恩師のご著書「講演集」より
講演集、 三
癌を克服し、悟って死を迎えた方の話
先の続き・・・
ちょうど同じ時期に、同業者の一人が癌で亡くなられたのですが、
この方は又とてもひどい苦しみようで息を引き取られたのですね。
「同じ癌といっても、こんなに違うのかなあ、あのSちゃんにはかなわん、
あいつ、さよならと言うて死によった」と、しばらくの間は、近所で評判だったそうです。
「さよなら、これでお別れやで」と、にっこり笑って、あの世に帰られたのです。
死後、八時間ぐらい経って、身体が硬くなるといけないので、着物を着せ替え
させようとしますと、身体が少しも冷たくなっていなかったそうです。
生きている人と全く変わらず、ふっと起こして着せ替えさせて、
その晩は布団に寝かせてお通夜をし、二日目は納棺してお通夜をなさったのですね。
子供さんが夜通し、お父ちゃんは起きているのと違うかと言って、
棺桶を開けにいったということです。
交替で子供さんが見にいき、「やっぱり死んではるわ」。
すると、又別の子供さんが見に行くということで、
亡くなられて三日間は全く冷たくならなかったそうです。
もちろん、死後硬直は一切おきません。
そのお顔の安らかなことは、たとえようもないほどの美しさだったそうです。
お葬式が終わって、お骨あげにいきました時、火葬場の係りの方が、「この
人は一体どこが悪かったのですか、交通事故だったのですか」と、聞かれたそうです。
実は全身癌でしたと言いますと、「そんなことはない、わしらは骨を見たら、
どこが悪かったかは全部分かる」と言ったそうです。
まあプロですね。
病気をして悪かったところの骨は色がついて変色するそうです。
その方はどこも悪いところが無くて、
頭の先から足くびまで白くて綺麗なお骨だったということです。
私はこういうことを聞かせていただいて思いました。
何も知らない私が、教えてもらった通りをお伝えして、
私自身何もできておりませんのに、聞いて下さった方がそれを真剣に行じ、
教えの通りにしてもらった時、その方は悟られました。
お伝えした私は何も分からないのです。
よく話を聞かせてもらいますと、「この『心行』を読ませてもらうと、
涙が止まらなくなります」と言われるのですが、
私はちっとも涙など出ないという状態の時に話させてもらって、
それを聞いた方が真剣に命がけで反省に取り組んで下さったのですね。
その方は悟られました。
~ 感謝・合掌 ~