恩師のご著書「講演集」より
講演集、 三
自分の為に相手を「許させていただく」
先の続き・・・
以前、この話をさせてもらいました時、
或る六十代の女の方が言われたのです。
ご主人がもう好き放題で、ギャンブルはするわ、
女道楽はするわ、酒は飲むわ、好き勝手のやり放題で、
大きな借金を残して、他の女性の家でぽこっつと死なれたのです。
その奥さんは、苦労して残された二人の子供を育てて二十五年過ぎた今、
まだ借金を払い終わらないそうです。
子供さんはちゃんと片付いて、今は一人で住んでおられます。
ところが、普段は忘れているのですが、食事を頂いている時、
そのほっとした時に、ご主人のことを思い出してきたら、
もうこの心の持っていきどころがなくなるそうです。
さあ、ご飯をいただいている時、お茶碗の御飯が入っていても、
お汁が入っていても、とにかくぶっつけて叩き割らないと、
この心がおさまらない。
もう、死んで二十五年も経っている主人に対してです。
その人が、「よう分かりました。ほんとうに許させてもらうということは、
自分の思いだということが良く分かりました。
憎む相手はもうこの世におらないのですね。
もう、今日からは心から許させていただきます」と、懺悔されました。
許させていただくのですね。
またある方は、ご主人が会社の部長さんで、
そのご主人が九州のほうに単身赴任なさっていた時に、女の方ができたのです。
飲み屋の女の方だそうです。
そして、その人との間に子供ができて、それがばれてしまったのです。
さあそれから、奥さんは堪らないのですね。
それで、私の所にご縁があって来ていただいたのです。
「一度聞いて下さい。主人は絶対許せません。外に子供まで作っていました」と。
それは、ショックが大きいと思います。
しかし、その許せないという心の為に、可哀そうにご主人は、
もう悔い改めているのに、奥さんから許してもらえないのです。
家に帰っても、自分で鍵を開けないと、家に入れない。
普通なら「ああ、お帰りなさい」「ああ、ご苦労さま」と、
奥さんに迎えてもらうところです。
~ 感謝・合掌 ~