2005年にデジタルカメラを使いだしてからのものです。また、Helleia属の3種とベニシジミLycaena phlaeasは、ポジフィルム(ヴェルビア)使用のカットも多いのですが、主に1995年以降の撮影。それに対して、このサファイアフチベニシジミだけは、1989年~1991年度の、四川省都江堰市(青城山山麓)における、ポジフィルム(コダクローム)使用の写真が、ほとんどを占めます。

1998年に『中国のチョウ』刊行後は、主な撮影・取材対象地域を、四川省から雲南省や陝西省や広西壮族自治区などに移してしまったために、この仲間の主役はフカミドリフチベニシジミ(およびキンイロフチベニシジミ&アオミドリフチベニシジミ)となり、四川省、ことに成都近郊の低山地域に多く見られたサファイアフチベニシジミに出会う機会は、めっきりと減ってしまいました。ここ数年、再び四川省を訪れる機会も増えたので、他地域(浙江省)産を併せ、『中国のチョウ』刊行後に撮影した個体のデータを紹介しておきます。

■2009年7月1日。四川省磨西県ミニャコンカ山麓。1♂撮影。正確には、ミニャコンカ登山口である磨西の村の手前、大渡江支流沿いの滝を車を止めて撮影中に出会った個体です。同行していた中村君が見付け、僕も慌てて撮影に加わりました(中村君は翅の裏面も撮影しています)。2010年8月9日。四川省宝興県東拉渓谷入口付近。1♂(+α)。「My Sentimental Jorney~東拉紀行」でも紹介。同時に♂翅表と翅裏を撮影していますが、別個体の可能性もあります。緯度は、北緯30°(磨西)、30°30′(宝興)付近で、青城山や西天目山山麓とほぼ同じですが、標高は明らかに高く、1500m~2000m辺りに位置するものと考えられます。ともに、前翅外縁黒色部が翅端部で広がり、後翅外縁の朱色班の面積が狭いという、典型的な夏型の形質を示しています。

なお、この一帯(成都西郊の比較的高標高の地域)では、キンイロフチベニシジミ(西嶺雪山)、フカミドリフチベニシジミ(二朗山)も、撮影しています(青城山山麓などの低地帯では、おそらくサファイアフチベニシジミ単独分布)。ただし、この3種を同時に見かけたことはありません(二朗山で撮影した1♀の帰属は未定→キンイロフチベニシジミの項で写真紹介しています)。四川省における3種の相互関係の実態は、今後の検証課題です。

■2005年4月12日。浙江省臨安県(杭州市西郊)西天目山山麓。1♂撮影。『中国のチョウ』に、1989年度の観察・撮影例を記述した場所と、同一地点。『中国のチョウ』では、標高約400mとしていますが、ここでは約200mとしておきました。手元に等高線の入った地図がないため、正確な標高は解らないのですが(判明次第記述します)、いずれにしても、東シナ海沿海部(杭州湾)の杭州市中心部から左程離れていない、山際の低地帯です(西天目山登山口)。同じ時期が発生盛期となる、ヒイロクモマツマキチョウの撮影が主目的で、1989年の場合も、2005年の場合も、ヒイロクモマツマキチョウ撮影中に、同じく成都近郊に多産するキマダラサカハチチョウ共々、畑の縁でたまたま出会ったものです(見つけたのはスーリンで、ヒイロクモマツマキチョウ撮影を中断、あわてて駆けつけて写したのが、この写真です)。

1989年、2005年とも、撮影時期は、主に1989~1991年の成都市西郊の青城山山麓と同じ頃(4月上~中旬)、成都西郊産について言えば、この時期の撮影個体は、全て典型的な春型の特徴を示していますが、浙江省産は、夏型との中間的形質を現わします。すなわち、♂翅表外縁の黒色部が先端付近で夏型のように太くなり、しかし典型的な夏型と違って、後翅外縁の橙色班は、鮮やかで太い春型的特徴を示します(1989年に撮影した裏面の特徴も中間的)。また、尾状突起も、典型的な春型(通常極めて短い)よりは幾分長めですが、夏型に比べれば明らかに短いと言えます。

