その場考学研究所 メタエンジニアの眼シリーズ(40)
TITLE: AIが神になる日 KMB3361
書籍名;「AIが神になる日」[2017]
著者;松本徹三 発行所;SBクリアイティブ
発行日;2017.7.21
初回作成年月日;H29.7.14 最終改定日;H29.7.26
引用先;文化の文明化のプロセス Inplementing
このシリーズはメタエンジニアリングで「文化の文明化」を考える際に参考にした著作の紹介です。『 』内は引用部分です。
帯の宣伝文には、次の言葉がある。『シンギュラリティーに到達した究極のAIは、人類に何をもたらすか?今後のAIについて何かを語るとき、この本が提起する論点を無視しては語れなくなると思う。』
表題は、聊か大げさに見えるのだが、究極の人工頭脳が、古代から信じられてきた「神」の機能の多くを代替えすることになるという論理は、否定することは難しい。そして、その結果は全く新しい人類の文明の始まりになる。
「はじめに」には、次の言葉がある。
『AIが人間に代わって世界を支配しなければ、人類は必ず滅びる』
『究極のAIは、(中略)この世界での人類のあり方を根本的に変えます』
今世紀の人工頭脳は、「自立学習技術」と「クラウド技術」の進化によって、必ずテクノロジカル・シンギュラリティーに到達するであろう。
・AIは次々に天才を生み出す
『第一に、「あらゆる種類の膨大な量の情報がクラウドのメモリーの中に蓄積されて、それが日々増殖してゆく仕組み」ができつつあることであり、第二に、「それらの蓄積された情報を超高速で検索して、そこから一定の法則を仮説として導き出す推論能力」が確立されつつあることです。そして後者は、「次々にその仮説を多角的に検証して、採用・不採用を決める仕組み」を伴うことによって、次々に大きな技術革新を引き起こしていくことになるでしょう。』(pp.6)
・直観に頼らずあらゆる可能性を検証して、総合的に判断するAI
医者と弁護士が膨大な過去の情報量から的確な判断を下すことは、ますます難しくなり、AIの得意分野の一つになる、との説明の後で『ここまでは専門職の話ですが、政治、経済。ビジネスの分野での高度な仕事についても、当然同じことが言えます。「最適経済モデルの策定」や「民
意の最大公約数の把握」といった政治・経済の重要な課題も、AIにやってもらえば格段に質が上がり、かつ迅速にできます。(中略)
優れた政治家がいかに公正な判断をしたとしても、自分の欲求が満たされなかった人たちは「この決定は恣意的になされたもので、公正でない」と必ず抗議するでしょう。しかし、多くの実績を通じて、「AIは無私だ」という一般常識がもしその時点で確立されていたなら、「AIが最適と見なした政策」には、なんびとといえども異を唱えるのは難しくなるでしょう。
更に、現在多くの人たちが感じ始めているのは、「政治家は選挙に勝つためにポピュリズムに走り、長期的利益なんかには誰も目もくれなくなる」「結果として、民主主義体制下の人々は、間違った政治的選択をし続ける」ということではないでしょうか。』(pp.38)
このことについても「おそらくAIが唯一の解決策」と結論している。
・自己学習の対象は果てしなく広がる
『AIは人間と違って、疲れることも飽きることもなく、いったん記憶したものは決して忘れず、いつでも正確に参照しますから、どんな天才でも太刀打ちできなくなるのは当然です。』(pp.39)
著者は、農業と牧畜を第一の産業革命、一九世紀の機械化を第二の産業革命としているが、AIによる人間社会の革命は、産業革命の域を大幅に超えると思われる。人類の文明における革命になるのではないだろうか。
文字の発明や都市化は、常に部分最適を目指してきたが、AI革命は全体最適を目指すことが可能になる。部分最適と全体最適の選択肢から、何を選ぶかは人類にゆだねられるのだが、先の説明にある、「多くの実績を通じて、「AIは無私だ」という一般常識がもしその時点で確立されていたなら、「AIが最適と見なした政策」には、なんびとといえども異を唱えるのは難しくなるでしょう。」が、方向を示してくれるように思われる。
