恩師のご著書「講演集」より
講演集、 三
癌を克服し、悟って死を迎えた方の話
先の続き・・・
それはどういうことかと聞かせてもらいますと、
そのご主人の家は、幼い頃、T町指折りの財産家で、
お父さんは町長もしておられたのです。
ところが、幼い頃にお父さんが亡くなられました。
道路をはさんで向かい側にお父さんの弟さんに当たる
叔父さんがやはり大きい家に住んでいて、Sちゃんの家、
つまり本家の財産管理をされたのです。
そのご主人は幼い頃から叔父さんの家の織屋の下働きをして
大きくなったのですね。
ところが、つい身内の者だから、人使いも荒く、
ひどい目に遭ったそうです。
その上、財産管理をなさった叔父さんがつぎつぎとSちゃんの家の
財産を売っていかれるのです。
本来なら、Sちゃんが引き継ぐ財産ですね。
それを叔父さんが勝手に売って栄耀栄華な暮らしをするものですから、
Sちゃんにしたら、その都度、腹が立って腹が立って、
叔父さんを憎み、「死んでも、わしは恨んでやる、
恨みを晴らさない限りは死んでも死にきれない」と、
ずっとおっしゃっていたそうです。
無理もありません。
自分の財産を人が売って、それを好き放題に使うのですから、
誰でも腹が立ちます。
ときによると、もう夜も寝ないで恨み、憎しみ、
お腹に固い塊ができてとれなかったと言われましたね。
それが癌になってしまったのです。
私との縁ができる二年前に胃癌の手術をされたのですが、
夜もよう寝ないで叔父さんを憎み、恨み骨髄に徹していられたわけです。
私にも一度だけ経験があります。
ああ、憎らしいなあとすごく憎みますと、胃のあたりに塊ができて、
それは痛かったです。
そんな思いを常に繰返しておりましたから、その方は癌になってしまわれて、
手術をなさいました。
私とご縁があった時は、もう全身に転移していました。
私は、習いたてのホヤホヤの正法をその方にお伝えしたわけです。
~ 感謝・合掌 ~