浄心庵・長尾弘先生「垂訓」

恩師の歌集「愛」より

肉体の限度にいどみ人救う
愛の行い我が内の神

「垂訓」

2023-06-13 03:12:02 | 浄心庵 長尾弘先生垂訓

    恩師のご著書「講演集」より


              講演集、三

          子供は親に目覚めを導く

今から十三年前、私の家内がくも膜下出血で突然亡くなったのです。
或る日、突然、子供二人を残して亡くなってしまいました。
その時、下の子は中学三年生、上の子は高校三年生でした。
まあ、子供たちにしてみたら、突然、母親を失ってしまいまして、
上の子はまあよかったのですが、
下の子は中学三年で一番心の揺れやすい年ごろであり、
不安定な日が続いたのです。

ちょうどあくる年は、上の子が大学入試、
下の子は高校入学という時期でした。
下の子はさびしいものですから、つい友達の所に遊びに行き、
そしてだんだんと、夜、帰ってくるのが遅くなる、
そういうことが続いているうちに、夜、帰ってこなくなりました。
家内がいてくれましたら、
「お前、留守番していてくれ、わしが探してくる」とか、
或いは「お前のしつけが悪いから、こんなことになったのだ」とか言って、
喧嘩もできるのですが、一人ぼっちになってしまいますと、
喧嘩をする相手もいないのです。

そうしているうちに、上の子は大学に合格して、寮に入ったのですね。
ですから、今度は下の子と二人です。
夜、十時になっても十二時になっても、帰ってきてくれないのです。
その時、十時になっても十一時になっても十二時になっても、
帰ってきてくれないのです。
その時の辛いことは、言葉では表しようがありません。
ほんとうに自分自身に与えられる苦しみであれば、
自分が耐えたらいいのですけど、
子供を通して与えてもらう苦しみは、子供が立ち直ってくれなければ、
それはどうすることもできないのですね。


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