・「科学」が色々なことを解明しても、「宗教」はなくならなかった
一方で、「無神論の系譜」があり、宗教に批判的な人たちの色々な言葉が紹介されている。
(マハトマ・ガンジー、ジークムント・フロイト、マーク・トウエイン、バーナード・ショウ、アインシュタイン、ホーキンスなど)
古代宗教から、現代人が感がる「魂」などを広く語ったうえで、「宗教」はその創設者は哲学をしたが、宗教を信じることは哲学ではないと断言をしている。そして、ヒトにとっては「考えること」すなわち「哲学」が最も重要なことになるとしている。
・人間は科学技術の領域からはしだいに退出せざるを得なくなる
『しばらくの間は、AIのやるのは、せいぜい「いろいろな措置がもたらす結果を予測し、その良い点と悪い点をできる限り定数的に読み取って、最終決定者である人間にアドバイスする」程度でしょうが、生命科学全般の発展にはこれからのAIがますます重要な役割を果たすことに
なるのは間違いないでしょうから、早晩それだけでは済まなくなるでしょう。
そうなると、「種々の措置がもたらす副次的な効果の測定などは、もはやAIでなければ分からない」という事態が起こり、そのために「人間的な見地からの可否判断」までも、AIに任せざるを得なくなる可能性も出てきます。』(pp.177)
・人間に最後まで残る領域は「哲学」と「芸術」
・AIへの政権移譲に至る現実的な手順
理想的なかたちで民主主義を実現するには、次のようなステップがあるとしている。
『まずはAIを「顧問]として使い、最終的な決定は人間が行う形にするのが良いでしょう。そして、その「実績」と、それに基づく「人々の信頼のレベル」を慎重に見極めながら、徐々に人間の関与を薄めていって、究極の姿に近づけてゆくのがよいと思います。
「AIをフルに使って、まずは民意(現状に対する不満など)を汲み上げ、それから、さまざまな政策上の選択肢が持つ「長期的な利害」を検証し、分かりやすい形でそれを示すことによって大衆を啓蒙したうえで、再び民意を問い、それに基づいて政策を決定して実行する。』(pp.206)
TITLE: AIが神になる日 KMB3361
書籍名;「AIが神になる日」[2017]
著者;松本徹三 発行所;SBクリアイティブ
発行日;2017.7.21
初回作成年月日;H29.7.14 最終改定日;H29.7.26
引用先;文化の文明化のプロセス Inplementing
このシリーズはメタエンジニアリングで「文化の文明化」を考える際に参考にした著作の紹介です。『 』内は引用部分です。
帯の宣伝文には、次の言葉がある。『シンギュラリティーに到達した究極のAIは、人類に何をもたらすか?今後のAIについて何かを語るとき、この本が提起する論点を無視しては語れなくなると思う。』
表題は、聊か大げさに見えるのだが、究極の人工頭脳が、古代から信じられてきた「神」の機能の多くを代替えすることになるという論理は、否定することは難しい。そして、その結果は全く新しい人類の文明の始まりになる。
「はじめに」には、次の言葉がある。
『AIが人間に代わって世界を支配しなければ、人類は必ず滅びる』
『究極のAIは、(中略)この世界での人類のあり方を根本的に変えます』
今世紀の人工頭脳は、「自立学習技術」と「クラウド技術」の進化によって、必ずテクノロジカル・シンギュラリティーに到達するであろう。
・AIは次々に天才を生み出す
『第一に、「あらゆる種類の膨大な量の情報がクラウドのメモリーの中に蓄積されて、それが日々増殖してゆく仕組み」ができつつあることであり、第二に、「それらの蓄積された情報を超高速で検索して、そこから一定の法則を仮説として導き出す推論能力」が確立されつつあることです。そして後者は、「次々にその仮説を多角的に検証して、採用・不採用を決める仕組み」を伴うことによって、次々に大きな技術革新を引き起こしていくことになるでしょう。』(pp.6)
・直観に頼らずあらゆる可能性を検証して、総合的に判断するAI
