ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『奏鳴曲 北里と鴎外』『死刑にいたる病』

2024-04-22 16:17:31 | 
『奏鳴曲 北里と鴎外』 海堂尊 文藝春秋
 ドイツ留学を経て、ペスト菌を発見し、「日本の細菌学の父」の異名を持つ北里。一方の鷗外は、同時期にドイツで学び、帰国後、陸軍で最高位である軍医総監にまで上り詰めた。二人は、互いへのライバル心を燃やしながら、「感染症から国民の命を守る」という同じ目標へと突き進んでいた。その二人がなぜ道を違え、対立したのか。
 北里、鴎外の功績も失敗も描いている。鴎外は、こずるい奴。北里は清濁飲む豪快で一本気な感じだったが、晩年は?とにかく、恩師や派閥のしがらみ、政治家のパワーゲーム、内務省と文部省の対立と、すさまじい男の足の引っ張り合い。自分の保身に走る石黒は、恐ろしい。後藤新平がこの中では一番いい。でも、明治には、優秀な人が多かったんだな。名前がいっぱい出てきて、少し混乱した。
 脚気って、人が亡くなるような病気だったのだと知ってビックリ。日露戦争では、戦死者より脚気で亡くなった人のほうが多かったとか。鴎外や石黒が米食にこだわり陸軍兵を多く亡くしたのは、腹が立つ。(米を食べさせてやると兵を集めたらしい)
 難しい言葉がいっぱい出てきて読むのが大変だったが、その難しい言葉が明治の時代の雰囲気を表していた。
 表紙がいい。背を向けあう主人公二人の後ろにいる仏が二人の性格を物語っている。
 
『死刑にいたる病』 櫛木理宇 ハヤカワ文庫
 鬱屈した大学生活を送る雅也は、連続殺人犯の大和から冤罪の証明を頼まれる。戸惑いつつ調査する雅也が辿りついた驚愕の真実とは。
 怖い怖い。雅也は、調査するうちに、母親とシリアルキラーの大和に接点があることを知る。そこからは、えぇっという感じで怒涛の展開。だまされた~。
 雅也と灯里、二人の行く末が気になる。続編希望。
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『貸本屋おせん』『リラの花咲くけものみち』

2024-04-21 23:38:36 | 
『貸本屋おせん』  高瀬乃一 文藝春秋
  物語の舞台は、文化年間の江戸浅草。女手ひとつで貸本屋を営む〈おせん〉の奮闘を描く。読本をめぐって身にふりかかる事件の数々に立ち向かう〈おせん〉の話。
 軽いミステリ仕立てでサラリと読むことができる。ちょっと人情話もからむし。

『リラの花咲くけものみち』 藤岡陽子 光文社
 幼い頃に母を亡くし、父の再婚相手とうまっくいかず、不登校になった聡里。聡里は祖母に引き取られ、ペットと暮らすうちに獣医師を目指すように。北海道の獣医学大学へ進学し、寮生活が始まると不登校だった聡里は人との距離感に悩みつつも学業にアルバイトに奮闘する――北海道の地で、自らの人生を変えてゆく少女の姿を描く。
 よかった。聡里が、いろいろと悩みつつ成長していく姿がいい。彼女の幸せを祈りつつ、応援していた。
 章の題に花の名前が入っているのもいい。
 馬の死産の話にはビックリした。命についてきれいごとでは済まされない話を真正面からとらえた作家もいい。
 「絶対にしなくてはいけないことなんて、この世の中には一つもない。できないならできないと素直に告げて、自分のできることをすればいい」という先輩の言葉が響いた。「いま辛いことから逃げたとしても時間を経て変わることはできる。苦しんだ人のほうが始めからなんでもできるやつより強い」悩んでいる若者に読んでもらいたい。高校の課題図書とかになりそう。
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写真de俳句 「小腹がすきましたので」で地

2024-04-15 21:35:31 | 俳句
 写真de俳句「小腹がすきましたので」で地をいただきました。夏井先生ありがとうございます。写真de俳句で初めての地、うれしいです。

たんぽぽや母が嫌いな父が好き            丸山隆子

 ははちちをママパパにしたほうが、リズムがいいかと思ったのですが、パパママだと主人公が子供になって可哀そうな気がします。母父ならば、大人が「はいはい、嫌いなのね」と苦笑いをしながら流している図が浮かぶかなと。たんぽぽという突き抜けたような明るい季語がピッタリかなと思ったのです。
 そして、夏井先生の講評を読んでビックリ。母が父を嫌っているけれども、私は父が好き。というつもりだったのですが、父が母を嫌っていて、私はそれに同調しているという読みもあるとの指摘。助詞が誤解を招いたか!「母が」を「母の」にするべきだったか。でも、私は悩んであえて「が」と強めの助詞を選んだのでした。どちらに係るのか、推敲が足りなかったか。私の未熟さが二通りの読みをよび、かえってよかったのか。
 いろいろと考えさせられました。もっと助詞を勉強しようっと。