季節のみでなく、両地域とも、北緯30°~31°(屋久島~種子島に相当)の間に位置し、標高も左程変わりなく(海抜換算では青城山山麓のほうが幾分高い)、地形的にも類似しています。なのに片方(成都近郊産)は典型的な春型、片方(杭州近郊産)は夏型との移行型、というのは、どのような訳があるのでしょうか?異なる分類群に属する(浙江省の♂ゲニタリアは未検鏡)可能性もなくは無いでしょうが、外観で判断する限り、全く相同と考えて差し支えないと思います。おそらく、季節型(ベニシジミ類の場合は、日本のベニシジミなどもそうですが、明確な季節型があるのではなく、低温または短日期と高温または長日期との間で、表現形質が連続的に移行していきます)の形質形成に与える気候的要因が、同一季節、同一緯度・標高といっても、背後に5000~7000mクラスの高山を控えた内陸盆地の縁の成都近郊と、周囲には2000m未満の山しかない沿海部の杭州近郊では、微妙に異なるのではないでしょうか。

興味深いのは、(『中国のチョウ』にも触れていますが)青城山をはじめとする成都西郊の低山帯に於いて、本種とともに極めて普通に見られるキマダラサカハチチョウが、ここ杭州西郊でも混在しているということです。両種は、一般には中国西部を代表する種のように思われがちですが、実際は、より西方では(それぞれ近縁別種の、アカマダラモドキやオオサカハチチョウ、フカミドリフチベニシジミやアオミドリフチベニシジミと入れ代るように)姿を消し、逆に遥か東方の長江河口付近に姿を現すわけで(中間地域の湖北省などに於ける実態検証が必要ですが)、このような種から成る「長江中~下流域固有生物」という分布型のカテゴリーを設置せしめても良いのではないか、と思っています。






↑サファイアフチベニシジミ、キマダラサカハチチョウ、ヒイロクモマツマキチョウの棲息する、西天目山山麓の畑の縁の雑木林。浙江省臨安県2005.4.10。
上の写真は、デジタルを使いだして最初のカットの一つです。その1年ほど前から仕事(旅行本の取材)用には簡単なデジタルカメラを使ってはいましたが、蝶の写真をデジタルで撮影したのは、この日が初めて(ヒイロクモマツマキチョウの翅を閉じたカット)。その直後、西天目山に登山中に、買ったばかりのデジタルカメラが雨に濡れてしまって、作動しなくなってしまいました(デジタルはアナログより雨に弱いのです)。そこで、翌日、翌々日の撮影は、(上海のニコンへ修理に出すまでの間)予備に持っていたアナログカメラを代用することにしました。最初に紹介した、サファイアフチベニシジミ♂のカットが、その時の撮影。ということは僕がポジフィルム使用のアナログカメラで写した、最後の写真の一つということになります(のち半年ほどはアナログカメラも持ち歩いていて、風景や花は念の為両方で撮影していましたが、結局ポジフィルムのほうは現像しないまま今に至っています)。





↑1989.4.9 浙江省臨安県。2005年度と同じ場所での撮影(♂)。この時もヒイロクマキチョウ撮影中に、キマダラサカハチチョウと共に姿を表しました。今回(2005年度)とは逆に、キマダラサカハチチョウは何とか撮影できたのだけれど、サファイアフチベニシジミの撮影には失敗。でも、かろうじて同定は出来ます。後翅裏面後縁朱色帯は白色鱗粉を塗し(典型春型に比べればやや軽微)、尾状突起は典型春型に比べればやや長めで、2005年撮影個体の翅表の特徴と軌を一にします。








↑吸水中の夏型。四川省都江堰市青城山山麓 1989.6.20







↑キツネアザミの花で吸蜜中の夏型2♀。四川省都江堰市青城山山麓 1989.6.14 







↑交尾中の夏型♂♀。裏面の黒条は僅かに現れますが、フカミドリフチベニシジミなど近縁3種に比べれば、明らかに不明瞭です。四川省都江堰市青城山山麓 1989.8.1










↑夏型♀。春型同様に、朱色班は内側に湾曲する傾向があります。四川省都江堰市青城山山麓1989.6.19(上)/1989.6.9(上と下)









↑夏型♂。前翅外縁黒帯の上部が広がり、後翅外縁の朱色帯は、春型に比べ、明らかに発達が悪くなります。四川省都江堰市青城山山麓1989.6.14(上)/1989.6.8(下)








↑夏型♂。後翅裏面外縁沿い朱色帯(の内縁の白帯)は、中程(第4-5室)で強く湾曲する傾向があります(近縁3種やウラフチベニシジミではストレート)。四川省宝興県東拉1989.6.14。宝興県の産地は「東拉紀行」で紹介済み。








