恩師のご著書「講演集」より
講演集、三
子供は親に目覚めを導く
先の続き・・・
しかし、そういう心境になれるまでは、
自分の心はほんとうに鬼でした。
今思っても、鬼か気違いのような私だったと思います。
ちょうど、二月の凍りつくような寒い夜空に、
冷たいお月様が冴えわたっているのです。
もう家にいても、じっとしていられず、
居ても立ってもいられなくなって、
どこへ行ったか分からないけど、
電車に乗って帰ってくるかも分からないと思って、
駅へ迎えに行ったのですね。
私は三十歳から、
地域の役をいろいろさせてもらっていましたから、
顔が案外広かったのです。
駅の辺りで私の顔を見ましたら、「長尾さん、こんばんは」と、
挨拶して下さる方があるぐらい顔が広かったのです。
あの頃は、青少年指導員などをしておりまして、
夏休みになると、非行が多くなりますから、
学校の先生と指導員とが連絡をとって、
暗い所で悪いことをしていないか、
監視に回っていました。
私は自分の子供をつかまえるのではないかと、
ヒヤヒヤしてながら巡回していました。
「泥棒捕えてみれば我が子なり」ということになっては、
格好がつかないですね。