生涯いちエンジニアを目指して、ついに半老人になってしまいました。

その場考学研究所:ボーイング777のエンジンの国際開発のチーフエンジニアの眼をとおして技術のあり方の疑問を解きます

その場考学研究所 メタエンジニアの眼シリーズ(135)

2019年10月02日 07時25分11秒 | メタエンジニアの眼
「アマゾンのスピード仕事術」 [2018] 

著者;佐藤将之 発行所;KADOKAWA
発行日;2018.9.29
初回作成日;R1.10.1 最終改定日;R1.

このシリーズは企業の進化プロセスを考える際に参考にした著作の紹介です。           
『』内は,著書からの引用部分です。



前出(KMB4132)「アマゾンをつくった仕事術」に遅れること4年、この間にアマゾンの地位は確定した。その仕事術については、さらに明確にその特徴を語っている。

 アマゾンは、配送特典としての「アマゾンプライム」を長年続けたが、更に「速さは不可能を可能にるる」として、大都市圏での「注文した商品が最短1時間で届く」サービスを可能にした。さらに、注文方法も、「アマゾンダッシュスボタン」と称して、ワンクリックで注文可能にした、とある。(pp.2)

 アマゾンジャパンの社長の言葉としては、次のことが象徴している。
 『アマゾンは走らせながら修理して、しかもチューンナップする会社』(pp.3)

唯一の目的は、「顧客満足度の向上」であり、そのための有効な手段の一つが「スピード」としている。
そのことは、次の記述でわかる。つまり、「スピード」という手段を決して目的化していない。
 『これは、裏を返せば、「アマゾンではお客様の満足度向上に帰結しない仕事や作業スピードアップは決して行わない」ということも意味しています。
「上司が締め切り前に提出すると喜ぶタイプだから、早めに企画書を出さなきゃ」「未完成でもいいから、先を越される前にリリースして、ライバル企業の出鼻をくじけ」「会社の通達だから、とにかく残業しないように仕事を終わらせよう」といったような、対象を取り違えたスピードアップ、本来の目的を見失ったスピードアップは、アマゾンでは絶対に求められることがありません。』(pp.7)

 そのために「リーダーシップ理論14か条」(Our Leadership Principles)を定めている。主な項目は以下。
・顧客へのこだわり(Customer obsession)
・創造と単純化(Invent and Simplify)
・学び、そして興味を持つ(Lean and Curious)
・広い視野で考える(Think Big)
・とにかく行動する(Bias for Action)
・より深く考える(Dive Deep)
このように並べると、メタエンジニアリング思考法との共通項が多々ある。

あらゆる部署で、「PDCA」を高速で廻すことは、トヨタと共通している。しかし、違いがある。「やってみないと分からない」として、何よりも早く「Doに進むこと」を重要視している。提案数ではなく、Doに進むことを重要視している。

・「ピザ二枚チーム」で会社を再編する。 
 あるアイデアに基づき社内の仕組みを導入する際には、この主義を貫抜く。
 『「ピザ2枚」とは、「ピザ2枚で全員のお腹を満たせる程度の人数」という意味です。実際の人数で例えるならば5~6人程度、多くても10人未満といったイメージです。
 一つのプロジェクトに係る人数が10人を超えると、必然的に「管理する人間(上長)ー実働する人間(部下)」というヒエラルキー型の編制になってしまいます。 上下関係ができてしまえば、何か問題が生じたときに部下は上司に判断を仰ぐことになります。上司が預かり、問題の対処について協議し部下に伝え、部下が行動する。それでうまくいかなければ、再び上司が預かり、・・・。「それでは圧倒的に遅すぎる、チームのメンバーがその場でジヤッジし、次の行動に移れなければ意味がない」とジェフは考えました。』(pp.221)

・「データウエアハウス」の共有
 昨日までの世界中のアマゾン全ての商品に関するあらゆるデータが全員で閲覧可能、とある。
これは、異常事態をすぐにデータとして感知できる仕組みで、これもトヨタ方式から発想されたように思える。トヨタでは、カンバンというアナログだったが、それがデジタルに置き換わったということのように思う。



メタエンジニアの眼シリーズ(134)「ジェフ・ペソス」

2019年10月01日 16時36分01秒 | メタエンジニアの眼
書籍名;「ジェフ・ペソス」 [2014] 
著者;桑原晃弥 発行所;講談社
発行日;2014.8.1
初回作成日;R1.10.1

このシリーズは企業の進化プロセスを考える際に参考にした著作の紹介です。         
『』内は,著書からの引用部分です。



副題は「アマゾンをつくった仕事術」で、彼のひととなりと強固な仕事術のセンスについて解説している。
彼は、直ちに起業することなく、入念に準備を進めた。トヨタ方式も十分に研究し、取り入れた。しかし、一旦スタートを切ると、その速さは、「サーキットで走りながらメインテナンスと改良をおこなう」と言われるほどのスピード重視の仕事術を実践した。目次に示された主な言葉は以下のとおり。

・目的は変えてはダメだが、計画は変えなければダメ。
・凡人は、一回失敗するともう諦める。天才は十回失敗してもまだ直せる。
・頭を働かせながら、手も動かすのが成功の条件。
・才能は人生の一部、選択が人生の全部。
・ものを売る前に物語をつくろう。
・ライバルを超えるより、顧客の期待を超えよう。

 ペソスは、起業にも長い時間や我慢強さが必要として「まずビジネスや世界の仕組みを勉強した方が良いと考えた」。さらに「人より早く着くには、人より長めに準備する」ともある。(pp.36)

このことは、巻末の年表から分かる。

・1964年誕生
・1976年 12歳のときにS.ジョブスがアップルを創業
・1986年 22歳でプリンストン大学を首席で卒業、ファイテルに就職
・1988年 24歳でバンカーズ・トラストに転職
・1990年 26歳でD・E・ショーに転職
・1995年 31歳でamazon.comを登記、半年後にサービス開始
とある。(pp.205)
 31歳で起業する前に、少なくとも3つの会社で経験を積んでいる。


「目的は変えてはダメだが、計画は変えなければダメ」についても、ペソスの言葉を引用している。
 『現実は計画通りにはいかない。でも,
計画を立てることで問題点をよく考えることができる。考え方や気持ちが整理され、気分もよくなってくるんだ。 ジェフ ・ ベゾス』(pp.53)
これにより、その言葉の意味を十分に理解することができる。
 まさに、「PDCA」を高速で廻すことなのだが、それには、「気づいたことや考えたことをしっかりとメモに残す習慣が、それを支える」とある。(pp.54)

・ビジネスは変化を前提に、ビジョンは不変を前提に決して変わることのないものを土台に戦略を打ち立てる。(pp.186)
 このことは当たり前に思えるのだが、実際の会社経営上は難しい。しかし、これを踏襲したのが、長寿企業の大部分に当てはまることは、自明になっている。