↑上2枚とも中村君撮影。僕のより、ずっと良い色が出てる! 悔しいなあ、、、、落ち込んでしまいます。腕の差ではなく、カメラの違いだと思いましょう。






↑中村くんに、オーイ!と呼ばれて、駆けつけて写しました。もっと地味な色だったのを、鮮度を上げて、やっとこの程度です。ミニャコンカ山麓の磨西の村の手前付近にて 2009.7.1 







↑磨西県の撮影地は、ミニャコンカ7556m(写真の左のピーク、1989.5.2撮影)の山麓で、海螺溝入口に近い大渡河の一支流沿いの路傍(標高1600m付近)。ミニャコンカ紀行は、「2009.7.2“20年ぶりのミニャコンカ”」で近く紹介を予定しています。





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2006.11.6 屋久島モッチョム岳 アズキヒメリンドウ 4

2011-03-18 13:59:42 | 屋久島 奄美 沖縄 八重山 その他



(第4回)アズキヒメリンドウ ②



鬱閉した林内に下向きに咲いているので、木漏れ日が当たっていない時は、露出を周囲に合わせて自然光で下から花を写すと真っ黒(上)、露出全開にして、軽くストロボの光を入れてみました(下)。










ストロボ光の同調仕方によって、雰囲気が随分と変わります。












強いストロボ光のみでの撮影。











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続・ベニシジミ物語 3 サファイアフチベニシジミ(その1)

2011-03-17 11:29:46 | チョウ






↑四川省成都市西郊都江堰市青城山山麓 1989.4.14 





(第3回)サファイアフチベニシジミHeliophorus sapher Ⅰ

《Heliophorus sapherの♂外部生殖器構造について(被検標本:四川省都江堰市産)》
*第1回「はじめに」で述べたように、『中国のチョウ』からの転載(全て僕自身の観察)です。形質ごとのまとめから、種ごとのまとめに、文脈を入れ替え、学名と和名を併記しました(『中国のチョウ』では数字記号に変換)。外部生殖器各部分の簡単な説明は「はじめに」(*)を参照して下さい。また、その他の観察事例についても、原則として、語調の変更のみを行い、『中国のチョウ』記述文をそのまま引き写しました。注約を付した部分は文中に*印で示し、新たな観察については、末尾に『追記』として記述しました。

翅の色や斑紋などの外観は、中国大陸南部や台湾から東南アジア各地に広く分布するウラフチベニシジミHeliophorus (Heliophorus) ilaや、その近縁種のHeliophorus (Heliophorus) epiclesによく似ていて、通常同じHeliophorus属に含められますが、雄交尾器の形状差は顕著で、以下に述べるキンイロフチベニシジミHeliophorus brahmaやフカミドリフチベニシジミHeliophorus viridipunctata、さらにアオミドリフチベニシジミHeliophorus androclesともども、類縁的にはかなり離れて位置付けされるべきものと思われます。

しかし上記2種に対しても、valvaがきわめて横長なこと、juxtaの翼も前後に長いことなどの明確な差があり、一見したところ雄交尾器の概形は、むしろオオベニシジミLycaena(Rapsidia)disperやミヤマムラサキベニシジミLycaena(Rapsidia)standfussiに類似しています。また、vinculum背後縁が著しく突出し、鋭く尖った遊離板となり、この傾向に限っていえばアオミドリフチベニシジミHeliophorus androclesと共通します。

【全体の大きさとプロポーション】
●ミヤマムラサキベニシジミLycaena sutandfussiと並ぶ最大種。最小種のメスアカムラサキベニシジミHelleia tseng、シロオビムラサキベニシジミHelleia pang、オナガムラサキベニシジミHelleia liに比べて、juxta長で約3倍、valva長で約2倍の差があります。valvaやjuxtaが前後に長くスリムな点も、ミヤマムラサキベニシジミと共通します。

【Saccusの発達度】
●ウラフチベニシジミHeliophorus ilaのように著しく長くはなりませんが、キンイロフチベニシジミHelleia brahma、フカミドリフチベニシジミHelleia viridipunctata共々、他の各種に比べればやや長めです。

