恩師のご著書「講演集」より
講演集、 三
「振り返ってはならない」
この世を去る時、
「振り返ってはならない」ということについて、
これは聖書を三十年来勉強されている方が、
聖書の中に書いてあるとおっしゃています。
私は聖書を知りませんが、
旧約聖書のソドムとゴモラの話の中にちゃんと書かれてあるそうです。
昔、物質文明の栄えた都があまりにも退廃して、
この都を地上に残しても人の為にならないから、
これは滅ぼしてしまわねばならないと判断された神が、
都を沈めてしまうことをお命じになったのです。
すると、ロトという方が「何とか、せめて五十人心正しい方があったら、
どうか都を助けてほしい」と申し出ました。
神様が、「それでは助けましょう」ということになったのですが、
「心正しき人が三十人でも助けていただけますか」と、さらに神にお願いしますと、
「三十人でも都を滅ぼさないでおきましょう」と言われましたので、「では、
十人でも助けて下さいますか」と改めてお願いして神様から許可をもらったロトは、
十人の心正しき人を探しに、その都へ一族を連れて旅をされたのです。
ところが、正しい話をしますと、人々は皆馬鹿にして、
もう退廃の限りを尽くした生活をしており、
どこにも一人として心正しい方がいなかったのです。
そこで、ロトが神様に、「あの都には心正しき方は一人もおりませんでした」
と報告しますと、神様は「一族を連れて一刻も早くこの場所から立ち去りなさい。
どのようなことが起きても振り返ってはならない。
一時も早く立ち去りなさい」と言われたのです。
ロトはその通りにして都から離れ、丘を越えて遠退(とおの)いていかれたのですね。
丘の上まで来ますと、後ろのほうで大音響、阿鼻叫喚が起こりました。
しかし、神様から言われているから、一目散に逃げましたが、
その時、ロトの奥さんがふっと振り返られたのです。
すると、そのまま、塩の柱となって、その場所に固まってしまいました。
その塩の柱が溶けて陥没した所に流れたのが今の死海だ、と書かれてあるそうです。
「振り返ってはならない」は、聖書の表面的な文章をもって綴られていますが、
その奥底で何を説いておられるのかと言いますと、私たちが、あの神様の
御胸の中に帰らせてもらう時、絶対にこの世を振り返ってはならない、
振り返ると、その場所に心が留まってしまう、その譬えとして、
聖書に塩の柱の話しが書かれているのです。
この肉体を去りますと、私たちは「思いだけの世界」に入ります。
「思いの世界」は、自分が思えばその場所に意識が行くようになっているのです。
死んでお墓とかお仏壇に入ってはいけません。
そこへ入ると思っておれば入るのです。
「そんなこと言っても、死んだら終いだ、そんなことはあるはずがない」と
思っておりましても、
現実にはお仏壇やお墓の中に入っていられる方は、いっぱいあります。
~ 感謝・合掌 ~