 でもでも、嬉しい地でした。励みになります。
 
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『スイッチ』『フィールダー』

2024-04-14 17:33:46 | 
『スイッチ 悪意の実験』 潮谷 懸  講談社
 夏休み、スイッチをもって1ヵ月暮らすだけの簡単なお仕事。日当は1万円、勤務終了後のボーナスは、なんと100万円!スイッチを押すと倒産危機のパン屋への資金援助が断ち切られ、パン屋は閉店を余儀なくされる。スイッチは押しても押さなくても1ヵ月後には100万円が手に入る。押すメリットはない。「誰も押すわけがない」皆がそう思っていた。しかし、箱川のスマホが消え、箱川のスマホからスイッチは押されてしまった。
 いやあ、おもしろかった。宗教の話のところは、私には、わかりにくかったけれども。こんな展開になるとは、思わなかった。主人公の箱川小雪が過去に向き合い、成長するのもいい。
 小さい時に言われた言葉がトラウマになって、自分はどうでもいいと自分を貶めている箱川に玲奈がかけた言葉がしみる。「根拠もないのに自分を傷つけるのだって罪深いことなんだ」大人が子供に言った言葉は、その子のその後に影響を及ぼすよな。私は、小さい時に「あなたは、芯があって強い」と言われたから、「私は強いから乗り越えられる」と思ってきた。反対もあるけどね。


『フィールダー』 古谷田 奈月  集英社
 総合出版社・立象社で社会派オピニオン小冊子を編集する橘泰介は、担当の著者・黒岩文子について、同期の週刊誌記者から不穏な報せを受ける。児童福祉の専門家でメディアへの露出も多い黒岩が、ある女児を「触った」との情報を入手したというのだ。時を同じくして橘宛てに届いたのは、黒岩本人からの長文メール。そこには、自身が疑惑を持たれるまでの経緯がつまびらかに記されていた。消息不明となった黒岩の捜索に奔走する橘を唯一癒すのが、四人一組で敵のモンスターを倒すスマホゲーム・『リンドグランド』。その仮想空間には、橘がオンライン上でしか接触したことのない、ある「かけがえのない存在」がいて……。
 児童虐待、ゲーム中毒、ネット炎上とか、やや詰め込み過ぎた印象。そして、オンラインゲームをしたことがない私には、わかりにくかった。私には、尻キレトンボに終わった感じで、消化不良気味。
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「Tessai」

2024-04-13 16:25:33 | 美術鑑賞
「Tessai 没後100年 富岡鉄斎」 2024年4月2日-5月26日 京都国立近代美術館
開館時間:午前10時~午後6時(金曜日は午後8時まで) 休館日:月曜日

上 富士山図 雄大
下 妙義山図・瀞八丁図 第三・四期展示の為、見ず

●勾白字詩七絶 勾白字とは、植物や人・動物などで作っている字。かわいい
●髙士肥遯図 滝がいい
●阿倍仲麻呂明州望月図 月が水面にも映っている
●鮮魚図 好き

「コレクション展」 令和6年3月14日~5月26日 京都国立近代美術館
 私の好きなコレクション展

<西洋近代美術作品選>

アルベール・グレーズ キュビズム的風景、木と川


パブロ・ピカソ 静物-パレット、燭台、ミノタウロスの頭部

<明治時代の京都・大阪の日本画>

秦テルヲ 当世風俗2題(夜警)

<明治の工芸-継承と変化>

石川光明 蓮根に蛙 牙彫置物


七代錦光山宗兵衛 煎茶飾図花瓶


並河靖之 桜蝶図平皿


正阿弥勝義 瓢箪に天道虫花瓶(奥) 柘榴に蟬飾器(手前)

<鉄斎を慕う洋画家たち>

梅原龍三郎 雲中天壇

<自転車に乗って -乗り物の魅力->

國府理 プロペラ自転車 國府理さんの作品だ!


ルーシー・オルタ <Refuge Wear>関連資料一式 Refugeは、避難のこと。原発からの避難を連想させられる。禍々しい感じ。


竹村京 修復された自転車のサドル、修復された赤いBMW


鯉江良二 チェルノブイリ・シリーズ シャモットという材料は、物質を吸着させる効果があるらしい。それを考えると意味深。


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