【Sociusの形状】
●基部が太く後半が内側に湾曲して先端が鋭く尖り、対で「クワガタ」状になります(キンイロフチベニシジミHeliophorus brahma、フカミドリフチベニシジミHeliophorus viridipunctataと共通、ただし2種に比べ対の幅が狭い)。

【Falxの発達程度】
●ベニシジミ族としては平均的(著しく細長いウラフチベニシジミHeliophorus ilaを別格とすると、オナガムラサキベニシジミHelleia li が最もよく発達、メスアカムラサキベニシジミHelleia tsengが最も発達が悪い)。

【Vinculum背後縁の張り出し】
●アオミドリフチベニシジミHeliophorus androclesとともに、大型の突起状を成します(シロオビムラサキベニシジミHelleia pang、キンイロフチベニシジミHeliophorus brahma、フカミドリフチベニシジミHeliophorus viridipunctataも顕著に張り出しますが、突起状にはなりません)。

【Valvaのプロポーション】
●前後長が長く、幅の5~6倍、扁平で後方が細まったのち後縁が広がります。ミヤマムラサキベニシジミLycaena standfussiに似ていますが、後縁は丸みをおびて微細な粒状突起を伴います。

【Costaの発達程度と、Juxta側翼との連接状況】
●広く扁平な板状遊離突起となり、屈曲し強く張り出したjuxta側翼と連接します(キンイロフチベニシジミHeliophorus brahma、フカミドリフチベニシジミHeliophorus.viridi-puncutataと異なり、costa上方のvalva背基縁は2分しません)。

【Juxta両翼面の角度】
●ミヤマムラサキベニシジミLycaena standfussi、キンイロフチベニシジミHeliophorus brahma、フカミドリフチベニシジミHeliophorus viridipunctata共々、ほぼ90度(ベニシジミLycaena phlaeasでは、きわめて急、その他の種はごくゆるやか)。

【Juxtaの翼の形状】
●主翼が前後に極めて長く、左右の幅の約2倍、valva長の約4/5、大きさや概形はミヤマムラサキベニシジミLycaena standfussiと似ていますが、主翼先端はさらに鋭く突出し、下翼は袖状に発達せず、袋状部分がごく狭いことが相違点です。

【Juxtaの腰からsaddleにかけての状況】
●キンイロフチベニシジミHeliophorus brahma、フカミドリフチベニシジミHeliophorus viridipunctata共々、腰の位置が低く、翼面はvalva内面に近づき、腰からsaddleにかけての部分は一様に幅の広い面状となります。

【Phallusの形状】
●ベニシジミ族の一般形。種ごとにいくらかづつの差はありますが、著しい特徴を示すシロオビムラサキベニシジミHelleia pangとウラフチベニシジミHeliophorus ilaを除く各種とは、ほぼ共通します。


   

     



サファイアフチベニシジミ Heliophorus saphir [♂翅表]
(全て別個体)
1段目中:春型♂:四川省都江堰市青城山山麓(標高約800m) 1989.4.15
1段目右:春型♂:四川省都江堰市青城山山麓(標高約800m) 1989.4.16
1段目左:春型♂:四川省都江堰市青城山山麓(標高約800m) 1989.4.16
2段目左:春型♂:浙江省臨安県西天目山山麓(標高約200m) 2005.4.7
2段目中:春型♂:四川省都江堰市青城山山麓(標高約800m) 1989.4.13
2段目右:春型♂:四川省都江堰市青城山山麓(標高約800m) 1989.4.13
3段目左:夏型♂:四川省都江堰市青城山山麓(標高約800m) 1989.7.9
3段目中:夏型♂:四川省宝興県東拉渓谷(標高約1800m) 2010.8.9
3段目右:夏型♂:四川省磨西県市東ミニャコンカ山麓(標高約1700m) 2009.7.1
   

   

   


サファイアフチベニシジミ Heliophorus saphir [♀翅表と♂♀翅裏]
(全て別個体)
1段目左:春型♀:四川省都江堰市青城山山麓(標高約800m) 1989.4.14
1段目中:春型♀:四川省都江堰市青城山山麓(標高約800m) 1990.4.8
1段目右:春型♂裏面:四川省都江堰市青城山山麓(標高約800m) 1989.4.15
2段目左:夏型♀:四川省都江堰市青城山山麓(標高約800m) 1989.6.9
2段目中:夏型♀:四川省都江堰市青城山山麓(標高約800m) 1989.6.19
2段目右:春型♂裏面:四川省都江堰市青城山山麓(標高約800m) 1989.4.15
3段目左:夏型裏面(交尾):四川省都江堰市青城山山麓(標高約800m) 1989.8.1
3段目中:夏型♀(産卵):四川省都江堰市玉塁山(標高約800m) 1991.8.7
3段目右:夏型♂裏面:四川省宝興県東拉渓谷(標高約1800m) 2010.8.9