医者と弁護士が膨大な過去の情報量から的確な判断を下すことは、ますます難しくなり、AIの得意分野の一つになる、との説明の後で『ここまでは専門職の話ですが、政治、経済。ビジネスの分野での高度な仕事についても、当然同じことが言えます。「最適経済モデルの策定」や「民
意の最大公約数の把握」といった政治・経済の重要な課題も、AIにやってもらえば格段に質が上がり、かつ迅速にできます。(中略)
優れた政治家がいかに公正な判断をしたとしても、自分の欲求が満たされなかった人たちは「この決定は恣意的になされたもので、公正でない」と必ず抗議するでしょう。しかし、多くの実績を通じて、「AIは無私だ」という一般常識がもしその時点で確立されていたなら、「AIが最適と見なした政策」には、なんびとといえども異を唱えるのは難しくなるでしょう。
更に、現在多くの人たちが感じ始めているのは、「政治家は選挙に勝つためにポピュリズムに走り、長期的利益なんかには誰も目もくれなくなる」「結果として、民主主義体制下の人々は、間違った政治的選択をし続ける」ということではないでしょうか。』(pp.38)
このことについても「おそらくAIが唯一の解決策」と結論している。
・自己学習の対象は果てしなく広がる
『AIは人間と違って、疲れることも飽きることもなく、いったん記憶したものは決して忘れず、いつでも正確に参照しますから、どんな天才でも太刀打ちできなくなるのは当然です。』(pp.39)
著者は、農業と牧畜を第一の産業革命、一九世紀の機械化を第二の産業革命としているが、AIによる人間社会の革命は、産業革命の域を大幅に超えると思われる。人類の文明における革命になるのではないだろうか。
文字の発明や都市化は、常に部分最適を目指してきたが、AI革命は全体最適を目指すことが可能になる。部分最適と全体最適の選択肢から、何を選ぶかは人類にゆだねられるのだが、先の説明にある、「多くの実績を通じて、「AIは無私だ」という一般常識がもしその時点で確立されていたなら、「AIが最適と見なした政策」には、なんびとといえども異を唱えるのは難しくなるでしょう。」が、方向を示してくれるように思われる。
・「科学」が色々なことを解明しても、「宗教」はなくならなかった
一方で、「無神論の系譜」があり、宗教に批判的な人たちの色々な言葉が紹介されている。
(マハトマ・ガンジー、ジークムント・フロイト、マーク・トウエイン、バーナード・ショウ、アインシュタイン、ホーキンスなど)
古代宗教から、現代人が感がる「魂」などを広く語ったうえで、「宗教」はその創設者は哲学をしたが、宗教を信じることは哲学ではないと断言をしている。そして、ヒトにとっては「考えること」すなわち「哲学」が最も重要なことになるとしている。
・人間は科学技術の領域からはしだいに退出せざるを得なくなる
『しばらくの間は、AIのやるのは、せいぜい「いろいろな措置がもたらす結果を予測し、その良い点と悪い点をできる限り定数的に読み取って、最終決定者である人間にアドバイスする」程度でしょうが、生命科学全般の発展にはこれからのAIがますます重要な役割を果たすことに
なるのは間違いないでしょうから、早晩それだけでは済まなくなるでしょう。
そうなると、「種々の措置がもたらす副次的な効果の測定などは、もはやAIでなければ分からない」という事態が起こり、そのために「人間的な見地からの可否判断」までも、AIに任せざるを得なくなる可能性も出てきます。』(pp.177)
・人間に最後まで残る領域は「哲学」と「芸術」
・AIへの政権移譲に至る現実的な手順
理想的なかたちで民主主義を実現するには、次のようなステップがあるとしている。
『まずはAIを「顧問]として使い、最終的な決定は人間が行う形にするのが良いでしょう。そして、その「実績」と、それに基づく「人々の信頼のレベル」を慎重に見極めながら、徐々に人間の関与を薄めていって、究極の姿に近づけてゆくのがよいと思います。
「AIをフルに使って、まずは民意(現状に対する不満など)を汲み上げ、それから、さまざまな政策上の選択肢が持つ「長期的な利害」を検証し、分かりやすい形でそれを示すことによって大衆を啓蒙したうえで、再び民意を問い、それに基づいて政策を決定して実行する。』(pp.206)