
手塩にかけて育てたうさぎが、毛皮買いの商人に引き裂かれるのを、まのあたりに
した少女のうさぎへの思いを、幻想的につづる・・・

「銀のうさぎ」の巻頭の解説文はこう記してある。
※ 「銀のうさぎ」新日本少年少女の文学 23 収録作品
(著者・・・最上一平 ・山形県朝日町出身・児童文学家)
昨日、大江町の「日本一公園」の後、その先の隣町,朝日町宮宿に行った。
以前からこの本の舞台となっている真冬の「暖日山」・・(ぬくい山)の写真を撮りたいと思っていた。
2月、平野部は晴れていても、ここまで山奥に来ると滅多に山が晴れていることは
ない。

ブックカバーの絵を拡大。
なんと幻想的な絵だろうか。
この絵の場面は、「何でも屋」に殺されたうさぎが、主人公千草の前で「銀のうさ
ぎ」となり長い耳をずっと後ろまで伸ばし、後ろ足で蹴って、大空を駆け、はるか
かなたの竜門山のみんなの集まっているうさぎの極楽へ帰るという幻想的な場面の
絵だ。
しかし、この物語は、大人の私でさえ本当に悲しく、せつなく思える物語だ。

この写真が物語の「暖日山」だ。
ブックカバーの絵とまさに同じような光景が拡がっていた。
東京オリンピックの頃(1964年・昭和39年)の、今から40年も前の東北の貧しい山村の、どこにでもあったような話。

あらすじを本文から抜粋。
「うさぎさむくなえが」・・・・・・・・
「かんべんなあ、今日もカボチャだ。春になったら、いっぱいはこべ食べさせてやっからがまんしろな」
・・・・・・・・・・・・・・・・・じいちゃんが千草を呼んだ。
「ひとず、うさぎば売っからな」
「何でも屋」はうさぎを買いに来たのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(中略)
なんでも屋が片手にナイフをつかんだ。・・・・・・・(中略)
千草はこぶしをつくった。
親うさぎはブルッブルッともがいた。
つぎの瞬間、うさぎは、キィッとキジのように鳴いて足をばたつかせた。
・・・・・・・・・
千草は毛皮のなくなったうさぎを見てゾッとした。
・・・・・・(かんべんよ。かんべんよ・・・・)・・・・・・
・・・又どこかで起こった風にあおられたのだろうか。銀のうさぎはピヨーンとひとつ、跳ねたように横に飛んで、暖日山の下の田んぼに上がった。それから思いきり前足を伸ばし、後ろ足で蹴った。蹴ったところから粉雪が小さなうずになって舞い上がる。体は弓のようにやわらかくしなって、空に飛んだかかと思われるほど高くのぼった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
晩にいろりでは、うさぎの肉が大きななべで煮られた。
じいちゃんがその前でキセルをくわえながら、しょう油や酒を入れてあんばいをしていた。
・・・・・・・・「じいちゃんはなんともないのがあ。今までおがしてきたうさぎば殺して」
・・・・・・・・・
じいちゃんは・・・・・
「だいじょうぶだ。銀のうさぎはな、・・・・そしてな、竜門さんの、うさぎのいっぱいいる極楽みたいなところに帰るのよ。・・・・・」
・・・・・銀のうさぎはやって来たのだ。・・・・・
読み終えれた後・・・・児童文学小説ではあっても・・・悲しさが溢れてきます。


この写真の山は・・・こんな悲しい物語の舞台となっていた。
その後まもなく、吹雪で、暖日山は雲に覆われ姿を消してしまった。
私もセルフタイマーでパチリと・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・end