《サファイアフチベニシジミHeliophorus saphirの分布と生態について》

四川省成都市西郊の青城山周辺には最も普通な蝶のひとつで、ここでは日本のベニシジミLycaena(Lycaena)phlaeasに代わる生態的位置を占めているように思えます。長江流域に沿って東西に広く分布し、成都から東へ2000km程離れた浙江省の杭州市近郊でも本種を撮影しています(1989年4月15日、西天目山山麓Alt.400m)が、青城山周辺以外の成都市近郊をはじめ、重慶市近郊、西安市近郊などでは未見出、多産する地域は限られているものと思われます。なお青城山周辺で見られるベニシジミ族は本種のみで、逆に多数のベニシジミ族の種が混棲する雲南省北部などでは本種を確認していません。

雄の翅表は金属光沢のある青緑色、雌は褐色の地に赤紋を有し、その姿は一見ミドリシジミ類を思わせます。しかし、彼らのように樹上性ではなく、林縁や渓流沿い、路傍などに生える草本や低木上によく見られます。雄の占有性は顕著で、翅を水平に開いて葉上に静止し、別の雄が近づくとすぐに飛び立ってこれを追い激しくもつれあいますが、一部の高等ゼフィルスに見るような明瞭な卍どもえ飛翔をなすまでには至りません。飛翔時は一斉に数頭~10数頭がもつれあい、追飛を行わないときは数mおきにほぼ等間隔の距離を保って、いくつもの個体が葉上で翅を平開したまま静止しています(ひとつの畑の周囲に多い時は20頭を超え、その中にはごく新鮮な個体から、かなり汚損が進んだ個体まで混在しています)。春・夏とも、追飛行動は日中の短時間(主にPM2:00~3:00頃の一時間弱)に限られていて、その活動時間帯の中で、雄が一斉に飛び立って行う目まぐるしい追飛翔と、平開姿勢をとっての静止を繰り返します。

雄は吸水性も顕著で、主に晴れた日の午前中、上記の畑のすぐ下を流れる渓流の、岩と岩にはさまれた砂地(地元の住民が料理の準備や洗濯の場として利用している)に、マドタテハDilipa fenestra、チュウゴクコムラサキApatura here、キマダラサカハチチョウAraschnia doris、ヒメフタオチョウPoliura narcaea、シロヘリスミナガシStibociona nicea、カバタテハモドキPseudergolis wedah、タイワンホシミスジLimenitis sulpitia、アカキマダラヒカゲNeope bremeri bremeri、ムラサキヒメキマダラヒカゲZophoessa violaceopicta、ウスアオヤマキチョウGonepteryx amintha amintha、マルバネエグリキチョウDercas wallichii、チュウゴクスジグロチョウPieris napi mandarina、クジャクカラスアゲハPapilio bianor、ルリモンアゲハP.paris、タイワンタイマイGraphium cloanthus、ユウマダラセセリAbraximorpha davidii、ムモンマエルリシジミOrthomiella sinensis、オオスギタニルリシジミCelastrina sugitanii lenzeni、ルリシジミC.argiolus、タッパンルリシジミUdara dilecuta、などとともに訪れ、ときにはサファイアフチベニシジミだけで10頭近い吸水集団を形成することもあります。岩上の鳥の糞で吸汁していることも多く、また、雌雄ともに訪花性も顕著で、路傍に咲くキツネアザミには、フィールドベニモンキチョウColias fieldiiとともに好んで訪れ(‘89年6月11日の観察では午後7:00頃まで吸蜜行動が見られた)、ナノハナやキイチゴ属Rubusの花でも吸蜜中の個体をよく見かけます。

