恩師のご著書「講演集」より
講演集、三
癌を克服し、悟って死を迎えた方の話
先の続き・・・
その頃、私の商売の同業仲間の方が病気になられたのです。
私と同年輩ですから、当時四十半ばの方です。
最初、Fさんという織屋さんが私に頼みにこられました。
「長尾さん、Sちゃんの足、えらいことになってるんやで。
象の足のように腫れて。あれを細うしてやって貰えないか」と。
それで、「変わった病気ですな。
治るか治らんか分からないけど行ってみようか」
と言って、行ったのです。
すると足は腫れ、睾丸がまるで提灯のようになっているのです。
その為、足が重くて歩くこともできないありさまです。
癌の末期で、もう亡くなる直前だったのですね。
有難いことに、足はお祈りさせてもらいますと、見る見る細くなってきました。
もっと傑作なのは、大きく腫れた睾丸のことです。
「えらいことになったなあ」と言ったのですが、
パンツも穿けなくて腰巻をされていましたのを、
「一回見せてえ」と言って睾丸を見ますと、もうごっつい
ごっつい提灯のようです。
それに手を当ててお祈りしていましたら、風船の空気を抜くようにシューと
凋んでしまったのです。
さあ、喜んでいただきましてね。
その方の喜びはもちろん、奥さんから家族の方達皆がびっくりなさいまして、
えらい不思議なことがあるものだなあと言って喜ばれ、ご本人は立ち上がって、
「もう歩ける」と言って、歩いてくれたのですね。
しかしお顔を見せてもらうと、もう相当弱っておられます。
「今、肉体は救われましたけど、心が苦しんでおられますと、
又肉体にも苦しみが起きてきます。
ですから、心と肉体と共に救われてもらわねばなりません。
どうか心が救われて下さい」と言いますと、
「心が救われるには、どうしたらいいのですか」と、質問されました。
やはり、この方はご縁が深かったのですね。
その頃、私は「教え」にご縁を頂いてからまだ半年も経っていなかったので、
私自身反省もできていませんし、正しい教えについての理解も浅かったのです。
しかし、反省の仕方は教わっていましたので、習いたてのホヤホヤの私が、
「心を救われるには、腹を立ててはならない、愚痴を言わない、
人を悪く思ってはならない、憎しみとか恨みとかそういう思いを持ってはならない。
又、苦しみの原因になると思っていなかった中に、要らない取越し苦労をしたり、
不要の恐怖に自分の心をゆだねるということがあります。
これらは、全部苦しみの原因になっていますから、そういう思いがあれば、
私たちの心が病気をしてしまいます。
これを持たないように頑張って下さい」と、そのように話しますと、側から
奥さんが「まあ、うちのお父ちゃんはみんな持っています」と、おっしゃるのですね。
それで、「いえいえ、私も全部持っております。
人間として生まれたら全部持っている思いです。
しかしそれを持つことによって、人間は苦しみの中にもだえます」と言いますと、
うちのお父ちゃんは特別に強いとおっしゃいます。
~ 感謝・合掌 ~