雌は、雄とは平時の活動空間を異にするものと思われ、雄が占有中の畑の縁を緩やかに飛翔していたり、稀に吸水集団の中に混じっていたりしますが、一般には雄とは離れて単独でいることが多いようです。産卵は1991年8月6日AM11:30頃、雄の多い比較的明るい渓流沿いや畑の周辺とは著しく異なった環境の、イナズマオオムラサキSasakia funebrisの多産する玉塁山山頂付近の鬱閉した林内で観察しています。尾根上に近い石段の縁に横倒しに生える茎高10cmほどの半藤木性タデ科植物の周囲を、腹を曲げたまま歩き回り、葉縁に2卵を産付しました。交尾は89年8月1日PM5:30頃、青城山山麓の集落に近い路傍の草上で撮影しています。

第1化成虫は4月(上~中旬にきわめて多く、3月後半に出現)、第2化は6月(5月後半に出現)がピークで、7~8月に見られる個体は第3化に相当するものと思われますが、第2化以後の出現にはばらつきが予想され、正確なところは解りません。第1化(春型)と第2化以後(夏型)では、翅型や斑紋に顕著な差を示し、かつては互いに別種とされていたこともあります。春型は尾状突起が短く、後翅裏面外縁沿いの赤色帯の上に白色鱗が塗ぶしたように重なる傾向を示し、雄の翅表は金属光沢青色部が外縁を除く翅全面に広がり、雌翅表の赤色紋も大きい、といった特徴があります。夏型は後翅に明瞭な尾状突起を有し、後翅裏面外縁は鮮赤色で、雄翅表は外縁の黒帯が発達して(ことに翅頂部は黒色帯が著しく広がる)金属光沢青色部が狭く、雌翅表の赤色班もやや小さいことなどが特徴です。ただし、春型と夏型は明確に入れ代るのではなく、5~6月頃にはどちらの型とも判断し難い移行的な形質をもつ個体も、少なからず見出されます。これらの傾向は、日本産ベニシジミの季節変異のパターンと軌を一にするといって良いでしょう。秋期の状況は未確認ですが、晩夏から秋にかけてさらに数回出現するものと思われ、日本のベニシジミ同様に、晩秋の最終世代が春と同じタイプに戻るのかも知れません。




 





↑1989年から1991年にかけて毎日のように訪れていた青城山山麓の小渓流。この周辺だけで50種近い蝶を撮影したと思います。1995年に再訪した時には、新築のホテルに続くアスファルト道路が作られ、跡形も無くなってしまっていました。下の写真左上に見えるのは、黄花のヒガンバナ属野生種。








↑山麓の小渓流に吸水に来た春型♂(上の写真左はタテハチョウ科コムラサキ属のマドタテハ) 四川省都江堰市青城山1989.4.16







↑キイチゴの仲間の花で吸蜜中の春型♂ 四川省都江堰市青城山1989.4.16






↑葉上で占有姿勢をとる春型♂ 四川省都江堰市青城山1989.4.16


 





↑春型♂ 翅表の金属青色鱗の面積が広く、後翅後縁の朱色帯が発達し、尾状突起は短い。四川省都江堰市青城山1989.4.14-15 









↑春型の翅裏面 後翅裏面外縁の朱班は白色鱗で塗されています。近縁3種(フカミドリフチベニシジミ、キンイロフチベニシジミ、アオミドリフチベニシジミ)と異なり、黒条はほとんど発達しません。四川省都江堰市青城山1989.4.15









↑春型♀ 夏型に比べ前翅表の朱色班がより大きく現れます。朱色班の概形は、単調な楕円型のフカミドリフチベニシジミに比べ、外側に膨らみやや内側に膨らむ傾向があるようです。写真上の個体のように、基半部に♂と同じ青色金属光沢鱗が僅かに出現することもあります。四川省都江堰市青城山(上)1989.4.14(下)1990.4.8







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2006.11.6 屋久島モッチョム岳 アズキヒメリンドウ 3

2011-03-17 11:23:15 | 屋久島 奄美 沖縄 八重山 その他





(第3回)アズキヒメリンドウ ①




急坂を登り始めてしばらくするとアズキヒメリンドウが現れます。












でも道脇の崖っぷちに下を向いて咲いているものですから、撮影は至難の業です。







こんな風に三脚を横に寝かせてカメラをくっつけたり、、、







崖の縁ぎりぎりまで後ずさりしてアングルを狙ったりと、苦心を重ねねばなりません。







「屋久島にも沖縄と同じ明るい薄緑の花が咲いてる」との指摘もありますが、花の裏側を上から見て、“淡緑色の花”と間違えたのではないでしょうか?











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